シャネル・ネクサス・ホールで開催中! 最先端AIアートとエコロジーが融合した「もつれあう世界」とは?

Culture 2025.11.13

シャネル・ネクサス・ホールでは、AIアートとエコロジーが融合する展覧会『Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地』を12月7日まで開催中。

251111-nexushall-chanel-01.jpg

©CHANEL

作品を手がけているのは、リスボンを拠点に活動するアーティスト、ソフィア・クレスポと、彼女がノルウェー出身のアーティスト/研究者であるフェイレカン・マコーミックとともにアーティスト・デュオとして活動するエンタングルド アザーズ。

アーティスティックディレクターを務めた長谷川祐子によると、本展は「テクノロジーと生命、過去の科学史と未来の想像力が響き合う、アートとAIの交差点」。クレスポとマコーミックは、AIを使って"まだ見ぬ自然"を形にするが、それは単なるデジタル画像ではない。彼らは科学的な観測データ、動植物の生態記録、海洋の深層に眠る情報ーーそれらをもとに、AIと人間の想像力が手を取り合って、新たな「生命のビジョン」を描いているのだ。

例えば、私たちは2000m以深の深海についてはまだ2%ほどしか理解できていないと言われている。その未知の海を、AIの助けを借りて"想像"する。そして私たちが深海について未だ十分な理解に至っていないことを示しつつ、そもそも現代の技術そのものが安定してこの領域に到達し得ていないという「技術の現在地」をも可視化するーー。それが、水面から深海へとつながる海洋層に関するシリーズの最新作《liquid strata : argomorphs(流動する海洋層:変態するアルゴフロート)》(2025)だ。

251111-nexushall-chanel-02.jpg

手前の彫刻が《liquid strata : argomorphs(流動する海洋層:変態するアルゴフロート)》(2025)のひとつ。この彫刻シリーズは、深海という未知の世界の多様性、特異性とともに、不気味さを表象。それは人間やAIの想像力が世界の認識を静かに変えていくことを物語っている。©CHANEL

また、《specious upwellings(見せかけの湧昇)》(2022-2024)は、深海から冷たく栄養豊富な水が海面近くへと押し上げられる「湧昇」という現象に関するさまざまなデータやイメージをもとに、AIを用いてビジュアライズした作品。多様な情報がもつれあって形成される「未知の生き物のようなイメージ」は、私たちが巨大な現象の全容を捉えようとするほどに、そこに内包される複雑な関係性と、まだ知覚できない広大な領域の中に迷い込んでいくことを暗示している。

251111-nexushall-chanel-03.jpg

湧昇という自然現象をAIを用いて視覚化した作品。 《specious upwellings》detail, 2022-2024 © Entangled Others

現在進行形で続いている書籍とプリントのプロジェクトであり、「存在しなかった自然史の本」というコンセプトのもと、架空の人工生命体について探究、表象するのが《Artificial Natural History(人工自然史)》(2020-2025)。クレスポは18世紀の博物画家ルイ・ルナールの魚類の彩色図などを含むさまざまな生物の図像をデータセット化し、AIを用いて存在しない生物の画像を生成。解読不能な記述や歪んだ生命たちは、自然科学におけるカテゴライズや体系化の前提を問い直すとともに、自然や世界において、まだ多くの未知の領域があることや、その中に広がる無限にも思える生物の多様性を讃えている。

251111-nexushall-chanel-04.jpg

《Artificial Natural History(人工自然史)》(2020-2025)とアーティストのソフィア・クレスポ。©CHANEL

---fadeinpager---

「この展覧会をめぐると、私たちは世界を知るために使える手段の豊かさ、目に見えないものを表現する創造の力に触れます。...深海の静けさ、微細な生物の時間、湧き上がる大胆な水の流れーーそれらが織りなす新しい美しさは見るものの感覚をゆさぶり、世界をもう一度見つめ直す体験をもたらすことでしょう」と長谷川祐子は語る。いま世界のアートとテクノロジーが交差する臨界点でもっとも注目を集めている彼らの作品を体験しに、ぜひ銀座へ出かけてみて。

251111-nexushall-chanel-05.jpg

ソフィア・クレスポ/Sofia Crespo
1991年生まれ、アルゼンチン出身。現在はポルトガル・リスボンを拠点に活動。テクノロジーと有機的生命との共生関係に深く入り込み、テクノロジーを自然から切り離されたものとする従来の見方を再考する作品を制作。代表的なプロジェクトには《Neural Zoo(ニューラル・ズー)》(2018-2022)や《Artificial Natural History(人工自然史)》(2020-2025)などがあり、仮想的な生態系や生命体をAIなどを通して表現、提示することで「人工」と「自然」の境界について鑑賞者に問いかける。アーティストとしての活動に加えて、マサチューセッツ工科大学やオックスフォード人工知能学会などで講演を行い、機械学習を用いる現代のアーティストの役割についても模索している。2025年にはABSデジタルアート賞にてアンナ・リドラーとともに「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞。 photography: Filipa Aurélio

251111-nexushall-chanel-06.jpg

エンタングルド アザーズ/Entangled Others
フェイレカン・カークブライド・マコーミック(1987年、ノルウェー出身)とソフィア・クレスポ(1991年、アルゼンチン出身)によって2020年に設立された実験的なアーティスト・デュオ。これまでにアメリカ・オハイオ州のトレド美術館、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、マサチューセッツ工科大学、オックスフォード大学、パリのユネスコ本部など、さまざまな場所・会場でのプロジェクトに参加。photography: Klemen Skočir

251111-nexushall-chanel-07.jpg

本展でキュレーターを担当したキュラトリアル・コレクティブ「HB.」共同代表の三宅敦大。本展は私たちを取り巻く世界の変化を理解し、生活に適応させるための新しいフォーミュラ(公式)を探る、現代アート展企画の第2弾。本シリーズは長谷川祐子が主宰する「Hasegawa Curation Lab.」とのコラボレーションのもと、次世代を担う若手キュレーターを起用。

『Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 
ソフィア クレスポ/エンタングルド アザーズ』

会期:〜2025年12月7日(日)
会場:シャネル・ネクサス・ホール
東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング 4F
開)11:00〜19:00  *最終入場18:30
入場無料・予約不要
https://nexushall.chanel.com/program/2025/synthetic-natures
問い合わせ先:
シャネル・ネクサス・ホール事務局
nexus.ginza@chanel.com

text: Natsuko Kadokura

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
映画『兄を持ち運べるサイズに』
当たっちゃってごめんなさい占い
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.