【話題のアルバム集】心を震わせる新音楽の波。エレクトロニックからジャズ、フォークまで。
Culture 2025.03.19
心に響くエレクトロニックビートから未来型ジャズ、繊細なフォークロックまで、注目のアルバムを厳選してご紹介。心身の回復を経て生まれたエモーショナルなダンスミュージック、ジャンルを超えた音楽的冒険を体験できるジャズ、そしてシンプルでポジティブなメッセージが込められたフォークロックまで、どれも新たな音楽の可能性を感じさせる作品ばかりだ。今回紹介するアルバムで、音楽の新しい魅力を発見してみて。
心の琴線に触れるエレクトロニックビート。
『ハルシネイティング・ラブ』マリブー・ステート

メロディアスで親しみやすく、それでいて時代の先を進むダンスミュージック。クリス・デイヴィスとリアム・アイヴォリーによるユニットはデビューして早くも10年のキャリアを持つ。本作制作前には心身ともにダメージを受けていたというが、そういった苦難を乗り越えたためか全体的に祝祭感すら漂うエモーショナルな作品に結実した。ボノボとの共演で知られるアンドレア・トリアーナやホーリー・ウォーカーといったシンガーをフィーチャーし、ポップさを前面に押し出した意欲作だ。
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ベルリンから届いた未来型ジャズサウンド。
『MYT』モーゼズ・ユーフィー・トリオ

スタイルはオーセンティックなピアノトリオというミニマムな編成。しかし、これほどまでに可能性を感じさせるアンサンブルを聴かせるとは驚きだ。ピアノのモーゼズ・ユーフィー・ヴェスター、ベースのロマン・クロベ=バランガ、ドラムスのノア・フュルブリンガーはそれぞれ国内外で活躍するだけあり、ジャンルにとらわれない広大な世界観を表現。クールなラッパーをフィーチャーしたり、ドラムンベースのようなヘビーなビートを駆使したりとあらゆる音楽的冒険が詰まっている。
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繊細でアコースティックなフォークロック。
『ユー・アー・ザ・モーニング』ジャスミン.4.t

トランスウーマンであることを公言し、それでしか生み出せない感性で美しい歌世界を紡ぐシンガーソングライターのデビューアルバム。フィービー・ブリジャーズのレーベル、サッデスト・ファクトリーと契約し、ボーイ・ジーニアスの3人がプロデューサーとしてクレジットされるなど早くも話題沸騰。とはいえ彼女の生み出す楽曲に仰々しさはなく、シンプルなメロディとサウンドを淡々と表現するのみ。そしてポジティブなメッセージが詰まった本作を聴けば、心が浄化されるだろう。
*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto