フィガロが選ぶ、今月の5冊 胎児の視点から語られる『ハムレット』とは?

Culture 2018.08.04

胎児を語り手にした、マキューアン版ハムレット。

『憂鬱な10か月』

1807xx-livre-02.jpg

イアン・マキューアン著 村松潔訳 新潮社刊 ¥1,944

希代のストーリーテラーが選んだ本作の語り手は胎児である。「というわけで、わたしはここにいる、逆さまになって、ある女のなかにいる」という冒頭の一節から、ただならぬ小説が幕を開ける。仄暗い胎内に幽閉されている「わたし」は母親とその愛人が共謀して、父親を毒殺しようとしていることを知る。「生まれるべきか、生まれざるべきか、それが疑問である」。そう、これはマキューアン版『ハムレット』。しかし、胎児の「わたし」は、身動きのとれない観察者になるしかない。シェイクスピア版は悲劇だが、本作はサスペンスフルな人間喜劇になっている。

【関連記事】
ジェーン・スーが父について語る、傑作エッセイ。
心に沁みる、ドラマ「富士ファミリー」の前日の物語。

*「フィガロジャポン」2018年8月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories