デジャヴュはどうして起こるの?

Culture 2018.07.13

デジャヴュ(既視感)や既体験感と呼ばれる感覚を、誰もが経験したことがあるはず。脳内では一体、何が起こっているのだろう? ふたりの専門家が謎を解き明かす。

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「デジャヴュ」の感覚は無意識と関連しているが、脳のある部分にも関連がある。photo:Getty Images

友達とカフェのテラスでのんびりアペリティフ……そんな時不意に、前にもこの光景を体験した、というあの不思議な気持ちになることがある。脳内で何かが起きているのは間違いない。この感覚は「視覚、時間、記憶」の3領域とそれらの機能から説明できる――そう解説するのは、神経科医・精神分析医で、人的リスク評価を専門に行う会社 「Neurofinde」 を運営するアネク・フェヴだ。「デジャヴュを感じている瞬間、私たちの時間感覚は現実とずれています」。こうした印象は、確かに時間の感覚を不安定にさせるものではあるが、前世や予知能力などとはまったく関係がない。そのメカニズムを詳しく検討してみよう。

懐かしさの感覚、自己防衛。

この現象を説明する理論はいくつか存在する。なかでも最もよく参照されるのは、アメリカ人科学者ヴァーノン・ネップが提示したものだ。1983年に発表された論文「既視感の心理学」で、ネップは「このメカニズムを “現在の体験から生じる不確定な過去に対しての、不適切な懐かしさの感情”と定義している」と、フェヴは言う。

つまりこの感覚は、幼児期の記憶、周囲の環境、家族内伝達、遺伝的伝達など、さまざまなことに関連するらしい。「人は何かを見ている時、脳が作り出した心像を、現在見ている対象に対応するほかのあらゆる心像に結びつけます。そのなかには以前見たイメージや、伝達されたイメージも含まれています」とフェブは補足する。その結果、脳内で懐かしさの感情が作られるというわけだ。

デジャヴュは、必要とあらば自分を守る手段にもなる。危険を感じる場所にいる時や、見知らぬ人と一緒の時に、「デジャヴュを利用して、脳は周囲の状況に対し、ある種の親しみの感情を作り上げます。そうすることで、見慣れないものと折り合いをつけ、現実を回避することが可能になります」とフェブは解説する。人と離別した時や身近な人を亡くした時にも、この自己防衛策は発揮されるらしい。「何でもないひと言が、すでにこの光景を体験したことがあるという不思議な感覚の引き金になることもあります」と語るのは、精神分析医で、パリ精神分析組合(RPH)一般診療室長フェルナンド・ドゥ・アモランだ。

また、癲癇患者の中には「発作に続いて既視感を経験する人もいます」と、フェヴ医師は明かす。逆に、発作の前兆として、こうした感覚が起きることもあるという。

抑圧された欲望。

古代ギリシアの数学者・哲学者ピタゴラスは、既視感は前世と関連があると考えた。精神分析の祖であるジークムント・フロイトは、この現象は抑圧された欲望に関連すると主張した。前述の精神分析医ドゥ・アモランは、後者の理論を支持する。「不快な感覚の場合、私たちはある種の感覚を抑圧という形で意識下に押し込めてしまうことがあります」。そうした感覚は普段は意識されないが、リラックスしている時に表面に浮上することがある。「抑圧された欲望自体が現在の体験と何の関係がなくても、こうした想念が一瞬、意識によみがえってくることがあります」

デジャヴュを覚えることは異常なことではない。「ただ、それに不安感が伴うようであれば、診断を受けて治療する必要があります」と、ドゥ・アモランは勧める。いずれにせよ、これはコントロールを失うことに関わる話。この現象が何となく怖く感じられるのはそのせいかもしれない。

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texte : Raïnat Aliloiffa (madame.lefigaro.fr)

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