秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。#08 【海外ドラマ】絢爛に繊細に掘り下げる、孤高の女王エリザベスの素顔。
Culture 2018.10.29
必見の海外ドラマを紹介する短期連載の第8回。国内外の人々に親しまれるエリザベス2世の激動の日々を綴る「ザ・クラウン」の、華麗で壮大な歴史ドラマにはまること必至!
エリザベス女王役で一躍脚光を浴びたクレア・フォイ。フィリップ役は、大人気の英ドラマ「ドクター・フー」の11代目ドクター役で知られるマット・スミス。
英国王室は、いつの時代も注目の的だ。今年はキャサリン妃の第3子出産にヘンリー王子とメーガン・マークルの挙式、そしてメーガン妃の第一子妊娠など、おめでたいことが続いて賑やかしい。その中心にして頂点に立つのがエリザベス女王だ。英国史上最高齢君主として唯一無二の存在感を放つエリザベス2世を題材とした本作は、シーズン1では1947年にフィリップとの結婚から始まり、若くして女王となり、老練な政治家チャーチルと渡り合いながら新たな時代を切り開いていく姿を描く。
1シーズン10話の制作費は100億円以上。ロイヤルウェディングや絢爛豪華な戴冠式、宮殿内部の美術や衣装は美しく華やか。題材的にもエリザベスの妹マーガレット王女の悲恋やウィンザー公爵(エドワード8世)の王冠を賭けた恋など、英国王室らしくゴシップ要素の強いエピソードも多い。しかし、本作に浮わついたムードはなく、むしろ特殊な状況にある女性が自らの義務と責任を果たすべく、国家に人生を捧げる覚悟を決めた、ひとりの女性の生き様を浮き彫りにして重厚感のある作り。キャストのアンサンブルにも優れており、エリザベス以外の人々にそれぞれフォーカスした回も含めて、1話が1本の映画を観るかのように密度が濃い。
何よりも大切な家庭と公務の狭間で、エリザベス女王は人知れず苦悩を深めていく。
今年のエミー賞でドラマシリーズ部門の主演女優賞を受賞したクレア・フォイは、いまや飛ぶ鳥落とす勢い。『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督の新作『ファースト・マン』、『ドラゴン・タトゥーの女』の続編に当たる『蜘蛛の巣を払う女』のリスベット役など話題作が続く。本作のシーズン2は1956年のスエズ動乱に始まるが、意志の強さと深まる苦悩を伝える静かな熱演は、ますます見応えがあるものとなっている。シーズン3からはメインキャストが交代し、後々は故ダイアナ妃とチャールズ皇太子、カミラ夫人のエピソードなども描かれていく予定と話題は尽きない。
イギリスで最も著名な政治家のひとり、ウィンストン・チャーチル。ベテランのジョン・リスゴーが貫禄の演技でエミー賞ほかを受賞した。
原題/The Crown
クリエイター/ピーター・モーガン
出演/クレア・フォイ、マット・スミス、ジョン・リスゴー、ヴィクトリア・ハミルトン、ヴァネッサ・カービーほか
Netflixオリジナル作品
Netflixにてシーズン1・2を配信中
【INDEX】秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。 【#01】自立のため奮闘する良妻賢母の、マーベラスな可愛さ。
【#02】いまを映し出すディストピアを舞台にした、衝撃作。
【#03】シリアルキラーの狂気を、「glee/グリー」の彼が怪演。
【#04】知的な会話の虜になる、人気法廷ドラマのスピンオフ。
【#05】幻想世界でめぐり逢い続ける、孤独なふたりの物語。
【#06】戦場帰りのヒットマン、演劇の面白さに目覚める。
【#07】笑って泣ける、プロレスに挑む“負け犬たち”の奮闘。
【#09】殺人犯の心の闇を探る、スリリングなミステリー。
【#10】驚きと笑いの後、心にじわりと響く人生の哀歓。
texte:SACHIE IMA