仕事が私にくれたもの:リタ・アッシャー/マイク・アッシャー リタとマイク・アッシャー、兄弟で支えるオランダのジュエラー。
Culture 2024.06.18
幸せな記憶や家族の遺産になるものだから、
ダイヤモンドジュエリーの仕事は楽しい。
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1854年、アムステルダムでダイヤモンドをカット、研磨する会社として設立されたロイヤル・アッシャー。1953年、エリザベス2世女王の戴冠式で、女王が被った大英帝国王冠にセットされた世界最大のダイヤモンド原石、カリナンをカットしたことでも有名だ。新たなカッティング技術の開発に注力していたロイヤル・アッシャーは、自らの名を冠にしたダイヤモンドジュエラーへと成長し、今年で創業170周年を迎える。
現在も創業一族により守られている会社を牽引しているのが、6代目に当たるリタ・アッシャーとマイク・アッシャーのふたりだ。
「我々のDNAはダイヤモンドのカッティング技術。原石をどのようにカットすれば最も美しいジュエリーが生まれるのかを想像し、具体化する。美しいものをより一層輝かせるために、常に前進しないといけないのです」と話すのは姉のリタ・アッシャー。
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彼女は北米のビジネスとジュエリー開発の仕事に携わっている。「創業当時から革新的な技術、最新のテクノロジーを取り入れることも重要だと考えます。それはダイヤモンドのカットだけでなく、ジュエリービジネスにおいても何か新しいことができないかを模索しているのです」と話すのは、幼い頃にダイヤモンドの魅力の虜になり、8歳で家業を継ぐと決意した弟マイクは、"ミスター・ダイヤモンド"との愛称を持つ。
いつも隠し事なく正直な意見を言い合うことができて、何事についても迅速に決定し、行動できるところもファミリービジネスの利点だとか。幼い頃から仲が良かったという姉と弟。
「100%の信頼と透明性。これは家族だからこそ。次の7代目を誰が継いでくれるかが目下の懸案事項です。美しいダイヤモンドジュエリーを見て不機嫌になる人はいません。誰もが幸福を感じてくれるはず。私たちは、人々の人生の幸せな記憶、そして遺産になるジュエリーを作っている。この仕事は特別だし、とても楽しいのです」(リタ)
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*「フィガロジャポン」2024年4月号より抜粋
text: Tomoko Kawakami