フィガロが選ぶ、今月の5冊 ヒリヒリする疾走感が全編を貫く、連作短編集。

Culture 2018.06.18

喪失の痛みに貫かれた、鮮烈なデビュー作。

『1ミリの後悔もない、はずがない』

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一木けい著 新潮社刊 ¥1,512

失った人間に対して1ミリの後悔もないということがありうるだろうか。この連作短編集がその答えだ。由井が桐原に惹かれたのは14歳の時だった。親の事情や学校の規則に抗えなかったあの頃、生きている実感を教えてくれたのは彼だった。初恋を描いた「西国疾走少女」を皮切りにヒリヒリする疾走感が全編を貫いていて、切なくも小気味よい。喪失という一見ネガティブな感情に開き直って、いまを形作った光として肯定してみせる。第15回女による女のためのR-18文学賞の読者賞を受賞した、鮮烈なデビュー作。

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*「フィガロジャポン」2018年6月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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