力強いプレーと愛すべき性格で、大坂なおみが世界を魅了。

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全米オープンの決勝戦からもうすぐ2週間が経つ。いまだ興奮冷めやらぬ、という方も多いのでは? 女王セリーナ・ウィリアムズを破った20歳のテニスプレーヤー、大坂なおみ。日本人として初めてグランドスラム獲得した彼女にフランスも大注目。『マダムフィガロ』誌の記事を紹介する。

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セリーナはいら立ち、ブーイングも巻き起こる中、大坂なおみは冷静に戦った。photo:(c) ZUMA Press/amanaimages

全米オープン決勝でセリーナ・ウィリアムズと主審との間に起きた諍いは、さまざまな論争を巻き起こした。だがその論争は、危うく物事の本質を覆い隠すところだった。それは大坂なおみの優勝という肝心なニュース。若干20歳の若きテニスプレーヤーはこれまでに何度も、タイトル獲得に手が届きそうなところまで迫っている実力者だ。

まずは家族史から始めよう。1997年、彼女は大阪で生まれた(作り話ではない)。母親は日本人の大坂環(たまき)さん、父親は留学生として来日したハイチ人のレオナルド・フランソワさん。

なおみが3歳の時、姉のまりを含む4人はアメリカに移住する。行き先はニューヨーク。移住の理由は残念だが単純な話だ。環さんの家族が、娘とレオナルドさんとの関係をよく思っていなかったのだ。彼女に関する特集記事を組んだ『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じているように、「日本の一部に残っている偏狭な純血主義が、彼女の家族の歴史を作った」というわけだ。

環さんの父親にとって、娘が外国人、それも黒人と付き合うなどあるまじきことで、父親は娘のことを「家族の恥さらし」と非難したという。諍いは10年以上続くことになる。

始まった快進撃。

大坂なおみが9歳の時、家族はフロリダに転居する。無類のテニス愛好家であるレオナルドさんにとって、ふたりの娘をテニスの道に進ませるにはうってつけの場所だった。なおみの中にセリーナ・ウィリアムズへの憧れが芽生えたのはこの頃だ。

少女はたちまち驚くべき資質を発揮する。2016年、18歳で全豪オープン、全仏オープン、全米オープンという3つのグランドスラムでそれぞれ三回戦まで食い込んでいる。なおみの現在のコーチであり、セリーナのヒッティング・パートナーを務めたこともあるサーシャ・バインも、彼女の才能を称賛している。バインは全米オープン開幕前にすでに、『ニューヨーク・タイムズ』紙にこう語っていた。「私は8年間ほぼ毎日、セリーナの球を打ち返してきましたが、なおみは彼女に匹敵する力を持っています。彼女はきっとやってくれると信じています」

コーチの予言は当たった。2018年、彼女はテニス人生において大きな転機を迎える。数カ月の間に、世界最高レベルの選手たちを次々と負かした。3月にはBNPパリバ・オープンで優勝。そして9月の全米オープンでは、自らの永遠のアイドルを相手に戦って、勝利を掴み取ったのだ。

歴史的な快挙。

こうして彼女は、世界ランキング20位内で最年少のテニスプレーヤーとなり、男女を通じて日本人のグランドスラム優勝者になった。

しかしその試合自体は、彼女がのびのびとプレーできるような展開だったとは言い難い。そのようなことがありながら、模範的なプレーヤーである彼女は、セリーナに対して何のわだかまりも持っていないようだ。「ネット際でも表彰台の上でも、彼女は私にとても優しくしてくれました。このようなことがあっても、彼女への憧れの気持ちが変わるとは思いません」と、若きチャンピオンは語っている。

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全米オープンの表彰式でトロフィーを掲げる大坂なおみ。photo:(c) ZUMA Press/amanaimages

セリーナへの憧れは昨日今日のものではない。彼女は小学校3年生の頃、授業でテニス界の女王についての発表をした際に、自分も彼女のようなテニス選手になりたいという夢を述べている。それだけに、それから約10年経って決勝戦を終えた時に、彼女がやや複雑な気持ちを覚えたとしても無理はない。

「彼女がグランドスラム24度目のタイトルを獲得したいと、本気で思っていたことは知っていました。みんなが知っていたことです。どこへ行っても、あちこちで宣伝されていましたから。でもコートに戻ると、別人になったような気持ちになります。その時はもうセリーナのファンではない。彼女のことも自分のことも、ひとりのテニスプレーヤーとしか感じません。でも、ネット際で彼女が抱きしめてくれた時は……子どもの頃に戻ったような気分でした」と、快挙を成し遂げた後に大坂は興奮気味に語っている。

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愛すべき性格。

「彼女は自分に対してとても厳しい。そこまでストイックにならなくても、と思うほどです」とコーチのバインはウェブサイト「ESPN」で語っている。「20歳の若い女性がここまで謙虚でいられるなんて。BNPパリバ・オープンで優勝した時、お祝いに何をしたと思います? 彼女は映画を観に行ったんですよ!」。なおみはお酒を飲まない。

コートの外では、彼女の控えめで内気な一面が覗く。おしゃべりやグループでの集まりは苦手のようだ。本人に言わせると、自分は夜遅くまでテレビゲームをするのが好きな“ギーク”だという。大きな試合の前には神経質になるが、一度コートに立つと冷静で落ち着いている。何千人もの観衆の前でプレーする時も怖気づいたりしない。観衆から喝采を送られればうれしくなり、逆にブーイングを浴びるとよけいにやる気が出る。

しかし、勝っても負けても、テニス選手としての彼女は常に謙虚で冷静だ。そこにいることを、ほとんど申し訳ないとさえ思っているようだ。セリーナを破った後も、「みんながセリーナを応援していたことを知っています。こんな終わり方(表彰セレモニーの冒頭、大会運営側や主審に対するブーイングが起こった)になってしまって残念に思います」という言葉を残している。

ひっぱりだこ。

彼女のプロフィールには人気者になるあらゆる要素が含まれている。ハーフの若い女性、日本生まれ、アメリカ育ち。アメリカ国籍も持っているが、競技には日本人として出場している。ハイチ出身の父親が(彼女のクレオール料理好きは父親譲りだ)、日本国旗の元でプレーするように勧めたという。なおみのことを、“穏やかな形での、多文化世界のモデルかつシンボル”、と言う人たちもいる。

そんな彼女をスポンサーが放っておくはずがない。9月13日に、彼女は日本の自動車メーカー、日産自動車と契約を交わし、ブランドの公式アンバサダーに就任した。『タイムズ』紙の報道によると、アディダスとの間で800万ユーロを超える契約の話が進んでいるとか。これは同社が女性と結ぶ契約としては記録的な額だ。契約が実現すれば同時に、大坂なおみは世界で最も稼ぐスポーツ選手の仲間入りを果たすことになる。

texte : Lucas Latil (madame.lefigaro.fr)

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