フィガロが選ぶ、今月の5冊 韓国最前線の女性作家が、強烈なイメージで描く問題作。

Culture 2018.06.19

現代韓国文学の最先端、暴力と寓意に満ちた物語。

『野蛮なアリスさん』

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ファン・ジョンウン著 斎藤真理子訳 河出書房新社刊 ¥1,728

女装ホームレスのアリシアは“君”に向かって語りかける。抜け出すことのできない貧困と暴力について。母親は彼と弟を殴った。彼女もそうされてきたから。年老いた父親は見て見ぬふりをした。劣悪な環境で生き抜くためにアリシアが暴力を振るう側に回ったその日、弟が死ぬ。連鎖する負のサイクル、銀河の流れる音、食用の犬たち、残酷な夢の話。抜け目ない者だけが勝ち残る世界で踏みにじられ、叫んでいるのは誰なのか。これは他人事ではなく、いずれ“君”の物語になるのだと予言する。現代韓国文学を牽引する作家が描く暴力と寓意に満ちた黙示録。

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*「フィガロジャポン」2018年6月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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