我が愛しの、ジェーン・バーキン ともに作る、奏でる、歌う。アーティストの音楽論。【エティエンヌ・ダオ】
Culture 2024.06.16
ジェーンの歌声や表現に魅了された、同じ音楽に関わるアーティストたちは、特に何を聴き、彼女の姿をどう見ていたのか? その影響は永遠に──。
エティエンヌ・ダオ
ミュージシャン
最後となるアルバムを自宅で録音した思い出。
僕はまだ信じたくない。ジェーンの不在は受け入れられない。正直な気持ちだよ。彼女をミューズと呼ぶのはふさわしくないくらい素顔は控えめな人で、そのギャップが魅力だった。彼女には敬意を払っていたけど、僕らは本当にいい関係だった。
最初に知り合ったのはセルジュ・ゲンズブールのほうで、確かテレビ番組だった。1992年にジェーンが監督と脚本を手がけた映画『Oh! Pardon tu dormais...』を舞台化した公演を観た時、あまりにもおもしろく、3~4回劇場に通って「あなたのパーソナルな世界を音楽にしたい」と言いに楽屋に会いに行った。その後、ジャン=ルイ・ピエロと作曲した作品を送ったけれど返事がないので気に入らなかったんだなと思った。しばらくしてやっとOKが出て、彼女の歌詞で同じタイトルのアルバムをレコーディングすることになった。
僕の自宅で録音したのだけど、最高に素晴らしい日々だったよ。笑いが絶えなかったな。ジェーンがフランス語の「フリュイ(果実)」という言葉をどうしても発音できないので、そのテーマで曲を作ったりもした。
だけど「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」では、亡くなったケイトのことを、あまりにも生々しい言葉で表現していたので、これでいいのかい?と聞いたものだ。この曲は、高い声でもよかったが、彼女は低い声で歌いたいようだった。驚異的だったのは、彼女のあの個性的な声。どこまでも高音が出るのには感動したよ。あのような声の持ち主は滅多にいない。
彼女にかけたい言葉は、そうだな、「僕の人生を豊かなものにしてくれてありがとう」
1956年、アルジェリア生まれ。81年に『Mythomane』でデビューし、一躍人気スターに。98年のジェーンのアルバム『ラヴ・スロウ・モーション』以降、作品に関わるように。2023年のアルバム『Tirer la nuit sur les étoiles』では、ヴァネッサ・パラディとのデュエット曲も収録。@etienne.daho
『Jane Birkin by Friends』
今年2月3日、パリのオランピア劇場でトリビュート・コンサートを開催した。シャルロットとルー、ダオはもちろん、カー・ブラルーニ、ヴァネッサ・パラディほか23組のアーティストが『Oh!Pardon tu dormais...』から23曲を演奏、カバー。www.olympiahall.com/agenda/jane-birkin-by-friends
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*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋
photography: Romain Winkler