野菜や果物を洗えば、農薬は落とせるの?

Culture 2018.06.05

フランスのNGO「Gérénations Futures(未来の世代)」が今年2月に発表した調査結果によると、調査対象となった有機栽培ではない果物の72%、有機栽培ではない野菜の41%から、基準値を超える残留農薬が検出された。野菜や果物の表面に付着している農薬を少しでも落とす方法はあるのだろうか? フランスの事情を紹介する。

180604-pesticides-01.jpg

野菜を洗うには水ですすげばいいが、農薬を取り除くには充分ではない。Photo:iStock

パリ国際農業見本市の開会を数日後に控えた今年2月、NGO「Gérénations Futures」 は、フランスで消費される果物や野菜のうち有機栽培でないものを対象に、残留農薬についての調査結果を初めて公表した。その数字を見るとぞっとする。果物の72%、野菜の42%で基準値を超える残留農薬が検出されたのだ。これらの数値は、フランスにおいて販売される植物性食品の定期検査を行っているDGCCRF(消費者問題・詐欺防止総局)の2012年から2016年のデータを基に、同組織が算出したものだ。

果物では、ブドウ(生産量のうち89%が該当)、マンダリンオレンジ、サクランボなどが、他の果物に比べて特に農薬の残留率が高かった。野菜では、芽キャベツが、最も多くの化学物質を含むという不名誉なタイトルを獲得し、残留農薬も検査対象の89%で検出された。「フランスは、残留農薬基準を超えている果物や野菜の割合が、ヨーロッパの中で最も高いのです」と、 政治学博士で厚生医療を専門とするコリーヌ・サラリスは言う。保存状態をよくするために、収穫後に農薬が散布されることもある。そのため農薬は果肉の内部にも浸透する。

毎日食べる果物や野菜の皮に残っている微量の有害物質をできるだけ取り除くために、家庭でできることはあるのだろうか? 有機野菜はその点で安全なのだろうか? サラリス、「Gérénations Futures」の代表を務めるフランソワ・ヴェイユレット、 ユニ・ラ・サール理工科学院(ボーヴェ)のフィリップ・プイヤール教授の3人が、疑問に答える。

効果的な洗い方はあるの?

食べる前に果物や野菜を洗うことで、もちろん汚れを落とすことはできる。だが、化学物質を完全に除去するには不十分だ。「農薬は水では洗い落とせません。もし洗えるとすると、農家は撒水や雨のたびに農薬を撒かなければなりませんから」と語るのはヴェイユレット。昨年10月に雑誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry(農業と食品化学ジャーナル)」に発表された研究によると、最も効果的な解決法は、コップ2杯の水に対し小さじ2杯の重曹を溶かした溶液に、果物や野菜を浸けることだという。 万全を期すには、浸水時間は15分。ということは、果物を食べようと思った時は、前もって準備しておく必要がある。しかし、「分析された農薬は2種類だけ」と、サラリスは指摘する。「農家では農薬を混合して使いますが、その“カクテル効果”については、今回は考慮されていないのです」。

“おばあちゃんの知恵袋”の代表選手、ホワイトビネガーはどうだろう? 「給食業界でも利用されていますが、ホワイトビネガーは消臭・細菌除去に効果があります」とプイヤールは言う。「食品を5分間酢に浸した後、きれいな水で洗い流す」というのがその方法だ。しかし、残留農薬に対する科学的研究はこれまでのところない。あるいは、まず果物や野菜の皮を丹念に剥いて、それから野菜を洗うという方法もあるが、もちろん皮に含まれている栄養素は失われることになる。

オーガニックはどうなの?

有機栽培の農産物からは農薬は検出されないのだろうか? まったく検出されないわけではないが、有機栽培ではない方法で育てられた作物に比べると検出量はずっと少ない。ヴェイユレットはこう話す。「2016年については、有機栽培の果物・野菜の5%から農薬が検出されました。ですが、検査対象の中で、基準値以上の残留農薬が検出された作物はひとつもありませんでした」。

これは、ほっとするニュースだ。一方、テレビ局「フランス3」は、昨年10月、オーガニック食品店で購入したニンジンから、有機栽培で使用が禁止されている農薬が検出されたと報じている。サラリスは「有機農作物の栽培方法には厳密な基準がありますが、規格が遵守されない例もあるかもしれません」としつつ、次のような事情も明かす。「土壌を通じて、あるいは風向きが原因で、近隣の生産者の農薬の影響を受けることもあります」。

また、害虫から守るために、一部の有機栽培農家は化学農薬の代わりに天然物系農薬を使用している。天然物系農薬とはいえ、銅など、やはり有毒なものも含まれている。INRA(フランス国立農学研究所)は今年1月に発表された報告書の中で、銅の使用量を大幅に減らすための方策を農家へ向けて提案したばかりだ。

専門家の意見をまとめると、農薬を頬張りたくなければ、ラズベリーのように洗わずに食べる果物の場合は特に、オーガニックを購入するのが、現在のところ最も有効な方法のようだ。

texte : Alice Tixier(madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

シティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
編集部員のWish List!
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories