ディディの被害者とされるタリア・グレイブス、自身が受けたレイプについて語る。
Celebrity 2025.02.07
ディディの事件での被害者とされる人々の中で、タリア・グレイブスはドキュメンタリー番組「The Fall of Diddy」のカメラの前で証言することに同意した人物のひとりだ。
2024年9月24日、ロサンゼルスで記者会見するタリア・グレイブス。photography:AP/Aflo
このドキュメンタリー番組は公開後、大きな話題を呼んだ。その理由は、約30人の証言が新番組「The Fall of Diddy」に深みを加えているからだ。共同監督を務めるヨルバ・リチェンは、この事件がいかにしてアメリカのラップ界の大スターを転落させたのかを振り返った。参考までに、2023年11月、カサンドラ・ヴェンチュラ(芸名:キャシー)が、元交際相手であるディディに対し、2005年から2018年にかけてのレイプと身体的暴力で告訴した。彼女がこの件を公にしたことで、ラッパーによる虐待に関する証言が次々に出てきている。
2024年9月16日、ディディはニューヨークで逮捕され、すぐに組織的恐喝、売春斡旋、州間での売春婦輸送の容疑で起訴された。彼は現在、勾留中であり、ニューヨークでの裁判は2025年5月5日に開始される予定だ。ラップ業界での華々しい成功にもかかわらず、彼の不正行為はついに彼を追い詰め、その転落はさらに激しくなった。ドキュメンタリー番組のエピソードでは、被害者とされる人物たちがラッパーと接触する中で経験した出来事を証言している。タリア・グレイブスは、24年前に自身が受けたレイプについてカメラの前で語った。
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「彼の声を聞くだけで、お腹が痛くなる」
「私はこれを何年も抑え込んできました」とタリア・グレイブスはカメラの前で語った。2024年9月、彼女はディディに対して強姦で告訴した9人目の被害者となった。記者会見で彼女は、事件が自身の健康に与えた影響を証言していた。数ヶ月後、ドキュメンタリー番組「The Fall of Diddy」の中で、タリア・グレイブスは涙をこらえながらも、震える声で勇気を持って自ら証言した。
事件は2001年に起こり、その当時、タリア・グレイブスはクイーンズに住んでいた母親だった。「私は母親で、ちょうど離婚中だった」と彼女は語った。当時、彼女はディディのレコード会社「バッド・ボーイ・レコード」の社員と恋愛関係にあった。「彼をきっかけに、マンハッタンのディディのスタジオで彼に会った。初めて会ったとき、彼はとても親しみやすかった」とタリア・グレイブスは語った。「ディディは冗談を言って、よく笑っていました。でも今思い返すと、彼は今では通用しないような発言をしていました。例えば、『彼女をひとりにさせるな、可愛いし、繊細だから』というような言葉です。後になって気づいたのですが、彼は殴る準備をしていたのだと思います」。
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「ますます訳がわからなくなった」
タリア・グレイブスは、ディディと彼女の恋人の職場での態度についてよく話していたため、「バッド・ボーイ・レコード」のスタッフが彼女のもとに電話をかけてきて、『ディディが話したいと言っているので車で迎えに来る』と聞いても心配することはなかった。ディディは、彼女の彼氏が「仕事でまた問題を起こした」と言っていた。「車に乗った時、彼は何か飲みたいかと聞いてきたので、私はそれを受け入れました。彼は赤いプラスチックカップで飲んでいて、私は透明なカップでロゼワインを渡されました」と彼女は語る。その途中、彼女は「ふらふらし始め、頭がクラクラして顔が痺れてきた」という。彼女は、「バッド・ボーイ・レコード」のスタジオで恋人に会うと思っていたが、ディディは別の部屋へ誘導し、ドアを指差した。「私はソファに座っていて、ディディは隣に座っていました。どれくらいの時間が経ったのか分かりませんでしたが、ますます訳がわからなくなりました」とタリア・グレイブスは証言している。
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「両手を後ろに縛られた」
