フィガロが選ぶ、今月の5冊 料理家の高山なおみが綴る、新しい食のエッセイ。
Culture 2018.07.10
記憶に残る味、人生の味を描く、料理家・高山なおみの新境地。
『たべもの九十九』
高山なおみ著 平凡社刊 ¥1,512
“あ”は子どもの頃、列車の中で食べたアイスクリーム。“い”は26歳の時、初めて行った外国ペルーで食べたイカとホタテのシェビーチェ。五十音順に記憶に残る味を綴っていく。 見栄えは悪くても、あえて冷ましたお弁当。海苔をあぶる丁寧な手つき。レシピでは語れないおいしさを語ろうとすれば、図らずもそれはひとりの女性の人生を俯瞰した一冊に。家族の肖像、心もとない青春の日々、2度の結婚、吉祥寺から神戸に移住して2年。ひとりになって食べるぶっかけそうめんがやけにおいしそうなのは、心のままに生きてきた自由の味がするからだろう。
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*「フィガロジャポン」2018年7月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI