カンヌで絶賛された『ジュピターズ・ムーン』。

Culture 2018.03.16

モラルなき世界を見おろす、ストレンジャーのまなざし。

『ジュピターズ・ムーン』

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バルカンルートを経て難民が大挙して押し寄せ、ハンガリーがセルビア国境を封鎖したことを背景に、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』の俊才が挑んだ現在進行系の異色SF。主人公のシリアの少年は国境沿いの川で腹を撃たれて死線をさまよい、浮遊術を身に付ける。拒絶の視線を浴びる難民=よそ者が、空中遊泳する異星人めいて見えるのが作品の肝だ。難民キャンプに左遷された医師がこれを現代の奇跡に仕立て荒稼ぎする背徳ぶりに凄みがある。他方、少年はみんなが無欲に空を仰ぐ天使的な風情を纏い始める。

『ジュピターズ・ムーン』
監督/コーネル・ムンドルッツォ
2017年、ハンガリー・ドイツ映画 128分
配給/クロックワークス
新宿バルト9ほか全国にて公開中
http://jupitersmoon-movie.com

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*「フィガロジャポン」2018年3月号より抜粋

réalisation : TAKASHI GOTO

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