「背中見せドレス」が新たなトレンドに?
Celebrity 2025.07.08
背中見せは、大きく開いた胸元よりは控えめではあるが、大胆さでは引けを取らない。今や多くの女性の心をつかみ、その人気は急上昇中である。ファッション史の専門家、ステファニー・ブリセがその理由を解き明かす。

1972年の映画『Le Grand Blond avec une chaussure noire(原題)』でミレーユ・ダルクが着用したあの背中が大胆に開いたブラックドレスは、今もなお多くの人の憧れの的である。
ギ・ラロッシュによるこの背中が大胆に開いた一着は、当時ピエール・リシャールやフランス中を驚かせた。ここ数か月、多くのセレブたちが胸元が大胆に開いたドレスを敬遠し、背中見せドレスを選ぶ傾向が強まっている。今年はカーラ・ブルーニがそのトレンドを牽引している。2025年1月26日、パリで行われたジャックムス2025-2026年春夏コレクションのショーでは、元ファーストレディの彼女がマーメイドラインのロングブラックドレスを纏い、バルドースタイルの首元と大胆な背中見せで大きな話題を呼んだ。
数日後にはロサンゼルスで、オールドハリウッド風シルエットがまた注目を集めた。第67回グラミー賞のレッドカーペットに登場したアメリカの歌手サブリナ・カーペンターは、背中が大胆に開いたドレスを選んだ。青いサテン素材に羽根があしらわれ、その背中には煌めくチェーンが飾られていた。前面は控えめなハイネックで胸元を上品に隠し、1964年の映画『何という行き方!』で女優シャーリー・マクレーンが着用した衣装へのオマージュが込められている。
Shirley MacLaine in What A Way To Go (1964) & Sabrina Carpenter at the Grammys (2025) pic.twitter.com/CV0TdBUXIp
-- fiffy (@vanillapisces1) February 2, 2025
映画『何という行き方!』(1964年)での女優シャーリー・マクレーンとグラミー賞(2025年)のサブリナ・カーペンター。
2025年5月16日のカンヌ国際映画祭レッドカーペットに、背中が彫刻のように美しいルイ・ヴィトンのドレスを纏って登場した女優エマ・ストーンから、2025年のゴールデングローブ賞でバレンシアガのドレープドレスを披露したニコール・キッドマン、さらにヴァラエティ・アワードで背中が大胆に見えるサンローランのシースルードレスを着たエレクトロポップ界のスター、チャーリーXCXまで、この背中見せスタイルは、伝統的な胸元が大胆に開いたドレスに代わる存在として台頭し、50歳以上のオスカー受賞女優からZ世代の20代の人気スターに至るまで、あらゆる世代の女性たちを魅了しているのは明らかだ。
検閲から生まれたトレンド
「このトレンドは、1930年代のハリウッド映画から本格的に始まりました。というのも、当時はプロデューサーたちが胸元が大胆に開いたドレスを禁止していたからです。そのため、代わりに背中があいたデザインでバランスを取ろうという発想が生まれたのです」とスタイリストでファッション史家のステファニー・ブリセは語る。この大胆な制限の背景には、元アメリカ郵政長官で敬虔な長老派で保守的な人物、ウィリアム・ヘイズの存在があった。彼は、ハリウッド映画に"道徳的なルール"を持ち込むことを決めたのだ。「これは実際には、カトリック系団体の批判をかわすための措置でした。彼らは絶えず圧力をかけ、映画の内容に修正を求めており、結果として映画産業そのものが脅かされる状況にあったのです」と、仏紙『リベラシオン』は伝えている。当時、セックス、売春、同性愛、そして大胆に開いた胸元はスクリーン上で禁じられていた。
そのため、アメリカ人女優グロリア・スワンソンは、1931年の映画『Tonight or Never(原題)』のあるシーンで、ガブリエル・シャネルが手がけた上品な背中見せのブラックドレスをまとった。とはいえ、背中を見せるという選択は、映画にとって新たな創造の領域を切り拓くことにもなった。セックスシンボルやピンナップガールが登場するようになると、体の中で唯一少しだけ肌を見せることが許された"背中"は、やがてどんどん大胆に露出されるようになっていった。「ドレスの前面の開きは、性的に捉えられやすい"胸"を露出していました。でも"背中"は胸とは正反対で、性的・エロティックな部位とは見なされていなかったのです。そのかわりに、背中は"官能性"の象徴として存在感を高めていきました」と、ファッション史の専門家は語る。

では、2025年に背中見せデザインが再び注目されているのは、いったい何を意味しているのだろうか?ファッション史家のステファニー・ブリセによれば、この現象は今の不安定な社会状況と深く関係しているという。「私たちは決して順調とは言えない時代を生きています。そんな中で、"背中"という部位は、身体を支えるという意味で、一種の"強さ"の象徴になっているのです。」また彼女は、この背中見せトレンドには、あえて"官能性"を打ち出そうとする意志も感じられると指摘する。というのも、現代はプレタポルテからファストファッションまで、女性にさまざまな、時には矛盾した価値観が提示されており、「上品」と「下品」の境界が曖昧になっている。背中見せスタイルは、エレガントでタイムレスな美しいシルエットを手に入れられるだけでなく、公共の場でも安心して着られるというメリットがある。「背中見せの服なら、もし誰かが悪意ある視線を向けていても、それに気づくことはないので、周囲の目をあまり気にせずに済むのです」と、ブリセは締めくくった。
From madameFIGARO.fr
text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi