「家族」と「女性」のあり方を問う、長島有里枝の個展。

特集

「家族」をめぐる、甘くほろ苦い営みを綴った写真の花園。
『長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。』

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『Self-Portrait(Brother #34)』1993年。東京都写真美術館蔵。長島家を裸族にしたのは、水泳教師であるおおらかな母の仕業。

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『わたしたちの部屋(朝)』『SWISS』より。2007年。東京都写真美術館蔵。スイスのレジデンシープログラムに参加した穏やかな日々。壁には祖母が庭で撮って大切に箱にしまっていた写真が。

 父、母、弟と自分がごく自然に裸でふざけあう家族写真で注目されたデビュー以来、常に「家族」をテーマに創作に取り組んできた写真家・長島有里枝。アクション俳優の元夫を、慈愛に満ちた視線で追
う『not six』(ろくでなしの意)。日常に潜む空虚や恐怖をキツい目線で綴る『Candy Horror』。赤の他人同士の家族写真『Family Portrait』。シングルマザーとして生活と仕事と創作の狭間でもがいていた頃の作品には、人間関係の微妙な距離感や違和感が炙り出されていた。

 やがて5歳の息子を連れ、スイスの芸術村で滞在制作した彼女は、祖母が遺した花のスナップを壁に留め、宿舎の庭をそぞろ歩くうち、花の姿に向かうようになる。さらに英国王立植物園で撮影された連作では、整然とした花壇にすまし顔で鎮座する植物たちに、「社会」や「家族」の一員にも似た立ち姿や表情をとらえ、自身を取り巻く生活の実感を静かに見つめる視線が胸を打った。「どれほど壮大な夢想をしていようとも、人が思考する時に目に映るのは自分の寝室のように慣れ親しんだ、些細な風景である」と当時のステイトメントに記されている。近年は実母やパートナーの母と共作で、家族の衣類や
日用品を縫い合わせたテントと写真が呼応する作品を発表している。家族との関わりとともにある、一女性の日々とライフコースを掬い上げた。彼女の写真の一葉一葉は、甘美さ、ほろ苦さ、挑発、共感、その時々の感情すべてがありのままに残され、どうにも片付かない人生の記憶を綴れ織りにした親密な花壇を形づくっている。1人の写真家のミッドキャリア・レトロスペクティブ展としては、独特の濃厚な構成となるだろう。

『長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。』
会期:9/30~11/26
東京都写真美術館(東京・恵比寿)
営)10時〜18時(木、金〜20時
休)月(10/9は開館)、10/10
一般¥800


●問い合わせ先
tel:03-3280-0099
http://topmuseum.jp

*「フィガロジャポン」2017年11月号より抜粋

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réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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