「キラキラした派手なものが大好き!だけど......」テイラー・スウィフトを支える世界観とは?

文筆家・村上香住子が胸をときめかせた言葉を綴る連載「La boîte à bijoux pour les mots précieuxーことばの宝石箱」。今回はグラミー賞12回受賞の歌姫、テイラー・スウィフトのことばに迫る。


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世界中でCDが20億枚売れる成功を収めても、どんなにコンサート会場を熱狂させても、世界の歌姫テイラー・スウィフトは満足してはいない。どうやら彼女は経済的な成功が、もっとも大事なものをもたらすことはない、と知っているようだ。いくら大富豪の息子に大粒のダイヤの指輪をもらっても、そんなことに目が眩むテイラーではない。それよりも地味で安手のボール紙のリング、真実の永遠の愛が込められたラヴ・リングほど、胸を打たれるものはない。そう思い込んでいる。

だが今年に入ってから、その輝かしいキャリアにも、少しばかり翳りが見える場面があった。

2月9日、米国中が熱狂するスーパーボールの試合の最中、現在付き合っている恋人で、その日注目の人気サッカー選手、トラビス・ケルシーを応援にやってきた世界的ディーバ、テイラー・スウィフトが、その日観客から大ブーイングを受けるとは誰ひとり思っていなかった。それどころか、トラビスがティラーに、観客の前で結婚しようと告白するのではないか、とファンたちはその場面を夢見ていた。

ところが暗転したのは、ほんの一瞬の出来事からだった。恋人のチームの活躍に夢中で声援を送っていたテイラーの顔が、競技場の巨大スクリーンに映った時のことだ。彼女のその歓喜の表情を、相手チームのファンは見逃さなかった。こうして場内にブーイングの波が広がっていったのだ。観戦にきていたトランプ大統領も、その機会を逃さず、すぐさま場内の敵となった彼女をこき下ろし始めた。大統領選の時は、ハリス副大統領候補を応援してアンチ・トランプを表明していた彼女が、以前からおもしろくなかったトランプ大統領にとって、彼女を嘲笑するまたとない機会だったし、おそらく毒舌を吐いた後は、きっと溜飲を下げていたことだろう。

その上グラミー賞では、宿敵ビヨンセに女王の座を奪われ、無冠で終わるという散々な結果になってしまったテイラーにとって、どうやら今年は厳しく、風当たりの強い幕開けとなったようだ。

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スーパースターの生い立ちというのは、ひと昔前は貧困の家庭環境で育ち、そこからなんとかして抜け出すために野心を燃え立たせて、不遇の時代を乗り越えて、やっと成功に到達する、といったストーリーが多かった。テイラーの場合は、いわゆる米国の中産階級の家庭に育っていて、何不自由なく、両親の愛を一身に受けて育っている。レディー・ガガにしても、似たような環境だし、困窮した家庭ではない。透明なモラルや、ハラスメントなどでの告訴が相次ぐいまの時代には、こうした良家の子女たちというのは、バッド・ボーイたちの餌食になりやすい。彼女の過去の恋人たちをみても、そうしたタイプが何人もいた。

だが幼い頃は自分が「グッド・ガール」だと思い込んでいたテイラーは、反抗期もなく、両親も娘が好きな音楽に打ち込むことを、ずっと支えてくれたし、恋の悩みはあったかもしれないが、苦労というものはあまり知らなかった。それどころか、わがまま娘で、自分の意思を貫こうとするため、いまでは世間的には「バッド・ガール」だと思われている。ほんの数日でボーイフレンドと別れたり、一夏の恋で終わったり、その恋の遍歴をみるだけでも、優等生とはほぼ遠い。

13才の時から「ラッキー・ユー」の作曲で注目されるようになって以来、サクセス・ストーリーのヒロインといえるテイラー・スウィフトは、途方もなく負けず嫌いだし、今年のふたつの躓きに対してきっと何か新たな動きをするに違いない。恋人トラビス・ケルシーとの仲も、こうした厳しい嵐の中を乗り切れるかどうか、ファンたちは気になるところだ。

彼女を慰めるのはトラビスだけではない。その傍らにはかわいい三匹の猫たちがいる。オリヴィア・ベンソン、メレディス・グレイ、ベンジャマン・バトンという猫たち。中でもスコティシュ・フォールのオリヴィアは、大のお気に入りで、リードを付けて、仕事先やスタジオまで連れていっている。愛する人や猫たちに囲まれて、いま頃もうテイラーは立ち直っていることだろう。

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Taylor Swift
1989年、ペンシルヴァニア州生まれ。キリスト教の信仰に厚い家族の下、自然に囲まれた環境で育つ。幼少期から音楽に目覚め、12歳でギターを手に作曲を開始。カントリーミュージックのシンガーソングライターとして2004年にデビュー、09年にはアルバム『Fearless』でグラミー賞最優秀アルバム賞を最年少で受賞。フェミニズム、LGBTQ、社会奉仕や政治的関心への言及も取り上げられることが多い、世界的に影響力を持つテンターテイナー。 

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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