ジャーナリスト池上彰が解説する映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』。
Culture 2025.01.21
非も負けも決して認めず、勝利を掴む舞台裏の衝撃。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
大統領選挙中にもかかわらず有力候補の過去を生々しく再現する(暴く)映画を作ってしまう。アメリカ映画界の逞しさには驚かされます。
題名の「アプレンティス」とは、「見習い」という意味。ドナルド・トランプ大統領が全米に名前を知られるようになったテレビ番組のタイトルですが、ここには二重の意味があります。トランプもかつては「見習い」だったというわけです。20代の時に、勝つためには手段を選ばない辣腕弁護士と知り合い、見習いビジネスマンとして成功していく姿を描いたのです。
そもそものテレビ番組は、不動産王として知られたトランプのところに見習いの若者たちが集められ、さまざまな課題を与えられるという設定です。その課題に応えられなかった若者は、毎週ひとりずつトランプから「You're fired!」(お前はクビだ!)と宣告される設定でした。
若きトランプは、弁護士から「勝利の3原則」を教授されます。1つ目は「攻撃、攻撃、攻撃」。自らの障害となるものに対しては、あらゆる手段を使っても攻撃を仕掛けて勝利しろというものでした。
2つ目は、「決して非を認めるな」。自分の責任を認めてはいけない。全否定しろというもの。
そして3つ目は「決して負けを認めるな」。
どうですか。トランプ大統領がやってきたこと、そのものではありませんか。対立候補を徹底的に叩き、2020年の大統領選挙では敗北を認めようともしませんでした。その結果、再び勝利を掴んだのです。
アメリカではこの映画は大統領選挙直前の24年10月に公開されましたが、トランプの勝利には影響しませんでした。
ちなみに映画で描かれる衝撃的な出来事は、すべて多数の関係者の証言で裏付けられています。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
監督/アリ・アッバシ
出演/セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング、マリア・バカローヴァ、マーティン・ドノヴァンほか
2024年、アメリカ映画 123分
配給/キノフィルムズ
TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開中
https://www.trump-movie.jp/
監督/アリ・アッバシ
出演/セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング、マリア・バカローヴァ、マーティン・ドノヴァンほか
2024年、アメリカ映画 123分
配給/キノフィルムズ
TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開中
https://www.trump-movie.jp/
文:池上 彰/ジャーナリスト
長野県生まれ。NHK記者を経て独立。世界各地での現場取材を中心に書籍の執筆、大学での授業、テレビ出演などを継続。新刊に『一気にわかる! 池上彰の世界情勢2025 トランプ再選で日本と世界はどうなる編』(毎日新聞出版刊)ほか。ぴあのアプリで映画紹介を連載中。
長野県生まれ。NHK記者を経て独立。世界各地での現場取材を中心に書籍の執筆、大学での授業、テレビ出演などを継続。新刊に『一気にわかる! 池上彰の世界情勢2025 トランプ再選で日本と世界はどうなる編』(毎日新聞出版刊)ほか。ぴあのアプリで映画紹介を連載中。
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
BRAND SPECIAL
Ranking