改修前最後の機会! 東京文化会館でのウィーン国立歌劇場『フィガロの結婚』『ばらの騎士』公演を見逃さないで。
Culture 2025.09.08
1980年に始まったウィーン国立歌劇場の日本公演が上野の東京文化会館にて、2016年以来9年ぶりに10月5日から2演目、全9公演開催。本公演は、東京文化会館の改修による休館前の最後の本格的なオペラ引越し公演となる。
東京文化会館がウィーン国立歌劇場に! photography: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
音楽ファン、オペラファン憧れのウィーン国立歌劇場は、偉大な作曲家、多くの名指揮者、名歌手を生み、数々の優れたオペラを初演し、いまなお18世紀の宮廷オペラ以来の栄光と伝統を保っている。世界の最高峰として人気のオーケストラ、ウィーン・フィルは、ウィーン国立歌劇場の専属オーケストラのメンバーで構成されていることからも、ウィーン国立歌劇場の格がわかるだろう。
そんなウィーン国立歌劇場が今回日本で上演するのは、モーツァルトの傑作『フィガロの結婚』とリヒャルト・シュトラウスとホフマンスタールの名コンビが生み出した『ばらの騎士』。
『フィガロの結婚』は人気演出家バリー・コスキーによる人物描写とスピーディな展開が評判の2023年に初演された新プロダクション。結婚式当日の恋と仕返しをめぐるドタバタ劇をモーツァルトの珠玉の音楽が絶妙に描き出す。言わずと知れたオペラの代表作でもあるが、バリー・コスキーは18世紀のスペイン・セビリアの貴族社会が舞台となった物語の本質を変えることなく、キャラクターを現代人にわかりやすく再解釈。ロココ調の舞台美術の中で、カラフルな衣裳を身にまとった登場人物たちが動き回る本作は、現代の感覚で楽しめるのが魅力だ。
現代的に再解釈した『フィガロの結婚』により、登場人物たちの心情や物語の背景をより身近に感じられるはず。photography: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
カラフルでハイセンスな衣装にもぜひ注目して。photography: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
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一方の『ばらの騎士』は、1911年に初演されて以来、ウィーンで1000回以上上演されている演目。そのうち400回以上上演されている故オットー・シェンク演出によるプロダクションを今回上演する。18世紀のウィーンを舞台とするこの恋愛喜劇は、ウィーンでもっとも愛されているオペラというのも過言ではない。ウィーンの上流社会を舞台に、美しかった過去への追憶、青年へのはかない愛といった甘美で危うい世界を優美かつ豊麗な音楽で奏でる絢爛たる作品だ。今年1月に亡くなったシェンクによる演出は、1968年以来、変わることなく続いている名演出で、シェンク自身によれば「音楽とテキストによって多くが決められており、それを再現するだけでいい」ということで、奇抜さや恣意的な演出はあえてない。
つい先シーズンまでウィーン国立歌劇場の音楽監督も務め、ヨーロッパを中心にその実力が高く評価されているフィリップ・ジョルダンの指揮によりウィーン国立歌劇場管弦楽団が優美かつ豊麗な音を響かせ、名歌手たちの歌声とあいまって、陶酔的な魅惑の世界が現れる。
18世紀ウィーンの上流社会を舞台にした『ばらの騎士』は絢爛という表現がふさわしい。photography: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
オペラの引越し公演は、指揮者、オーケストラ、歌手陣、演出、舞台美術、照明などがすべてやってくる贅沢な総合芸術。東京文化会館の改修工事が行われる今後3年間は、日本国内でこれだけのレベルの本格的なオペラの引越し公演は体験できないだろう。オペラファンなら絶対に見逃せない本公演、まだ少しチケットが残っているので、ぜひ鑑賞してみては?
『ばらの騎士』より。陶酔的な美の世界へ誘われる。photography: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
『フィガロの結婚』
日時:2025年10月5日(日)14:00、7日(火)15:00、9日(木)18:00、11日(土)14:00、12日(日)14:00
会場:東京文化会館
『ばらの騎士』
日時:2025年10月20日(月)15:00、22日(水)15:00、24日(金)15:00、26日(日)14:00
会場:東京文化会館
チケット料金:平日S¥79,000、A¥69,000、B¥55,000など 土日S¥82,000、A¥72,000、B¥58,000など
チケットの申し込み・問い合わせ:NBSチケットセンター 03-3791-8888(平日10:00〜16:00、土日祝休み)
https://www.nbs.or.jp/
*チケットはそのほかe+、チケットぴあ、ローソンチケット、楽天チケット、東京文化会館チケットサービスでも販売中。
text: Natsuko Kadokura