フィガロが選ぶ、今月の5冊 この怖さは癖になる、芥川賞作家による短編集。

Culture 2018.03.21

『ドレス』

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藤野可織著 河出書房新社刊 ¥1,620

「テキサス、オクラホマ」で、人間の友達に飽き飽きした女子大生の菫が心を寄せたのはドローンだった。人と機械、わかりあう必要のない関係の奇妙な風通しのよさは何だろう。「愛犬」では娘が母と共有していたはずの記憶が食い違い、表題作では恋人が自分には理解できない金属製のアクセサリーに傾倒していく。この作家にとって「わかりあえなさ」は悲しむべきことではなく、自明の事実なのだ。ゾクリとする奇想を用いてその溝に潜むものを描き出し、予測不可能な結末へと誘う。「爪と目」で芥川賞を受賞した作家の3年ぶりの短編集は、怖いのに癖になる。

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*「フィガロジャポン」2018年3月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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