アルル国際写真フェスティバルが開幕! 石内都が「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞。

Culture 2024.07.21

7月1日、真っ青な夏空のもと、南仏アルルで恒例の国際写真フェスティバルが幕を開けた。街中の旧跡や美術館、ギャラリーで、40もの公式展覧会と無数のOFF展覧会が開催され、トークやワークショップといった関連プログラムも満載の3カ月が始まる。

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55回目を迎えた今年、アルルに日本の風が吹いている。ことに日本人女性写真家の作品にスポットが当たっているのだが、最大のニュースはなんといっても石内都の「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワード受賞だ。同賞はケリングが才能ある女性写真家を讃え、光を当てることを目的として発足させたアワードで、今年が6回目となる。

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アルルのサル・アンリ=コントで開かれた個展「BELONGINGS」(©Ishiuchi Miyako)でインタビューに答える石内都。©Yusuke Kinaka

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石内都、展示会場風景。

受賞を記念する個展「BELONGINGS」で、石内さんは女性たちの遺品を撮影した静物写真を展示した。それは、2000年に亡くなった母の遺品を撮影した「Mother's」に始まり、フリーダ・カーロの遺品をメキシコに赴いて撮影した「Frida」、広島原爆資料館で無名の人々の遺品を写した「ひろしま」の3シリーズからのセレクション。

遺品を通して、目に見えていなかった母を発見し、フリーダのメッセージを受け取り、おしゃれだった広島の女性たちの存在を体感したという石内さんは、「写真は過去を撮れません。彼女たちの身につけていた遺品は、いまこの時間に、私と一緒にいるのです」と語る。使いかけの口紅、鮮やかな花柄のワンピース......会場に並んだ静物写真は、持ち主のストーリーをいまに甦らせ、見る者それぞれが内に秘めた思いを刺激する。

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「BELONGINGS」展。2000年に亡くなった母の遺品を撮影した「Mother's」より。©Yusuke Kinaka

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「Mother's」より。©Marie Rouge

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「BELONGINGS」展。メキシコのフリーダ・カーロ美術館に請われ、現地に赴いて遺品を撮影したシリーズ「Frida by Ishiuchi」「Frida Love and Pain」より。©Yusuke Kinaka

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授賞式は、開会2日目の夜、古代ローマの野外劇場を舞台に行われた。

受賞のスピーチに立った石内さんは、日本人女性写真家の作品が数多く紹介されていることに言及し、「初めてやって来たアルルで、こんなに大きな賞をいただいて、びっくりしています。私だけではなく、日本の女性写真家の代表としてこの場に立っていると思っています」と語った。

彼女がこの夜身につけた着物は、広島の友人のご母堂が残したものだという。

「こんなに時間がたったいまでも、原爆資料館(広島平和記念資料館)には被爆者の遺品が持ち込まれる。私は毎年、『ひろしま』の撮影を続けています」。世界で起こっている戦争や核への不安を訴えるスピーチは大きな拍手を呼んだ。

「唯一の被爆国である日本。その国からいま、40人くらいの女性写真家がやって来て、アルルで作品を展示しています。これはひとつの事件です。ぜひみなさん、足を運んでこの事件を見てください。ありがとう!」

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2024年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードの授賞式は古代劇場にて。©Yusuke Kinaka

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「ひろしま、この文字を皆さんも覚えてください」と平和への願いを込めたスピーチに大きな拍手が。©Yusuke Kinaka 石内都「ひろしま」から ひろしま# 43 donor: Yamane, S.

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石内さんの個展をはじめ、今年のアルルでは関連プログラムを含め、4つの展覧会が日本の女性作家の取り組みを紹介している。

1950年代から現代までの様々な世代の日本の女性作家26名の作品を紹介する「I'm So Happy You Are Here : Japanese Women Photographers from the 1950s to Now」展は、同名の国際版書籍の刊行に合わせて企画された国際巡回展。

2022年の第10回KYOTOGRPHIE京都国際写真祭の「10/10現代日本女性写真家たちの祝祭」展から生まれ、6人の女性作家の作品を展示する「TRANSCENDENCE(超越)」展。そして、2011年3月11日の東日本大震災と津波、原発事故の影響にテーマを取り、男女9名の写真家がそれぞれの手法で発信するグループ展「Reflection-11/03/11」。

それぞれにメッセージとパワーを持ちながらも光を浴びるチャンスが少なかった女性写真家たちにとって、今年のアルルは世界への扉をさらに大きく開く機会となっている。

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20名以上の日本人女性写真家の作品が集った「I'm So Happy You Are Here」展より。川内倫子の展示。©Yusuke Kinaka

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KYOTOGRPHIE京都国際写真祭が開催した、6人の女性作家の作品を展示する「TRANSCENDENCE(超越)」展より、鈴木麻弓の「豊穣(Hojo)」。©Yusuke Kinaka

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3・11の影響をテーマにしたグループ展「Reflection-11/03/11」より、藤井光の「沿岸部風景記録」の展示。©Yusuke Kinaka

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街角には写真フェスティバル、同時開催の写真関連ブックフェア、展覧会場マップなどが各所に登場。


MOVIE
Les rencontres de la photographie d'Arles

アルル国際写真フェスティバル
Les Rencontres de la photographie d'Arles
会期:開催中~2024年9月29日まで
料金)展覧会各6ユーロより、1日パス33ユーロより
www.rencontres-arles.com


8月10日から群馬県にある大川美術館にて、石内都による「Step Through Time」展を開催。「APARTMENT」(1977-78年)、「Mother's」(2000-2005年)、「ひろしま」(2007年-)など初期からの代表的なシリーズから、近作の「From Kiryu」(2018年-)まで数多くの作品に触れることができる。4層にわたり小さな展示室が連なる美術館の特性を活かし、石内都が向きあってきた「時間」をともに旅するような構成になっている。

「Step Through Time」
会期:8/10〜12/15
会場:大川美術館
開)10:00~16:30最終入場
休)毎週月曜日(月曜祝日の場合は火曜日) 年末年始(12月28日~1月3日)※その他臨時休館あり
料)一般¥1,000
http://okawamuseum.jp/

text: Masae Takata (Paris Office)

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