ディディの隣に座っていたタリアは泣き出し、状況が理解できなかった。突然、彼女は部屋のビリヤード台に投げ出された。「私は裸でテーブルの上にいて、両手を後ろで縛られていました。ディディはバーの隣にいて、裸でした。バーの上にポットがあって、彼はその中に入っていたものを取って、自分の陰部に塗りたくりました」。タリア・グレイブスは、この恐ろしい出来事を思い出し、涙を流さずにはいられなかった。「ディディは私の背後に回り、私を犯しました。あまりの激しさにビリヤード台に吐いてしまいました。私は悲鳴をあげました。悲鳴をあげたときに声が出せたかどうかもわかりませんが、肛門を焼かれたのです」と被害者は付け加えた。彼女は身を守ろうと、足で彼を殴ろうとしたが、それを妨げることができなかった。「しばらくして彼は止め、バーに行って体を拭きました。それから彼は戻ってきて、挿入したのです」とタリアは続ける。あまりの激しさに彼女は意識を失った。
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「私は打ちのめされていた」
タリアは、朝ソファで目を覚ますと、全身が汚れ、嘔吐物やよだれが残った状態だったと振り返る。「手が縛られていないことに気づき、急いでブラジャーとドレスを着たけれど、正しく着られていたかは分かりません。そして、恐怖に駆られながらその場を逃げ出しました」と語った。タリアはその後、タクシー運転手の知り合いに連絡し、助けを求めた。運転手が到着し、彼女は前席に乗り込んだものの、その時の心情について「打ちのめされていました。彼はショックを受けていて、すぐに私に何が起こったのか尋ねました」と明かした。
彼は彼女を病院に連れて行こうとしたが、タリアは拒否し、警察とも話したがらなかった。彼女は次のように告白した。「怖かった。親に話さなければならないことが怖かったし、この出来事が自分の子どもの親権を取ることを妨げるのではないかという恐れもありました」。タリアは自宅に戻った。「ベッドに寝て、親がいる間に3日間も親を避けていました。自分に何が起こったのか実感できなかったのです。それが現実のように思えず、『どうして私が?』と感じていました」とタリアは話す。その後、ディディから電話がかかってきた。彼は彼女を脅し、何も言わないように言ってきた。「ディディには何も隠せませんでした。彼は全能だったのです」。
2017年5月1日、ニューヨークのメトロポリタン美術館でのディディとキャシー。photography: Van Tine Dennis/ABACA
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「毎日が生き残るための戦いだった」
彼女はニューヨークを離れ、目立たずに静かに他の場所で新しい人生を再建することを決める。しかし、この決断は簡単ではなかった。この暴力的な攻撃が彼女の健康に大きな影響を及ぼしていたからだ。「私は強姦と暴行を処理しながら、うつ病の中で子どもを育てていた。そして毎日が生き残るための戦いだった」とその被害者は語る。涙を頬に流しながら、何度も自殺を考えたことを告白する。
しかし、2023年11月、すべてが変わった。元彼から連絡があり、彼女への暴行が撮影されていたことが伝えられた。そして、キャシーがディディに対して告訴したことを知り、彼女がディディから受けた同じような暴行を受けたのは自分だけではないことに気づいたのだ。「彼女はパンドラの箱を開けました。それまで私は私だけが彼の犠牲者だと思っていたのです」。現在、彼女はディディの行為が法的に処罰されることを望んでいるが、このトラウマとともに生きていかなければならない。「声を上げることができるようになったのは、ある程度解放されたからですが、もしこの記憶をすべて消すことができるなら、今日でもためらわずにそうしたいです。もうこのトラウマとともに生きたくありません」とタリア・グレイブスは語り、再び感情に押しつぶされそうになりながら締めくくった。
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From madameFIGARO.fr
text: Leonie Dutrievoz (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi