モテる男ホン・サンスの愛についての考察。その1

Culture 2018.06.15

“恋愛は、自分自身の限界ラインを超える瞬間を見せてくれる”

世界3大映画祭に毎度のごとく招かれ、呼吸するかのように精力的に映画を撮り続ける韓国の映画監督ホン・サンス。どうにも、モテる男だ。男と女の関係を描き、人生を眺め、映し撮る彼の言葉から読みとる、愛とは……何?

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「映画で恋愛を描くのは、僕自身がそもそも女性や恋愛に興味があるから」と率直に語るホン・サンス。『3人のアンヌ』で来日した折には、男女の恋愛を描き続けることについて「ここが限界と思っている自分のラインを超える瞬間を見せてくれる。さらに自分に何ができるか、何ができないのかをわからせてくれる。僕の場合は、何ができないかを知ることのほうが多いけれど(笑)。しかし、それを知るのと、知らないのとでは大違いなんだ」と。その限界ラインを行きつ戻りつする姿をコミカルに描いた『正しい日 間違えた日』や、恋愛を通じて自らを見つめ直し、限界を超えて歩み出すヒロインを描いた『夜の浜辺でひとり』を経て、『それから』では恋愛からの学びによる新たな境地を描いている。「学ぶのは自由になるため。自分の中に抑圧されているものがあるということを学び、さらにその抑圧から少しずつ解放される道を学んでゆく。自由が広がれば広がるだけ、目の前の人々や人生を寛容に、クリアに受け止めることができる」

『それから』

出版社の社長のもとへ新入社員(キム・ミニ)がやって来る。昼食後、会社に乗り込んできた社長の妻がふたりの関係を疑い、彼女をビンタ! お詫びとして、この社長が彼女を夕飯に誘うと、今度は昔の愛人が舞い戻って……!? タイトルは夏目漱石小説から。

●監督・脚本/ホン・サンス
●出演/クォン・ヘヒョ、キム・ミニ、キム・セビョク、チョ・ユニ
●2017年、韓国映画
●91分
●配給/クレストインターナショナル
●ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開中
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Sang-soo HONG

1961年、ソウル生まれ。大学で映画を学んだ後、アメリカ留学で美術を専攻しながら実験映画を制作。96年、『豚が井戸に落ちた日』で長編デビュー。ほかに『女は男の未来だ』(2004年)、『アバンチュールはパリで』(08年)、『自由が丘で』(14年)など。カンヌをはじめ、世界3大映画祭の常連として高い人気を誇る。

interview et texte : REIKO KUBO

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