「アメリカ男性のファッションの誇張」? イーロン・マスクの服装の変化とは。
Celebrity 2025.04.10
トランプ大統領の再選以来、テスラのCEOのスタイルはダークかつエキセントリックな方向へと変化した。ソルボンヌ・ヌーヴェル大学のメディア社会学者、ジャミル・ダクリアにこの服装が何を意味するのか、分析する。
これまでのイーロン・マスクのイメージとはかけ離れた、衝撃的な光景だった。
2025年2月20日、ゲイロード・ナショナル・リゾート&コンベンション・センターで開催されたPAC(保守派政治行動会議)に、彼はサプライズ登場。そしてわずか30分後、真っ赤なチェーンソーを振り回し始めたのだ。このチェーンソーは、アルゼンチンの"チェーンソー大統領"ことハビエル・ミレイから贈られたもので、マスク率いる省庁による政府予算の大幅削減を象徴するジェスチャーとも解釈できる。
その夜のマスクの装いもまた、常識を覆すものだった。大きなサングラスで顔を覆い、ゴールドチェーンをジャラジャラと首にかけ、頭には黒いキャップ──そこにはゴシック体でトランプ大統領のスローガン「Make America Great Again(略称:MAGA)」が記されていた。黒のスーツジャケットの下に着ていたのは、こんなメッセージTシャツ:「I'm not procrastinating, it's a side quest(先延ばししてるんじゃない。これはサイドクエストだ)」。ゲーマーにはおなじみの、オタク的ジョークだ。つまり、マスクのスタイルは劇的に変わった。より明確に、より政治的に、そしてより過激になっている。
「イーロン・マスクは、自らの服装スタイルを模索した結果、男性主義的なファッションにたどり着いたのです」とダクリア氏は語る。「ラフなTシャツ、芯のない軽いジャケット、キャップ帽──これは、平均的なアメリカ男性のドレスコードを誇張したものです」
内向的なオタクから外向的な権力者へ
40年前のイーロン・マスクを知る人にとって、彼の今の姿はまさに"誇張"の一言に尽きるだろう。南アフリカのプレトリア高校に通っていた頃の、さわやかなセーター姿。スタンフォード大学の博士課程でエネルギー物理学を学んでいた時代に、いつも着ていたサイズの合わないポロシャツ、色あせたジーンズ、ローファー。
「彼のファッションの原点はシリコンバレーにあります。そこでは"オタク・ユニフォーム"が存在するのです。ダボダボのTシャツにチグハグな色合い──つまり、頭ばかり使っていて服には無頓着な人々の装いです」と、ダクリア氏は指摘する。
しかし、時代は変わった。SNSの登場によって、イメージ戦略が一気に重要視されるようになった。かつてのIT長者たちもファッションや政治的影響力に敏感になっていった。スティーブ・ジョブズがイッセイ・ミヤケの黒セーターを制服にしていた"シンプル時代"は終わり、マーク・ザッカーバーグは今や『ファイト・クラブ』のブラッド・ピットのようなアビエイタージャケットで登場。ジェフ・ベゾスはカウボーイハット姿で米『VOGUE』誌に登場し、話題をさらった。
"計算されたファッション"という武器
マスクほどの人物が服装を変えようと決めたなら、それは当然、劇的なものになる。
「マスクの現在のスタイルは、"男たちの映画"に出てくるようなファッションです。バーでビールを飲む時やストリップを観に行くときに着ていそうな服装。そして、彼のワードローブには黒が多く使われています。これは、反動的イデオロギーとダークカラーが結びついていることを象徴しているのでしょう」とダクリア氏。「黒がスタイリッシュだから選んだだけ、と思う人もいるかもしれません。しかし、彼のキャップ帽には明確な政治的イデオロギーが現れています」
実際、マスクは2024年10月、ペンシルベニア州で自らの帽子を指差しながらこう語った。「ご覧の通り、私は"ただのMAGA"ではなく、"ダークMAGA"です」と。この"ダークMAGA"とは、SNS上でトランプ支持を掲げる極右の最過激派のこと。今やこの一派の間で、マスクのダークな装いは模倣の対象となっている。
ここに、他のIT長者たちとマスクとの違いがある。SF映画のキャラクターのような、完璧に計算された"暴力的スタイル"──それが彼のパーソナリティと見事に一致している。だからこそ、会議の場で子どものように飛び跳ねたり、チェーンソーを振り回したり、レッドカーペットでタキシード&蝶ネクタイ姿でしかめっ面をしても許されるのだ。
昨年4月、コンサルティング会社「エミリー・コンセイユ」のエミリー・ザパルスキはこう語っている。「イーロン・マスクは"正統派"です。彼の服装には一切のミスがありません。すべてが計算され尽くしているのです。ベゾスやザッカーバーグは、まだ模索中といった印象です」
映画の衣装のように装う、かつての"オタク"
かつてコンピューターの前にかじりついていた男が、今ではカメラの前に立つことを喜んでいる。まるで映画の衣装かと思うほど意図的に選ばれたワードローブが、それを如実に物語る。とはいえ、そこからにじみ出る"昔のオタク感"が、どこか切ない。
それは、幼少期のトラウマに囚われた"永遠の少年"の姿。実の娘ヴィヴィアン・ウィルソンも、2025年3月の『ティーン・ヴォーグ』誌で父を「哀れな子ども」と評していた。ダクリア氏もこう結論づける。「彼の攻撃的な言動の裏には、未熟で子どもっぽい不安定さがあります。心理分析をしなくても、童顔とその行動が、その未熟さを物語っているのです」
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内向的なオタクから外向的な政治家へ、イーロン・マスクのファッションの進化














































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text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr)