映画監督・齊藤 工について、聞かせてください。 岡田将孝(Chim↑Pom)「あらゆる表現に対して偏見なくちゃんと見ることができる人」

Culture 2018.02.25

映画を愛する俳優・斎藤 工が、映画監督・齊藤 工として初長編作に挑戦、2018年2月3日よりシネマート新宿にて公開され、現在、劇場数を拡大して全国にて順次公開されている。この最新作『blank13』は国内外の映画祭に招聘され、6つの賞に輝いた。
齊藤 工とともに映画を創ったキャスト&スタッフに聞いた「映画監督・齊藤工ってどんな人ですか?」 現在書店に並んでいる最新号2018年4月号でのコメントに加えて、こちらではほぼ全コメント、紹介します!

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—どういうきっかけで、齊藤監督の映画に出演なさったのでしょう?

Chim↑Pomの展覧会などで何度か工くんとは会っていました。で、特にきっかけもなく、ある日、突然、メンバーのエリイを介して話があったと記憶しております。

—齊藤監督から、どのような準備を求められましたか?

まったく、ほんとに何もなかったですね(笑)

—齊藤監督に指示された人物像は? 具体的な指示はありましたでしょうか?

台本を読むかぎり、カスみたいなヤツでしたが、人物像として何か指示があったわけではありませんでした。劇中でも僕が被っている、当時プライベートで愛用していた帽子は持ってきて、とだけは言われてました。「お前はカスだからそのままで大丈夫」という指示として受け取りました(笑)

—齊藤監督は、俳優から出てくるものを待つタイプですか? それとも細かく撮影現場で指示するタイプの監督でしょうか?

僕は俳優としては完全素人なのでほかと比較できません。が、今回の作品は前者だと思います。完全素人の自分のようなカスみたいなヤツを映画にぶち込むということは、指示を出してもそれにこたえられる技術があるわけないし、ぶち込んだこと自体が工くんの戦略と考えられるので。

—齊藤監督は、それぞれの俳優の方々への接し方はまったく同じでしょうか? それとも、あえて違う接し方をする監督でしょうか?

ちゃんと先輩は先輩として、同年代にはフランクに、っていう感じで、人として至極自然な態度だったと思います。

—撮影現場にいて、役者への演技指導以外に、特に「こういう部分にこだわるのだなあ」と感心なさったポイントがあれば教えてください。

本番まで気楽にしていた僕としては、本番始まってから、「これはガチでやばいヤツ」と、その時感じましたが、監督として「全然やばくありませんよ」という感じで、常に淡々と平常心で現場の空気を作っていたのが印象的でした。

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—今回の岡田さん出演の場面は、アドリブによるアドリブの応酬とうかがっております。まさに即興のおもしろさが観客をシリアスから笑いへと引っ張っていきます。そのアドリブ演技に対しての齊藤監督の反応は?

ありがたいことに「すごく良かったよ」と、ピロートークみたいな優しいお言葉をいただきました。

—齊藤監督自身がChim↑Pomの活動のファンと聞いております。Chim↑Pomのクリエイションが残るビルを取り壊す前に、そこで水曜日のカンパネラのコムアイさんを撮影したり、クリエイターとクリエイターのブリッジ的な役割も進んで果たしているのが齊藤工である、という印象がありますが、そういった活動に関して岡田さんはどのように感じていますか? 

意外と難しいことなんですが、あらゆる表現に対して偏見なくちゃんと見ることができる人なんだな、と思います。そうした態度が、俳優としてだけじゃなく、映画監督としてのレイヤーがあることの厚みから来てることのようにも感じられるし、ひいては映画制作にも生かされているんじゃないかと思います。

—個人的にどのシーンが、最も好きだったでしょう?

まだ見てないので(2017年12月のコメント)自分が目撃したシーンしか語れませんが、葬式の場面は、実際ほんとに笑いが堪えきれないくらいおもしろかったです。カスばっかり集まって、ほんといい葬式だなと思いましたし、カスを丁寧にかつ大胆に最高な形で紡いだ工くんもサイコーだなと思いました。

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MASATAKA OKADA(Chim↑Pom)
2005年に東京で結成したアーティスト集団、Chim↑Pomのメンバー。社会へのメッセージとゲリラ的な作品発表を行う。2015年にアーティストランスペース「Garter」を高円寺にオープンし、キュレーションも行う。作品集・著作に『Chim↑Pomチンポム作品集』(河出書房新社刊)、『都市は人なり「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』(LIXIL出版刊)。Chim↑Pomの作品を展示していた廃墟ビルが壊される際には、そこで齊藤監督が写真撮影を行ったりと以前から親交が深い。



映画『blank13』は家族の物語である。妻と息子ふたりを残し忽然と消えてしまったひとりの男=父親と、残された家族が、13年後、父が余命3ケ月の状態で息子(次男)と再会し、逝き、葬儀へといたる。その過程を、登場人物たちの心の経緯をなぞるようなかたちで表現された映画である。実話を軸にしている。

『blank13』
出演/高橋一生、松岡茉優、斎藤 工、神野三鈴、佐藤二朗、リリー・フランキーほか
監督/齊藤 工
2017年、日本映画/70分 
配給/クロックワークス
シネマート新宿にて公開中、2月24日より全国順次公開
Ⓒ2017「blank13」製作委員会  photos : LESLIE KEE
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