アートを求めて春の旅へ! 話題の展覧会から新オープンの美術館まで、各地で必見の展覧会5選。
Culture 2025.03.10
全国各地で話題の展覧会が開かれる2025年。3月以降にかけても埼玉や鳥取、香川にて新たな美術館が開館するなど、見逃せないスポットが続々と誕生する。春の空気を感じながら、アートとともに心を躍らせる旅へ出かけてみては?
印象派が描いた光、現代アートが奏でる色のリズム。|『カラーズ ―色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ』@ポーラ美術館

西洋絵画をはじめ、日本の洋画や版画、工芸品などのコレクションで定評のあるポーラ美術館。近年は現代アートの収集・展示にも力を入れている。箱根・仙石原の自然に囲まれた建築は、森に溶け込むような光景を見せていて、館内のあちこちで豊かな緑や美しい光を感じることができる。また全長約1キロの遊歩道にはさまざまな彫刻作品が展示され、野鳥のさえずりを聞きながら自然とアートが響き合う様子を楽しめる。ワンランク上のランチを味わえるレストランからの眺望も素晴らしく、いつまでも居たくなるほど心地良い桃源郷のような美術館だ。
『カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ』では、19世紀の印象派と新印象派をはじめ、20世紀のフォーヴィスムや抽象絵画、および現代アートを通して、美術家の編み出した「色彩」の秘密をひも解いている。クロード・モネやアンリ・マティスらの名画はもちろん、モーリス・ルイスやヘレン・フランケンサーラーなどのアメリカ抽象表現主義、さらに草間彌生や新収蔵のヴォルフガング・ティルマンスといった現代の作家もあっと驚くほど充実している。スマホやモニターによるヴァーチャルな色を見る機会が圧倒的に多い中、優れたアート作品にて「本当の色とは何か」を探りたい。

『カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ』
会期:開催中~5月18日(日)
会場:ポーラ美術館 展示室1、2、3、アトリウムギャラリー
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
0460-84-2111
開)9:00~16:30最終入場
会期中無休
料)一般 ¥2,200
https://www.polamuseum.or.jp/
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湖に浮かぶ宇宙猫の正体とは?ハイパーミュージアム飯能がオープン。|『オープニング特別企画展 ヤノベケンジ「宇宙猫の秘密の島」』@ハイパーミュージアム飯能
都心から40キロメートル、埼玉県飯能市にあるメッツァビレッジは、豊かな自然に包まれた湖畔の北欧ライフスタイル体験施設として知られ、隣接するムーミンの物語を主題としたテーマパークのムーミンバレーパークとあわせて人気を集めている。そして3月、「自然とデジタル」、「キャラクターアート」を組み合わせた新感覚の現代美術館、ハイパーミュージアム飯能がオープン。特別企画展として「トらやん」や「サン・チャイルド」など強烈なインパクトを持つキャラクターの巨大彫刻を制作する現代美術作家、ヤノベケンジによる展覧会が開かれる。
『ヤノベケンジ「宇宙猫の秘密の島」』では、メッツァビレッジの前に広がる宮沢湖に宇宙猫が休む巨大な浮島が出現。また館内では宇宙猫のルーツを紹介する展示をはじめ、ヤノベの約35年の作家としての活動を振り返りながら、絵本『トらやんの大冒険』の原画のほか、『ラッキードラゴン構想模型』といった立体や映像など約80点の作品が公開される。岡本太郎のスピリットを引き継ぎ、「イマジネーションが爆発する作品を目指す」というヤノベが、木々に囲まれた湖畔のロケーションを舞台に、かつて誰も目にしたことのないような驚異の「猫島」を生み出す。
『オープニング特別企画展 ヤノベケンジ「宇宙猫の秘密の島」』
会期:3月1日(土)~8月31日(日)
会場:ハイパーミュージアム飯能
埼玉県飯能市宮沢327-6 メッツァ
0570-03-1066(ナビダイヤル)
開)10:00~16:30最終入場
無休
料)一般 ¥1,200
https://metsa-hanno.com/hypermuseumhanno/
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リアルの探求、鳥取から世界へ発信するアートの系譜。|開館記念展『アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』@鳥取県立美術館

