いまを生きる子どもたちの命が輝くドキュメンタリー。

特集

深く神聖な領域から見据えた、いま、この瞬間を生きる輝き。

『子どもが教えてくれたこと』 

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病の枷を引き受けた5〜9歳の子どもが生の迸りとともに、醒めた自己認識をめいめい自分の言葉で語る驚き。5人の挿話を鋳型にはめない、自在な束ね方。

健康・病気にかかわらず、フランスの子どもが “己の人生の指針” を語りだす早さには、いつも小さな感動を覚える。

この映画に登場する5人の子どもたちは、それぞれが重い病気を抱えているということ以外は、ごく一般的なフランスの子どもたちであり、病気を抱えているから、こんな幼い年齢で人生を悟っていると考えるのは、すこし違う。生きるとは? 死とは? そんな哲学的な疑問を、早くから大人と対等に語り合い始めるフランスの教育学の指針こそ、人生に必要な “自分だけのオーダーメイドな哲学” を子どもたちに与えてくれるのだと思う。

監督はフランスの女性ジャーナリスト、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。自身のふたりの娘を、幼くして同じ難病で亡くすという経験を持つ。病を扱ったドキュメンタリー映画にありがちな涙を誘うだけの空気は、ここには微塵もない。死と背中合わせであることを大前提にしながらも、彼らの生を真っ向から見据えるジュリアンの視線は、子どもたちの笑顔だけでなく、当然あるべき苦しみや悲しみのシーンへも向けられる。その深く神聖な領域にふみこめるのは、愛娘を失ったひとりの母親という経験があってこそ。ただ彼女がもっとも大切にしたのはネガティヴな側面ではなく、いまを感じ、いまを語り、いま、この時を生きる、子どもらしくも闊達な、命の息吹そのものだ。だから、私は心から泣いた。なんの偽善も感じることなく、彼らに教えられた。言葉にならない生きることの素晴らしさと豊かさに心揺さぶられ、震えるほど真っすぐに感動した。

文/猫沢エミ ミュージシャン、文筆家

精力的な曲作り、ライブ活動から派生して、音楽監督を務めた水彩アニメーション映画『誘拐アンナ』が、7月21日より、ヒューマントラストシネマ渋谷にて1週間のレイトショー上映。
『子どもが教えてくれたこと』 
監督・脚本/アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
出演/アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアル
2016年、フランス映画 80分
配給/ドマ
シネスイッチ銀座ほか全国にて公開中
http://kodomo-oshiete.com

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*「フィガロジャポン」2018年8月号より抜粋

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