ポール・オースターの遺作や、不穏な世界を巡る...。心震える書籍3選。

Culture 2025.03.20

2024年に亡くなったポール・オースターが遺した壮大な大作『4321』をはじめ、心に響く新刊をご紹介。オースターが描く青年の成長とアメリカの激動の時代、さらには新鋭作家が織りなす不穏で禍々しい物語、そしてウェス・アンダーソン監督が魅せる幻想的な風景写真集まで。読むたびに新たな発見と感動を与えてくれること間違いなし。

オースター最後の大長編は、驚くべき仕掛けの青春小説。

『4321』

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ポール・オースター著 柴田元幸訳 新潮社刊 ¥7,150

2024年4月、ポール・オースターが77歳で亡くなった。800ページ近いこの大長編は稀代のストーリーテラーであり、実験精神に満ちた作家が自身の人生の分岐点となった60年代をあらためて見つめ直した集大成。作家志望のユダヤ系の青年、アーチボルド・ファーガソンの成長の物語とアメリカの激動の時代が驚くべき仕掛けによって語られていく。ほんのわずかな違いでありえたかもしれない4つの人生。タイトルの意味が腑に落ちる時、もう一度最初から読み返したくなるだろう。

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審査員満場一致でデビュー、禍々しくも不穏な注目作。

『光のそこで白くねむる』

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待川匙著 河出書房新社刊 ¥1,650

10年前に上京した「わたし」は、子どもの頃の親友「キイちゃん」の墓参りを思い立ち帰郷する。働いていた土産物店がある事件で無期限閉店になり、やることも居場所も突然なくした「わたし」の過去を巡る旅だ。「キイちゃん」が「わたし」に語りかけてくる。生まれ育った場所のはずなのに異界巡りのような心もとなさ。もはや故郷も帰る場所ではなく、不穏な暴力の気配が満ちてくる。文藝賞を受賞した新鋭は、カフカのような筆致で確かなものなど何もないいまを浮かび上がらせる。

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アンダーソンすぎる風景を集めた写真集、待望の第2弾。

『ウェス・アンダーソンの冒険旅行 世界で見つけたウェス・アンダーソンすぎる風景

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ワリー・コーヴァル、アマンダ・コーヴァル編 樋口武志訳  DU BOOKS刊 ¥4,070

パステルカラーでシンメトリーな映像で熱狂的なファンを持つウェス・アンダーソン監督。ブルックリン在住のコーヴァル夫妻が設立した「AWA(@accidentallywesanderson)」は監督の映画さながらの実在の風景を投稿するInstagramのコミュニティで、フォロワー190万人を突破。本作はAWA発の2冊目の写真集。「ここに紹介されているのは本物の風景なのだろうか」と序文を寄せた監督を感激させたアンダーソンすぎる風景が満載。旅のガイドブックになる解説も読みごたえ十分。

*「フィガロジャポン」2025年3月号より抜粋

text: Harumi Taki

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