【立田敦子のカンヌ映画祭2024 #05】「ウーマン・イン・モーション」大賞は女性エグゼクティブのレジェンドに!
Culture 2024.05.23
ケリングとカンヌ国際映画祭が開催する2024年の「ウーマン・イン・モーション」アワードが、NBCユニバーサル・スタジオ・グループ会長兼チーフ・コンテンツ・オフィサーのデイム・ドナ・ラングレーに決定。5月19日(日)に開催されたオフィシャルディナーの席で、カンヌ映画祭会長のイリス・ノブロック、カンヌ映画祭総代表のティエリー・フレモー、ケリングの会長兼CEOであるフランソワ゠アンリ・ピノーによりラングレーにトロフィが授与された。
「ウーマン・イン・モーション」アワードを受賞したデイム・ドナ・ラングレーと、ヤング・タレント・アワードを受賞したアマンダ・ネル・ユー©Vittorio Zunino Celotto - Getty Images
ラングレーは、ユニバーサル・ピクチャーズの映画部門のトップとして『ジュラシック・ワールド』や『ワイルド・スピード』などの大ヒットシリーズや、気鋭のジョーダン・ピールの『ゲット・アウト』や『アス』『ノープ』などを世に送り出してきた業界内ではレジェンド級に有名な人物。2023年には、映画部門だけでなくTV部門も統括するNBCユニバーサルのチーフコンテンツオフィサーに昇格し、制作全体を管理している。
NBCユニバーサル・スタジオ・グループ会長兼チーフ・コンテンツ・オフィサーのデイム・ドナ・ラングレー。©Vittorio Zunino Celotto - Getty Images
「ウーマン・イン・モーション」大賞は、これまで俳優や監督が受賞してきたが、今回の受賞は、男性社会だった映画界において実力でこの地位まで粘り強く上り詰めたラングレーを讃えることによって、"カメラの裏側"で業界を支える女性たちにエールを送るという意図がうかがえる。
また、「ウーマン・イン・モーション」ヤング・タレント・アワードは、マレーシア出身の映画監督のアマンダ・ネル・ユーに贈られた。
両氏の受賞を祝うディナーには、今年のコンペティション部門の審査員長を務めるグレタ・ガーウィグ、是枝裕和監督、ナディーン・ラバキー監督、ジュリアン・ムーア、ジュスティーヌ・トリエ、ユマ・サーマン、シャルロット・ゲンズブール、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、サルマ・ハエック・ピノー、ミシェル・ヨー、ゾーイ・サルダナ、カーラ・ソフィア・ガスコン、セバスチャン・スタン、ダイアン・クルーガー、ジャック・オディアールといった映画人が集った。
カンヌ国際映画祭審査員の是枝裕和監督は、昨年に続き「ウーマン・イン・モーション」に参加。©Daniele Venturelli - Getty Images
サン・ローラン・プロダクションが製作するコンペ作品『エミリア・ペレス』に出演するゾーイ・サルダナ。©Daniele Venturelli - Getty Images
堂々たる佇まいでパーティに登場したカトリーヌ・ドヌーヴ。©Anthony Ghnassia - Getty Images
昨年の「ウーマン・イン・モーション」アワードを受賞しているミシェル・ヨー。©Vittorio Zunino Celotto - Getty Images
『オー、カナダ』でカンヌのレッドカーペットにも登場したユマ・サーマン。©Vittorio Zunino Celotto - Getty Images
フランスではこのレポートの#2でも記したように、現在#MeToo運動の第2波が到来中だが、その中心人物でもある俳優のジュディット・ゴドレーシュも出席。ピノーは、挨拶の中でゴドレーシュの勇気ある発言と行動に触れ、讃辞を贈った。
「ウーマン・イン・モーション」アワードを受賞したドナ・ラングレーは、トークにおいて女性監督が撮り続けられるための支援はどのようにすべきかという質問について、こう答えている。「多数の取り組みやプログラムがあります。もちろん、このケリング「ウーマン・イン・モーション」もそのひとつで、映画監督だけでなく、芸術のあらゆる分野の女性を支援するプログラムやイニシアティブだと思います。それから、2作目の製作にたどり着けない女性監督が大勢いるため、サンダンス・インスティテュートはそこを支援する素晴らしいプログラムを実施していますし、私たちの会社にも支援する取り組みをしています。
「ウーマン・イン・モーション」アワードを受賞したドナ・ラングレーのトークショー。©Momoko Suzuki
動画配信サービスの躍進により製作本数が増えたことで、より多くの機会が生まれたのは良い点だと思いますが、それで十分ではありません。私たちは常に押し進めなければなりません。女性がキャリアを積みながら家庭を持ち、そのバランスをとるのは本当にとても大変なこと。(女性だけでなく)誰にとっても大変なことですが。先日、以前は助監督だったとある人と話したのですが、彼女は家庭を離れることができないため、その仕事はもう続けられないと言っていました。必ずしもジェンダーの問題だとは言いませんが、そうした状況を支援していく方法を今後も続けて見つけていかなくてはなりません」
なお、同賞をサポートする男性陣も多くディナーには出席した。「ある視点」部門の審査員長グザヴィエ・ドランや「クイア・パルム・ドール賞」審査員長ルーカス・ドンが、フィガロジャポン・madameFIGARO.jpの公式インスタグラムにて、同賞に賛同する熱烈なコメントをしているので、ぜひチェックしてみてほしい。
映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。
text: Atsuko Tatsuta editing: Momoko Suzuki