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大植真太郎・森山未來・平原慎太郎のソウル旅
「談ス」meets『ヌード』展。

いま最も勢いにのるダンサー・振付家、大植真太郎・森山未來・平原慎太郎が立ち上げたパフォーマンス「談ス」。そのシリーズ第3弾『凹し凸る』(読み方自由)の5月からの全国ツアーに先駆けて、横浜美術館で開催される『ヌード NUDE -英国テート・コレクションより』展で一夜限りの『談ス/NUDE』を上演することが決定。そのインスピレーションを得るためソウルへ視察に赴いた彼らの、凸凹道中記をお届けします。

特集 / March 20, 2018

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2014年ヨーロッパで出会い、「談ス」を立ち上げた大植真太郎(左)、平原慎太郎(中)、森山未來(右)。

これはダンス? 演劇? コント? 放課後の男子? そのいずれにも属さない、まったく新しいオリジナルパフォーマンスとして上演を重ねてきた「談ス」シリーズ。きたる5月、待望のシリーズ第3作となる『凹し凸る』の全国ツアーがスタートする。

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ソウル会場エントランス。出展作家の名がグラフィックに羅列されていた。

そのプレイベントとして、4月5日(木)、一夜限りの新作『談ス/NUDE』が横浜美術館グランドギャラリーで上演される。イギリスのテートにより西洋美術史上のヌード表現を主軸に企画された、『ヌード NUDE -英国テート・コレクションより』展の特別企画だ。

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ソマ美術館は、ソウルオリンピック公園の中に位置する近現代美術の展覧会を行う美術館。

その『談ス/NUDE』構想段階の2017年末、創作のインスピレーションを求めて、ちょうど韓国・ソウルに巡回中だった『ヌード』展視察ツアーが敢行された。超多忙を究める彼らのスケジュールの隙間を縫って、一泊未満(平原は日帰り!)の弾丸旅行。のっけから森山まさかの寝過ごしによるフライト変更というハプニングを乗り越え、会場であるソマ美術館に到着。『ヌード』展エントランスに大植、森山、平原が集合し、横浜美術館から同行した長谷川学芸員の解説を聞きながら、全8章のテーマ別に展示を回りはじめた。

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18〜19世紀の歴史画に描かれた「ヌード」の位置づけについて、思考を巡らせる。

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南アフリカ出身の画家マルレーネ・デュマスが肌の色をテーマに描いた挑発的なヌードを背に。

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「モダン・ヌード」の近代彫刻のポーズを、ダンサー特有の視点でさまざまな角度から観察。

会場へ入るやいなや瞬時に目前の作品に集中する3人。そこはさすがの身体表現のプロフェッショナルだ。
第一章「物語とヌード」では、神話や聖書、文学から題材をとった歴史画に描かれたヌードを鑑賞。まず彼らが注目したのは、ジョン・エヴァレット・ミレイの『ナイト・エラント(遍歴の騎士)』だ。
「微妙にかわされた視線にも、2人の関係性が秘められているんでしょうか?」(大植)
ローレンス・アルマ=タデマの『お気に入りの習慣』で描かれた古代ローマの公共浴場にも引き寄せられる。
「ここまで裸体に裸体を重ねていく構図は見たことがない。古典美術ならではですね」(平原) 
「パブリックな場所でのヌードは当たり前で、恥ずかしさや罪悪感も共有したのかな。ローマ人みんな、大植くんやね(笑)」(森山)

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「レアリスムとシュルレアリスム」の章で森山イチ押しのマン・レイを背に。ひと際クール。

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平原レコメンドはグウェン・ジョン『裸の少女』。第2章「親密な眼差し」に展示される。

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ルイーズ・ブルジョワが深紅の“染み”で表現した女性性と鮮烈な生命感に魅了される。

