モテる男ホン・サンスの愛についての考察。その8

Culture 2018.07.13

“物事を知る唯一の方法は、それらをもう一度ゆっくり見ること”

世界3大映画祭に毎度のごとく招かれ、呼吸するかのように精力的に映画を撮り続ける韓国の映画監督ホン・サンス。どうにも、モテる男だ。男と女の関係を描き、人生を眺め、映し撮る彼の言葉から読みとる、愛とは……何?

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カンヌ国際映画祭の舞台裏を背景にした『クレアのカメラ』では、映画セールスに携わるキム・ミニ演じるヒロインと、イザベル・ユペール扮するクレアが出会う。女性上司から突然、解雇を言い渡され、混乱するヒロインに、クレアは「物事を知る唯一の方法は、それらをもう一度ゆっくり見ること。写真を撮られることで、被写体はそれまでとは違うものに変化する」と語りかけながらカメラを向ける。実際にクレアが写真を撮ると、不思議なことにねじれた状況がほぐれてゆく。嫉妬や誤解で負の感情が渦巻いたり、のぼせたり、恨んだり。そんな恋愛も、時間を置いてゆっくり、新たな視点で眺めることで、それまでとは違う風景が見えてくると、ホン・サンス映画は語りかけてくる。

『クレアのカメラ』

カンヌ国際映画祭の裏通り。突然、映画会社を解雇された女性(キム・ミニ)が、パリから来た音楽教師と出会い……。『3人のアンヌ』でも組んだイザベル・ユペールが監督との相性のよさを発揮しながら、鬼才の映画作りのエッセンスを伝える。

●監督・脚本/ホン・サンス
●出演/キム・ミニ、イザベル・ユペール、チャン・ミヒ、チョン・ジニョン、ユン・ヒソン
●2017年、韓国映画
●69分
●配給/クレストインターナショナル
●7月14日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
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Sang-soo HONG

1961年、ソウル生まれ。大学で映画を学んだ後、アメリカ留学で美術を専攻しながら実験映画を制作。96年、『豚が井戸に落ちた日』で長編デビュー。ほかに『女は男の未来だ』(2004年)、『アバンチュールはパリで』(08年)、『自由が丘で』(14年)など。カンヌをはじめ、世界3大映画祭の常連として高い人気を誇る。

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interview et texte : REIKO KUBO

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