アメリカに拘束されたベネズエラのファーストレディ「シリア・フローレス」って何者?
Celebrity 2026.01.06

ベネズエラ政界における重要人物であり、批判の的にもなってきたシリア・フローレスが2026年1月3日、米国による急襲作戦で夫のマドゥロ大統領と共に拘束され、国外へ移送された。ベネズエラ大統領は力強い味方である妻のことをファーストレディならぬ「第1(ファースト)戦闘員」と呼ぶのが常だった。

ベネズエラ大統領就任式でのニコラス・マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス。(カラカス、2025年1月10日)photography: DPA/ABACA
2026年1月3日午前2時頃、ベネズエラの首都カラカスの市民は、響き渡る激しい爆発音を耳にし、驚がくした。数時間後、CBSとフォックスニュースはこの事件に米国が関与していることを確認し、続いてドナルド・トランプが自身のSNS「Truth Social(トゥルース・ソシアル)」で、ベネズエラ大統領ニコラス・マドゥロと妻のシリア・フローレスを拘束したと発表した。
米国司法長官パメラ・ボンディによると、ベネズエラ大統領夫妻はニューヨークで起訴され、「麻薬テロ共謀、コカイン輸入共謀、自動小銃および爆発物の所持、ならびに米国に対して自動小銃および爆発物を使用する目的の共謀」の罪に問われている。CNN ベネズエラによれば、これらの容疑は特に、シリア・フローレスの甥2人が麻薬密売ネットワークに関与した件に端を発している可能性があるそうだ。2人の甥は2015年に逮捕され、18年の禁錮刑を言い渡されている。
シリア・フローレスはファーストレディーになる前から長年にわたり、同国の大物政治家のひとりだった。夫は「ファーストレディー」という呼称を好まず、公の場で彼女を「祖国の第1戦闘員」と呼んでいたと、週刊誌「ジュンヌ・アフリック」は伝えている。
有能な弁護士
シリア・フローレスは1956年、ベネズエラ北部の町、ティナキージョで生まれ、首都カラカスで育った。6人の兄姉がいる家庭は裕福とは言えなかった。彼女はカラカス大学法学部に進学し、刑法と労働法の専門家となる。弁護士として名を知られるようになったきっかけは、1992年のクーデター未遂事件で訴追されていたウゴ・チャベスを弁護したことだった。そう、やがて大統領(在任1999~2013年)となる男だ。1994年のチャベス釈放に貢献した後、彼女は政治の世界に関わるようになり、さまざまな組織で活動するようになった。チャベス率いるボリバル革命運動200(MBR-200)にも参加した。その後、彼女は第五共和国運動(MVR)の創設メンバーとして、かつて自らが釈放に尽力したチャベスを支えて1998年の大統領選挙での勝利に導く。彼女の政治キャリアは、ここから本格的に始まった。2000年には国民議会議員に選出され、5年後に再選される。2006年には女性として初めて国民議会議長に就任した。ちなみに前任者はニコラス・マドゥロだ。2012年にはベネズエラの法務長官に就任するが、2013年にウゴ・チャベス大統領が死去し、辞職する。その後の大統領選ではニコラス・マドゥロが当選、ふたりはほどなく結婚した。

ニコラス・マドゥロと妻シリア・フローレス。ボリバル広場での行事にて。(カラカス、2019年2月7日)photography: Efe/ABACA
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出会いから20年
ベネズエラのファーストレディーになる20年前、シリア・フローレスはニコラス・マドゥロと出会った。当時、ニコラス・マドゥロはウゴ・チャベスのために奔走していた。「チャベス解放のため、私たちは街頭活動をしていました。カティアでの集会をいまでも覚えています。ある若者が発言を求め、話し始めたのを見て、私は『なんて聡明な人だろう』と思ったのです」と、彼女は2023年11月、CNNベネズエラに思い出を語っている。69歳の今日に至るまで彼女は夫の政治キャリアを一貫して支え続けてきたが、決して影の存在としてではない。「彼女は大統領職の単なるお飾りではない。マドゥロの右腕になるだろう」と2013年のマドゥロ大統領就任直後、PSUV所属の国会議員である友人カリクスト・オルテガはジュンヌ・アフリック誌に語っている。この年、ふたりは交際期間20年を経て結婚した。ふたりの間に子どもはいない。
チャベス主義(チャビスモ;ウゴ・チャベス、次いでニコラス・マドゥロが率いるボリバル革命の思想・運動・政治体制を指す)の旗振り役としてシリア・フローレスは夫の行動にいつも寄り添い、権威主義的で抑圧的な体制を「妥協することなく」、時には攻撃的な姿勢で支えてきたとジュンヌ・アフリック誌は報じている。ロイターによれば、周囲の人間は彼女が「駆け引きが上手で目立つことを好まない政治家であり、現在では夫の職権の多くを掌握し、大統領の前でさえ重要なブリーフィングを要求し、外国の特使や対立政党の議員と自ら交渉する人物」と評している。こうした姿勢は、野党からの激しい批判を招いてきた。「彼女は完全な政治的地位を有している。ファーストレディーは表舞台から一歩引いた役割のように見えるが、多くの人にとって、彼女は"玉座の背後にいる権力"あるいは最前線の助言者だ」と、シモン・ボリバル大学の准教授で政治学博士のカルメン・アルテアガはCNN ベネズエラに語っている。

ニコラス・マドゥロと妻シリア・フローレス。ボリバル広場での行事にて。(カラカス、2019年2月7日)photography: Efe/ABACA
論争の渦中で
批判に加え、シリア・フローレスに対しては数多くの疑惑がまとわりつく。ロイターによると、彼女は「特権的地位を利用して親族に政府内の重要かつ高給のポストを与えた」として、縁故主義をひんぱんに非難されてきた。2015年には、甥2人による麻薬取引事件が起こった。2人はハイチで米国麻薬取締局(DEA)の潜入捜査官によって逮捕され、その後、米国へのコカイン輸入を共謀した罪でニューヨークにて18年の禁錮刑を言い渡された。当時、ファーストレディーはこ2人が「誘拐された」と主張したとCNN ベネズエラは伝えている。甥たちは2022年、米国とベネズエラの囚人交換によって釈放された。この事件自体は終結しても、身内が麻薬取引に関与した影響は、いまなお拭いきれない。シリア・フローレスと夫が今後、数々の告発に対してどのように自らを弁護していくのかが注目されている。
From madameFIGARO.fr
text: Leonie Dutrievoz (madame.lefigaro.fr)