県立クラスの美術館としては日本最後発として、今春、鳥取県倉吉市にオープンする鳥取県立美術館。山陰で最古級の古代寺院の史跡「大御堂廃寺跡歴史公園」に隣接する建物は、世界的建築家、槇文彦の率いた槇総合計画事務所が設計を担い、陽光があふれる開放的な作りを特徴としている。3層の吹き抜けの、木のぬくもりが感じられる「ひろま」も魅力いっぱいのスペースだ。いよいよ3月30日の開館が迫る中、カウントダウンイベントも県内各地で進行し、アートで未来を切り開くために、鳥取という地域全体が美術館を起点にして繋がろうとしている。
開館記念展『アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』とは、江戸時代から現代まで、洋の東西を問わず、油彩画、日本画、彫刻、写真などの多様なジャンルの約180点の作品を、「リアル」をキーワードに読み解こうとするもの。ともに鳥取県の出身である画家の前田寛治や彫刻家の辻晉堂(つじしんどう)といったゆかりの作家をはじめ、伊藤若冲からルネ・マグリットの名品、それに2022年に同館の収蔵品として新たに購入され、県民の間で賛否の議論を起こしたアンディ・ウォーホルの『ブリロ・ボックス』がお披露目となる。

開館記念展『アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』
会期:3月30日(日)~6月15日(日)
会場:鳥取県立美術館 企画展示室、コレクションギャラリー1・2
鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12
0858-24-5442
開)9:00~16:30最終入場
休)月(3/31、4/28、5/5は開館)
料)一般 ¥1,600
https://tottori-moa.jp/
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京都で体験する、写真の力で紡ぐ"人間の物語"。|『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025』

今年で13回目を迎える『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025』は、昨年の来場者が27万人を超えるなど、日本でも屈指の国際的な写真祭として注目が高まっている。会期中は10カ国、13組のアーティストらが、京都市内に点在する歴史的建造物やモダンな近現代建築の十数ヶ所にて、自らの経験をきっかけに制作したさまざまな作品を公開。「HUMANITY」のテーマのもと、愛の力や共感力、危機を乗り越える力にまなざしを向けながら、日本と西洋という2つの異なる文化的視点を通じて、人間の営みの複雑さを浮かび上がらせる。
明治を代表する洋風建築として名高い京都文化博物館別館をはじめ、建仁寺の塔頭寺院で通常非公開の両足院など、足を運ぶだけで心を引かれるような会場が選ばれるのも特徴だが、今回はフランス出身のアーティスト・JRが、京都駅ビル北側通路壁面と京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)に昨年京都で撮影した、に多数のポートレートをコラージュした新作を発表。またイギリス生まれのマーティン・パーは、マスツーリズムをテーマにした作品を旧作とあわせて会期前に京都で撮影した新作を展示する。1年で最も美しい時期を迎える春の京都を散策しながら、世界の第一線で活躍する写真家の表現とじっくり向き合いたい。

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025』
会期:4月12日(土)~5月11日(日)
会場:京都市内十数ヶ所
京都市中京区久遠院前町672-1(事務局/展示はありません)
075-708-7108
料)一般 ¥6,000(パスポート)
https://www.kyotographie.jp
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直島の新しい美術館で出会う、アジアのアートの最先端。|『直島新美術館 開館年記念展示(仮称)』

地中美術館やベネッセハウス ミュージアム、ANDO MUSEUMのほか、改修した空き家や神社を舞台とした「家プロジェクト」など、数多くの現代アート作品が展示されている香川県の直島。国内のアートファンのみならず、海外からも多くの人々が訪れ、イギリスBBCによる「2025年に旅行したい場所25カ所」に、日本で唯一選ばれるなど、世界からも高く評価されている。「瀬戸内国際芸術祭」の会場のひとつでもあり、美しい瀬戸内海の自然とアートとが見事に共生を果たした、日本の現代アートの聖地と呼んでも過言ではない。
その直島に今年5月、建築家の安藤忠雄が設計した「直島新美術館」が誕生する。『直島新美術館 開館年記念展示(仮称)』では、世界的に活躍する村上隆をはじめ、中国に生まれてニューヨークを拠点に活動する蔡國強など、アジア地域出身のアーティスト12名(組)が参加。新作や代表作を、建物の4つのギャラリーや屋外の敷地などにて展開する。また恒久展⽰の多い直島のアートスポットにおいて、緩やかなサイクルによる展⽰替えが行われるなど、訪れるたびに異なった鑑賞体験が得られることにも期待が高まる。

『直島新美術館 開館年記念展示(仮称)』
会期:5/31(土)〜
会場:直島新美術館
香川県香川郡直島町3299-73
開)10:00〜16:00最終入場
休)月(祝日の場合開館し、翌日休館)
料)一般 ¥1,500(オンライン購入)
https://benesse-artsite.jp/art/nnmoa.html
text: Harold