自分に「三人称」で語りかける? 効果的な感情コントロール法
Culture 2017.08.31
XiXinXing-iStock
ミシガン州立大学などの実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった。
三人称で自分と距離を作る
怒りやイライラなど、ネガティブな感情はできればすぐに手放したいものだが、なかなか難しい。しかしこのほど発表された実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった。実験はミシガン州立大学とミシガン大学の心理学者が行なったもので、科学系の米ニュースサイト「サイエンス・デイリー」が伝えた。
方法はとても簡単で、通常、人は頭の中で一人称を使って話しているが、これをただ三人称に変えるだけだ。
サイエンス・デイリーが紹介した方法はこうだ。
例えば、ジョンという男性がいたとする。最近恋人に振られてしまい、気持ちが動揺している。ここでジョンが自分の感情に向き合い、「俺は何で動揺しているんだ?」と一人称で自問するより、「ジョンは何で動揺しているんだ?」と三人称を使って自分に語りかける、という具合だ。
ミシガン州立大学で心理学を教えるジェイソン・モーザー准教授によると、心の中の独り言を前述のように三人称にすることで、自分自身のことでありつつ他者を見るような距離感を作ることができるのだという。自分の体験から心理的な距離感を作ることで、感情がコントロールしやすくなるのだ。
ミシガン州立大学の実験
モーザー准教授のチームは、2種類の実験を行なった。まずは、実験の参加者に、中立的な画像と、例えば男性が銃を自分の頭に押し付けているなど、見る者が動揺してしまうような画像をそれぞれ見せた。参加者には画像を見た時の感情を、自分の心の中のおしゃべりを一人称と三人称にしてそれぞれ話してもらい、その際にどのような脳波の動きがあるかを観察した。
Credit: Michigan State University
動揺してしまう画像では、三人称で話した場合に、感情に関する脳の領域の動きが急速(1秒以内)に低下した。研究チームはまた、自分に対するおしゃべりを三人称にすることがどれだけ努力を要するかを調べるために、努力に関する脳の活動についても調査した。
その結果、三人称で話す労力は一人称で話すものと比べ違いがなかった。モーザー准教授は、感情をコントロールする他の方法だと非常に努力が要されると指摘。そのため今回の実験のように心の中での独り言を三人称にすることが、感情の乱れをその場で沈める有効な手段になるとしている。
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別の大学の実験でも同様の結果が
一方で、ミシガン大学のイーサン・クロス教授が中心となって行なった実験では、参加者に一人称と三人称をそれぞれ使って自身の過去の辛い体験を思い出してもらい、磁気共鳴機能画像法(fMRI)で脳の活動を測定した。
モーザー准教授の実験と同様に、心の中の独り言を三人称にして思い出している間は、感情的に辛い経験を思い出す際に関係するとされている脳の領域の活動が、一人称の時と比べ少なく、感情がコントロールされていることが示唆されたという。さらに、モーザー准教授の実験と同様に、三人称での独り言で必要となる労力は、一人称で話す時と変わらなかったという。
クロス教授は、「さらなる研究が必要」としながらも、もし三人称で話すことで本当に自己統制ができるのなら、自己統制の基本的な働きや、日常で自分の感情をコントロールするための助けになる、としている。
モーザー准教授とクロス教授は引き続き協力して、感情コントロールと三人称での独り言の関係をさらに研究していく予定だ。
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ニューズウィーク日本版より転載
松丸さとみ