なぜ"NO"と言えない人が多いのか?

Culture 2017.08.21

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“NO”と言えない人は、嫌われるのを恐れているのです。 photo : iStock

本当は早く家に帰ってベッドに飛び込みたいのに、飲み会に誘われて断れなかった……なんてことがよくありませんか? 精神科医のファニー・マルト・シャセリオ氏が、“NO”と言えるようになる方法をアドバイスします。

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週末、友人に引越しの手伝いを頼まれ、疲れているにも関わらず、当然のように引き受けてしまうあなた(友人に限らず、同僚、隣人、知人、誰の引越しの場合でもそうでしょう)。ダンボールが好きなのでしょうか? いいえ、あなたは“NO“と言えないのです。では、なぜ断れないのでしょうか? 精神科医のファニー氏がその原因を詳しく解説、断れるようになるためのヒントを教えます。

好かれたい願望

「内向的な性格で、常に周りの人に喜んでもらいたいと思っている人は、嫌われるのを恐れ、誰にでも“YES”と答えてしまう傾向があります。その裏には、気に入られたい、好かれたいという願望があります」と、ファニー氏は分析します。つまり自分がよく思われるために、他の人を助けようとするのです。ここで気をつけなくてはならないのは、好かれたい願望が、何よりも先にきてしまうことです。そうなると、厄介な状況を引き起こします。

たとえば、店員さんを傷つけたくないがために、たいして欲しくもない靴を買ってしまったり、職場で今日の21時までに緊急に仕上げなくてはならない資料があれば、決まって(断れない)自分のもとに仕事が回ってくるようになってしまいます。「職場で常にいろんな人に好かれようとしていると、いつかオーバーヒートしてしまう危険性があります」と、ファニー氏は警告します。プライベートでも同様です。友人の頼み事を何でも引き受け、いつでもみんなに好かれたいという欲求が強いと、そのうち過労でパンクしてしまいます。

この現象は、社交的な性格の人にも見ることができます。「一部の人は、本当のことを言って相手を傷つけたくないために、断れないでいるということがあります。心の底では、その約束を守れないことを十分に分かっていながらです」。このまま嘘をつき続けることになれば、いままで信用してくれていた人たちからの信頼も失いかねません。

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>>“NO”を言えるようになるメソッドとは。

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自己分析の欠如

できると思っていても、身体は反対のサインを送っているのです


“NO”と言えない人は、断ったことで嫌われることを恐れています。そのため、自分の意見を主張することができず、自信もありません。「周りの要求もさることながら、自分にとって必要なことさえ読み取ることができず、お互いにとって最適な答えを導き出すことができません」とファニー氏は補足します。

そこで事態を改善するには、自分の身体に耳を傾けることが大切です。たとえばピラティスのレッスンの5分後に誰かに一杯飲みに行こうと誘われ、また別の人にも別の場所で夕食に誘われて、どちらにも“YES”と答えていたら、明らかに自分に対する注意が足りません。「もし同じ日に異なる誘いを5件以上引き受けていたとすれば、あなたが大丈夫だと思っていても、身体は反対のサインを送っているのです」と、ファニー氏は指摘します。

自覚を持つこと

そこでファニー氏は、意識を自分自身へ向けるためのトレーニングを勧めています。「頭の中の思考を解放して、自分の呼吸や感覚、そして周囲の環境に注意を向けるようにします。野菜の皮を剥いている時や、散歩をしている時でもいいでしょう。休憩をしながら、身体全体を意識し、筋肉や感情の緊張状態を観察します」

もし、疲れて休みたいのに、週末に引越しの手伝いを頼まれたら、まずは答える前に考える時間を取り、自分の身体と相談しましょう。自分自身に目を向けることで、身体の衝動を読み解いていくのです。「一度立ち止まって考えることで、あとで結局約束が守れなくて、言い訳を探さなくてはならない状況に陥らずにすみます」

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“DESC”メソッド、断る術

“NO”と言うことで、自分を守ることができます


“NO”と言えるようになるためのひとつのテクニックが、“DESC”メソッドです。“D”は、“Décrire les faits(出来事を分析すること)”、“E”は、“exprimer nos Émotions(感情を表現すること)”、“S”は“spécifier des Solutions(解決策を示すこと)”、“C”は“Conséquences et Conclusions(結果と結論)”です。

もしも職場で、資料作成のため、今日は遅くまで残業してほしいと頼まれたら、まずは相手にその作業の必要性への理解を示し、同時に、いまは無理なので対応することができないことを伝えましょう。もちろん、お互いにとってプラスになるように、代わりの解決策を提示しておく必要があります。たとえば、明日の朝に作業ができるので、11時に戻すことができますと、提案してみてください。

“NO”と言えるようになるためには、自分の言動を自分から切り離して分析することが重要です。断ったからといって、あなたが悪者になるわけではありません。「断れるようになることで、自分の行動の自由度を高め、自分自身を守ることがができます」と、ファニー氏は言います。

ただし、あまり極端にならないようにしましょう。「いままで何でも引き受けるお人好しとして苦しんだからといって、今度は反射的に“NO”と言うようになってはよくありません。特に受動的で攻撃的なタイプの人は、その傾向が強く、基本は穏やかな性格でありながら、すべてを投げ出すようになってしまうようです」

とにかく、もし友人に引越しの手伝いを頼まれたら、まずは自分の身体と相談することが重要です。仮にエレベーターのない6階の部屋から、友人の洗濯機を下ろすのを手伝わなかったとしても、それでも引越しパーティーには呼ばれるでしょう。

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texte : Sevin Rey (madame.lefigaro.fr), traduction : Sawako Yoshida

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