9月に訪れたい美術館4選。田名網敬一やNerholなど注目作家も紹介!
Culture 2024.08.31
「移動」にまつわる事象のリサーチと対話。
『Nerhol 水平線を捲る』
Nerhol(ネルホル)はグラフィックデザインを基軸とする田中義久と彫刻家・飯田竜太によるアーティストデュオ。人物の連続写真を重ねた画面を彫り込んだ初期のポートレートから、近年は帰化植物や珪化木、アーカイブ映像まで対象を広げ、独自の世界観を深化してきた。公立美術館で初の大規模個展では、ふたりの対話を原点に人や植物など"移動"にまつわる事象のリサーチを通じ、長年に及ぶ表現活動の歩みを紹介する。写真と彫刻、自然と人工、言語と図像といった境界を越境する多様な表現を網羅的に展示。また、千葉市の歴史や土地と関わりの深い蓮をテーマとした最新作や彼らが選ぶ美術館のコレクションを展示し、この場所だけでしか体験できない空間を創出する。
会期:9/6~11/4
会場:千葉市美術館
043-221-2311
営)10:00~17:30最終入場(月~木、日)、10:00~19:30最終入場(金、土)
休)9/9、24、10/7、21
料)一般¥1,200
https://www.ccma-net.jp/
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絵画に堆積した確かな時間のレイヤー。
『石田尚志 絵と窓の間』
独学で油彩画を始め、映像やインスタレーションを通して自身の絵画観を表現する作品で高く評価を受けてきた石田尚志。筆を進めるにつれ変容する絵画の様相を撮影し、膨大なカットを集積したその映像世界は、圧倒的なイメージの洪水が迫り来る不穏さと、深海から空に浮上するような爽やかさで見る人を幻惑してきた。本展では、絵画に時間の層を残すことの確かさに改めて手ごたえを感じたという作家が、近年再びカンヴァスに向かい描きためた絵画と初期の絵画を並置。時間を経たクリエイションの対比の妙を味わうことができる。また、一色海岸を望む外光を採り入れた広々とした展示室で公開制作される新作や、葉山の自然と呼応するサイトスペシフィックな展示も見どころだ。
会期:開催中~9/28
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
046-875-2800
営)9:30~16:30 最終入場
休)月 ※9/16、23は開館
料)一般¥1,200
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/
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20世紀アメリカ美術を象徴する尊厳と気骨。
『丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展―追憶のオルソン・ハウス』
アメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスは故郷ペンシルヴェニア州とメイン州の風景や、そこに生きる人々を描いた詩情あふれる絵画で愛されてきた。『クリスティーナの世界』(1948年)は、足の不自由な女性が誰の助けも借りず野原を這って我が家へ向かう情景が不屈の意思を象徴し、20世紀アメリカ美術を代表する傑作として評価される。写実でなく独自の想像によって美化することなく描かれた本作について、ありのままに描くことが彼女への尊敬の証と作家は語った。その習作を含む水彩・素描コレクションによりワイエスが見つめたオルソン・ハウスの記憶を前期・後期で辿る本展。築100年以上の本館の建築と安藤忠雄設計の地中館のモネの『睡蓮』連作とともに堪能したい。
会期:9/14~10/27、10/29~12/8
会場:アサヒグループ大山崎山荘美術館
075-957-3123
営)10:00~16:30 最終入場
休)月、9/17、24、10/15、11/5
※9/16、23、10/14、11/4、18、25、12/2は開館
料)一般¥1,300
https://www.asahigroup-oyamazaki.com/
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外界と記憶に触発された壮大な創造の軌跡。
『田名網敬一 記憶の冒険』
惜しくも8月9日に逝去したアーティスト・田名網敬一。戦後開花した日本のポップアートの先駆者として、1960年代よりメディアやジャンルの境界を超えた活動を展開してきた。国際的に急速に再評価が進むその存在は、世代や国を超えてクリエイターたちを魅了し続ける。初の大回顧展となる本展では、60年以上にわたり、視界が捉える外界のあらゆる刺激と、戦渦の幼少期以来の鮮烈な記憶から触発された創作の軌跡を壮大に展開。グラフィックで培った独自の方法論と技術を駆使し、多層的なレイヤーが視覚を眩惑させる絵画やコラージュ、立体、アニメーション映像など、美術史に名を刻む怪作を次々と世に送り続けてきたマエストロの曼陀羅世界を全身で浴びてほしい。
会期:開催中~11/11
会場:国立新美術館
050-5541-8600
営)10:00~17:30 最終入場(月、水、木、日)、10:00~19:30 最終入場(金、土)
休)火
料)一般¥2,000
https://www.nact.jp/
*「フィガロジャポン」2024年10月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi