気分で選ぶ、私のおすすめ映画。#03 とんだ林蘭が、怖くてドキドキしたいときに観る映画3本。

Culture 2017.01.20

雑誌やウェブなどさまざまなジャンルで活躍する若きアーティスト、とんだ林蘭さんに選んでいただいたのは「怖くてドキドキしたいとき」におすすめの映画。何度も観たアルフレッド・ヒッチコックの名作や、官能的で残酷な少女たちの物語、大好きなクエンティン・タランティーノ脚本&出演作品。刺激がほしい夜にぜひ。

スリリングな展開、想像をかき立てる恐怖……さまざまな怖さのカタチ。

ヒッチコック監督の『サイコ』は、前半のスリルと後半のスリルが、まったく別モノなのがおもしろい。そして、唐突な死。現実でも、案外死ぬときってこのくらい唐突なのかもと思いました。ストーリーに惹きつけられるだけではなく、ひとつひとつの映像の構図や、効果音、セリフのセンスがたまらないです。スリリングな映画ですが、何度も観ていると不思議とコメディにも感じる時があります。殺人鬼は、マリオンの盗んだ4万ドルには気がつかず死体と一緒に泥の中に沈めてしまったわけですが、もし沈める前に気がついていたら、どんな反応をしていたのでしょうか。サイコパスの、お金に対する反応が気になってしまいました。人間の狂気を感じるラストシーンも印象的で、表情の演技にゾッとします。

ミステリアスで、とてつもなく美しくて、官能的で残酷な映画『エコール』。主に少女たちしか登場しません。塀の中の学校で、奇妙な規則に縛られて生活する可憐な少女たち。棺桶に入れられて入学する新入生、身に纏うのは真っ白な洋服のみ、結われた長い髪には大きなリボン、異性のいない世界。設定や映像のすべてがドタイプすぎて、強く心を惹かれます。かなりダークな裏設定があるように思えるのですが、ストーリーの説明がほとんどないため、なぜ彼女たちはここで暮らしているのか? この学校の本当の目的は何なのか?と、疑問が次々に浮かんできてハラハラドキドキ。セリフや音楽の少ない静かな映画なので、そのぶん生活音が印象的です。ものすごく集中して観るのはもちろん、美しい映像をただ、ぼーっと眺めるだけでも、どちらでも楽しめるところもイイ。ひとりの少女のいろいろな感情が入り交じるラストシーンは、本当に素晴らしいです。ダイレクトな怖さはありませんが、この映画でしか感じることのできない恐怖があります。ちなみに、ルシール・アザリロヴィック監督の最新作『エヴォリューション』もぜひ併せて観てほしい! 全然別の話なのですが、シンクロしている部分が多い気がします。

そしてもうひとつ、大好きなタランティーノが脚本、出演している『フロム・ダスク・ティル・ドーン』。ひょんなことから最悪な殺人犯に脅され、逃亡の手助けをすることになってしまったとある家族。その恐怖が丁寧に描かれた前半と、とんでもないことになる後半の差といったら、もう爆笑ものです。後半も、恐怖であることに変わりはないのですが、あのシリアスな前半は壮大な前フリだったんだ!という面白さ。何だこの急なB級感! コントラストが激しすぎてやばいです。思いきったストーリーがかっこいいです。続編やテレビシリーズにもなっているようですが、わたしはいまのところこれしか観ていません(笑)。

01. 『サイコ』

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© 960 Shamley Productions, Inc. Renewed 1988 By Universal Studios. All Rights Reserved. Supplemental material written, Produced and directed by Laurent Bouzereau.

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© 960 Shamley Productions, Inc. Renewed 1988 By Universal Studios. All Rights Reserved. Supplemental material written, Produced and directed by Laurent Bouzereau.

恋人のため、会社の金を横領した女が立ち寄ったベイツ・モーテル。隣接する丘の上の屋敷には、管理人の青年ノーマン(アンソニー・パーキンス)と、彼の年老いた“母”が住んでいて……。サスペンス・スリラーの最高傑作で、映画史に残る浴室シーンはあまりに有名。

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●監督/アルフレッド・ヒッチコック
●脚本/ジョセフ・ステファーノ
●出演/アンソニー・パーキンス、ジャネット・リーほか
●1960年、アメリカ映画
●DVD ¥1,544
●販売元/NBCユニバーサル・エンターテイメント

02. 『エコール』

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人里離れた深い森の奥にある学校エコールは、6歳から12歳の少女たちが過ごす美しいユートピア。男性がいない閉鎖的な世界に、ある日6歳のイリスがやってくる。少女たちは次第に外界に憧れを募らせていくが……。アニエス・ベーが担当した清楚な白い制服も印象的。

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●監督・脚本/ルシール・アザリロヴィック
●出演/マリオン・コティヤール、エレーヌ・ドゥ・フジュロール、ゾエ・オークレールほか
●2004年、ベルギー=フランス=イギリス合作映画
●DVD ¥2,700
●発売元/カルチュア・パブリッシャーズ
●販売元/ハピネット
© Ex Nihilo / Bluelight l'Ecole Ltd / UK Film Council / Les Ateliers de Baere / Gimages Films / Love Streams Productions

03. 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』

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©Everett Collection/amanaimages

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©Mary Evans/amanaimages

凶悪な銀行強盗ゲッコー兄弟(ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ)は、牧師一家を人質にメキシコに逃亡する。仲間と落ち合うべく向かった先は、砂漠にある巨大なナイトクラブ。バイカーやトラック運転手がたむろするそこには、恐るべき秘密が隠されていた……。

●監督/ロバート・ロドリゲス
●脚本・出演/クエンティン・タランティーノ
●出演/ジョージ・クルーニー、ハーヴェイ・カイテル、ジュリエット・ルイスほか
●1996年、アメリカ映画

●特集INDEX
●映画監督・俳優の松居大悟が選ぶ、笑いたいときに観る映画。

●フォトグラファーシトウレイが選ぶ、おしゃれしたいときに観る映画。

●シンガーソングライターの石崎ひゅーいが選ぶ、人生を見つめ直したいときに観る映画。

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とんだ林蘭 Tondabayashi Ran
1987年生まれ。コラージュ、イラスト、ぺインティングを中心に幅広い手法を用いて作品を制作。その刺激的なビジュアルは、幅広い層のファンを持ち、ファッションブランドや音楽アーティストとのコラボレーションも多数手がける。

selection et texte:TONDABAYASHI RAN, texte:ERI ARIMOTO

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