ダンス界で“ヌード”といえば、ヴァーツラフ・ニジンスキーか大植真太郎である。多くのパフォーマンスで清く正しく盛大に脱いできたことでも知られる大植。
「小学生の頃は、校庭の真ん中で1人で裸になったりしてました。気持ちが解放されて楽しくなると脱ぎたくなりません? なりませんか、そうですか。あ、でも欧米のバレエやコンテンポラリーダンスでは、ヌードで踊ることは目新しいことではないんですよ」(大植)
「えー、今回のプロジェクトは美術館なんで(笑)。そこにはレイヤーがあるよね。絵画のなかの非現実のヌードと、パフォーマンスの現実の身体がどう重なるのか、重ならないのか?」(森山)

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ロダンが数々の女性と浮き名を流した、自身の経験あっての表現『接吻』。

本展の見どころの1つは「エロティック・ヌード」の章。オーギュスト・ロダンの大理石彫刻『接吻』の等身大以上の身体が狂おしく絡みあう肉感的な表現に圧倒される。
続くパブロ・ピカソ、ルイーズ・ブルジョワ、デイヴィッド・ホックニーらの版画の展示では、真剣な面持ちでディテールに集中。 
「ピカソが娼婦たちを描いた素描は、まるで春画。絵を観ること自体が覗き見の行為になっている。手塚治虫さんの描いたエロティシズムの表現を思い出します」(森山)
さらに強烈な印象を残したのは、女性の作家たちによるコンセプチュアルなヌード表現だ。最終章「儚き身体」では、男性社会のステレオタイプな女性像に扮してきたシンディ・シャーマンが、撮影を終えたばかりのヌードモデルを演じるセルフポートレートと、リネケ・ダイクストラが出産直後の女性のヌードを撮影した大作が対比的に展示される。
「生まれもった“ヌード”の強さ。展示の最後を産後の女性で締めくくる、“素”でパーソナルなアプローチが、パブリックになる瞬間」(大植)

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天下のテート企画ならではの、大胆不敵なトリミングで名作がアレンジされた会場にて。

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ロダンの『接吻』画像前で、キスシーンを自撮りできるフォトブース。2人には無理でした。

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大量の裸体の渦に翻弄された会場を後にして、シメのトークのためこの後チゲ鍋食堂に向かう。

鑑賞を終え、近くのチゲ鍋屋さんへ移動した一行。一気に押し寄せた「ヌード」をめぐる考察とともに、彼ら自身の『談ス/NUDE』の方向性について熱く意見がかわされた。
「作品を見比べるほど身体にズシンときた。裸体を隠すのか、堂々とそこに存在するのか? 目線がこちらと合うのか、合わないのか? 『談ス』という舞台にヌードをどう巻き込んでいくかを構想しながら観ました」(大植)
「表現の規制をかいくぐったり、その規制を逆手にとったり。美しいものもあれば過剰に醜いものもある。現代へ向かうほどパーソナルな思想を求めてくる作品が多くなる。西洋の文脈でヌードの意味を考えさせられました。じゃあ日本人の身体性をどう捉えて際立たせるのか? それが作品の方向性を決めると思う」(森山)
「テーマやコンセプトを知って副音声を聞いているかのように、後から重みが伝わってきた。作家の意図や立場、思いをパーソナルな視点にも生かして本番に臨みたいですね。こうして僕らが言葉を寄り添わせていくことで熟成していく作品かもしれない。作品の強靭な芯、骨格を模索していきたい」(平原)
むきだしの無防備な人間の肉体。その脆さと強さを気づかせてくれるヌードの美術史は、きっとダンスの系譜とも重なるはずだ。『談ス』は今後、身体という“殻”とその“核”をどのように捉えていくのだろう? 三人三様の思考のパズリングの妙に注目したい。

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ソマ美術館を帰り際に眺めながら。

ヌード NUDE -英国テート・コレクションより』展
会期:3/24~6/24
横浜美術館(神奈川・みなとみらい)
10時~18時(5/11、6/8は~20時30分)
※入館は閉館の30分前まで
一般¥1,600ほか
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://artexhibition.jp/nude2018

photos:TAKAKO NOEL, interview et texte:CHIE SUMIYOSHI

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