KYOTOGRAPHIE、両足院で観るエリック・ポワトヴァンの空間美。

Culture 2025.05.01

5月11日まで京都市内各所で開催されている『KYOTOGRAPHIE 2025』。注目したいひとつの展示が、両足院を会場とするエリック・ポワトヴァン『両忘ーThe Space Between』Presented by Van Cleef & Arpelsだ。

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展示風景より。

両足院の静謐な空間に、西洋古典絵画の典型的な題材を取り入れながら、独自の様式を持つ写真作品を手がけてきたエリック・ポワトヴァンの作品がインストールされている。プリントが額装されているわけではなく、襖にプリントされ、インストールの文字通りその空間に組み込まれているのだ。窓の外には美しい庭が広がり、その調和に思わず息を飲む。「この非常に美しい寺を会場に、聖人ではない自分が展示を行うのは大きなチャレンジでした」と笑みを交えながら、ポワトヴァンは展示実現までのプロセスを語る。

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エリック・ポワトヴァン

「選択の連続でした。KYOTOGRAPHIEで展示をしないかとディレクターのルシール・レイボーズから声をかけられ、京都で会場の候補となる建物を下見に来ました。私が普段展示するようなホワイトキューブのギャラリースペースに限らず、魅力的な空間の数々がありました。そこで両足院を選んだのが、最初の選択です。そして次に、この空間で何を被写体とする作品を展示するか。"自然"を選びました。この美しい庭園との対話を目指したのです。そして、この空間でどのように作品を見せるか。什器を持ち込むことなく、この美しい建築そのものを味わえるようなセノグラフィにしようと決めました。何も持ち込まないことで生まれる最大の効果を目指し、成功したと感じています」

ポワトヴァンはこれまで屋外では、鬱蒼とした森の中で、徹底したフレーミングを行うことで現実世界を抽象化するような作品を手がけてきた。一方、スタジオ撮影で制作した作品は、照明効果による被写体の陰影を避け、遠近感を消すことでその物質そのものの形を正面から伝えるようなものだ。そのいずれも、過剰な演出を避け、同時に、ポワトヴァンがいうある種の「優しさ」を画面に込めたいという思いがある。

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フランスのラボでプリントした作品を京都の職人が襖に仕上げた。

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作品は茶室にも展示された。

「この美しい庭園は、自然で彩られていますが、野生の自然ではありません。人の手で造園された"自然"です。そして私が撮影する写真。写真は記録であり、現実そのもののように捉えられていますが、まったくそうではありません。演出もされますし、そこに写るのは幻想とも言えるかもしれません。少し乱暴な言い方をすれば、写真には嘘が写っています。そうした庭園と写真との"自然"をテーマとする対話が生まれないかと考えました」

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両足院の庭園。

襖や壁面に貼られているのは、「銀塩写真でなければ出ない精彩さにこだわってフランスのラボでプリントした作品」。その作品が設えられた空間に実際に身を置いてほしい。庭とポワトヴァンの作品との関係に限らず、建築そのものと作品、時間の流れと作品、光と作品、というように、両足院のあらゆる要素と作品とで対話が行われ、そこに身を置くあなたの存在もまた、展示の一部となっていることが感じられるはずだから。

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西洋のヴァニタス画に表現された死生観を想起させる作品も。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025
エリック・ポワトヴァン『両忘ーThe Space Between』
会期:開催中~5/11
会場:両足院

075-708-7108(KYOTOGRAPHIE事務局)

開)10:00〜16:30最終入場
休)5/7
入場無料
https://www.kyotographie.jp/programs/2025/eric-poitevin/ 

photography & text: Ryohei Nakajima

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