立田敦子のカンヌ映画祭レポート2018 #05 カンヌも"#MeToo"問題にフォーカス!

Culture 2018.05.16

 昨年10月に大物プロデューサー、ハーヴィー・ワインスタインが複数の女性からセクシャルハラスメントで訴えられた事件をきっかけに広がりをみせる“MeToo“ムーブメント。これまで泣き寝入りせざるをえなかった女性たちがともに声を上げることによって、セクハラ問題だけでなく、賃金格差や性差別などさまざまな不当な扱いを是正していこうという運動です。
 アカデミー賞など大きな映画イベントの度に話題になっていただけあり、世界で最もグラマラスな映画祭といわれるカンヌがこの問題にどう向き合うのか、開催前から注目されていました。
 初日には、期間中に設けられたホットラインでセクシャルハラスメントなどの相談を受けるというアナウンス。12日には「ウーマンズマーチ」と称して、審査員長のケイト・ブランシェットを中心にパティ・ジェンキンスやアニエス・ヴァルダ監督など、82人の女性映画関係者がメイン会場のリュミエールシアター前のレッドカーペットに集合しました。82人という数は、長いカンヌの歴史の中でコンペに選ばれ、レッドカーペットを歩いた女性監督の人数を現しているそう。非常に少ないですよね。現在、映画監督における女性の割合は2〜4%と言われているので、少ないのは当たり前といっては当たり前なのですが、近い将来50%になる日がやってくるかもしれません。

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フォトコールに登場した審査員たち。左から、クリステン・スチュワート、エイヴァ・デュヴァーネイ、ケイト・ブランシェット、レア・セドゥ、カジャ・ニン。

Cate-Blanchett-wearing-Orchid-Earrings-at-the-Cannes-Festival,-May-8th,-2018-(1).jpg©Chopard

レッドカーペットに登場したケイト・ブランシェット。ショパールのオーキッドイヤリングをアクセントに、シックなブラックドレスを纏って。

 ちなみに今年は、アリーチェ・ロルバケル(イタリア)、エヴァ・ユッソン(フランス)、ナディーン・ラバキー(レバノン)の3人の女性監督がコンペに選出されています。

 13日には、映画祭プレジデントのピエール・レスキュー、総合ディレクターのティエリー・フレモー、オフィシャル・パートナーであるケリングの会長フランソワ=アンリ・ピノーがホストを務める「ウーマン・イン・モーション」の公式ディナーが開催されました。

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13日の夜に開催されたケリングの「ウーマン・イン・モーション」公式ディナーの様子。

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©KERING

パーティーに来場したダイアン・クルーガー。

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昨年「ウーマン・イン・モーション」を受賞したイザベル・ユペール。

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©KERING

ベニチオ・デル・トロとクロエ・セヴィニーの姿も

 これは、映画会における女性の活躍や地位向上を支援する目的で、ケリングと映画祭が共同開催しているイベントです。映画祭の期間中にはトークイベントが開催されますが、今年はキャリー・マリガンやサルマ・ハエック、エミリア・クラーク、ナディーン・ラバキーなど、活躍中の女性映画人が登壇して自らの体験を語りました。
 またディナー&レセプションで授与される「ウーマン・イン・モーション」アワードでは、今年はパティ・ジェンキンスとカルラ・シモンのふたりが受賞しました。

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「ウーマン・イン・モーション」授賞式にて。左から、フランソワ=アンリ・ピノー、パティ・ジェンキンス、カルラ・シモン、ピエール・レスキュー、ティエリー・フレモー。

 パティ・ジェンキンスは、『ワンダーウーマン』(2017年)の世界的大ヒットで知られています。ヒーロー映画において初めて女性が主役となった映画を監督し、さらにアクション映画として大成功を収めた最初の女性監督となりました。映画史に名を刻んだパティは、まさに受賞にふさわしいですね!
 『ワンダーウーマン』に注目が集まっているパティですが、脚本も手がけた監督デビュー作『モンスター』(04年)でも注目を集めた気鋭の人。実在の連続殺人犯の女性に焦点を当てたこの作品では、主演のシャーリーズ・セロンが10キロ以上も体重を増やし人相まで変えて挑み、アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。女性を描く腕前はお墨付きのパティ、今後の活躍にも期待がもてます。

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「ウーマン・イン・モーション」を受賞したパティ・ジェンキンス。

 もうひとりのカルラ・シモンは、最近注目されている“バルセロナ派”といわれているスペインの気鋭監督。2017年のベルリン国際映画祭では、『夏、1993』(17年)で「ジェネレーション部門」第1回監督賞と国際審査員賞を受賞しています。今後の活躍にも注目です!

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「ウーマン・イン・モーション」を受賞したカルラ・シモン。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

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