恋愛をしても、すぐに飽きてしまうのはどうして?

Culture 2018.11.13

恋愛が始まる前後は情熱的で激しい恋心を抱くのに、いつも最後はスフレのようにしぼんでしまう……。ふたりの専門家が、私たちの心理と私たちの生きる社会にも言及しながら、この現象を解説する。

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恋愛にすぐに飽きてしまう人がいるのは、どうしてだろうか。photo:iStock

恋愛が始まったばかりの頃は、新しいパートナーとひと時も離れていたくないという気持ちになる。やがて、最初の高揚は次第に落ち着いて行くものだが、なかにはそこで留まらない人もいる。気持ちが萎え、愛情が冷め、相手にうんざりしてしまうのだ。場合によっては、このパターンを繰り返してしまうこともある。

心理学者のイヴ=アレクサンドル・タルマンと、社会心理学者のジャック・サロメの両氏によれば、こうした現象は最近、増加傾向にあるという。慢性的不満足感とも呼べるこの現象。ある程度は性格に起因することは確かだが、私たちが生きているこの社会にもその原因の一端があるという。

恋愛に飽きる現象は、なぜ起こるのでしょうか。

ジャック・サロメ(以下、サロメ) 出会ったばかりの頃の胸がウキウキするような状態は、いわば神からの恵みのようなもので、その時期が過ぎると創造的段階、あるいは崩壊の段階へと進みます。倦怠が訪れるのはこの時期です。ふたりの関係にまつわる誤解や落とし穴のせいで、恋愛愛情に疑問が生まれ、恋愛に疲れてしまうのです。これはたいてい、一方が本当は別れたいわけではないのに相手の元を去ろうと決意する時の苦痛の原因になります。なぜなら、お互いにまだ恋愛感情はあるのに、パートナーの片方が、ふたりの恋愛関係を続けられなくなってしまうわけですから。

イヴ=アレクサンドル・タルマン(以下、タルマン) 私たち自身、恋愛をロマンティックなものと考えて生きており、それが間違いの元になっていることも言っておかなければなりません。私たちは、愛は情熱的なものと信じ込まされていますが、実際には、情熱的な愛は愛というサイクルのほんの一部分に過ぎません。この段階が過ぎた時に努力を怠ったり、忍耐が足りないために、愛を情熱とは別の次元に導くことができない。すると、満ち足りない気持ちを抱く。上手く行っていることより、上手く行かないことばかりに目を向けるようになってしまいます。愛することに力を注ぐことより、なにもかも放棄して、別の誰かとまた最初から始める方が楽だと思う人もいるのです。

倦怠と真の愛情の喪失とは、どう違う?

サロメ 倦怠が原因でカップルが別れてしまうのは、多くの場合、当事者同士がお互いに気持ちを伝え合う手段を見つけられなかったためです。それぞれが対等な権利を持って恋愛という関係を生きるために必要な、相互共有の関係を作り上げることが出来なかったのです。愛情の喪失というのは、感情の問題です。私は“愛の放棄”と呼んでいますが、恋の炎が心の痛みに変わってしまうこと、それが愛情の喪失です。

タルマン 倦怠の場合は、カップルの生活に活気や自発性や新しさが少し回復するだけで、恋愛感情が復活することもあります。反対に、愛情が失われてしまった場合は、そうしたことでは事態はなにも変わりません。

恋愛に飽きやすい性格やタイプはありますか。

タルマン 確かに、人に比べてより多くの刺激や、新しい体験、感情的興奮を求める傾向にある人たちがいます。そして、一般的にいって、恋愛関係の初期に得られるものこそ、こうしたことに他なりません。退屈やマンネリに耐えられないこと、これは、私たち自身の精神構造にも関わる人格の特徴のひとつ。そもそもこうした人たちは、一般的にどんな状況でも飽きるのが早い傾向にあります。一方で、比較的容易にマンネリに順応できる人たちもいます。

それは、より深く愛について理解している人?

タルマン そうです。ただ、これは本人だけの問題ではありません。私たちの社会がこうした傾向を助長しているという面もあります。たとえば文学や映画の中でも、恋愛関係のモデルとしてよく描かれるのはたいてい付き合い始めたばかりのカップルで、長年連れ添ったお互いのことをよく知るカップルではありません。最初の高揚感こそが恋愛と考える傾向があるのです。そのように考える人は、恋に落ちるという事実に恋をしているだけなのですが。

サロメ ふたりの人間が長く一緒にいるために大切なことは、愛という感情ではなく、ふたりで作り上げる関係の「質」だということも忘れてはいけません。お互いの愛情を当てにするだけでは十分ではありません。ふたりの結び付きをぞんざいに扱ったりせず、いっそう緊密にすること、ふたりの団結力や結束力をさらに強化することが必要なのです。

長期的な恋愛関係を築けない人は今後、増えていきますか?

サロメ だんだん多くなっていくと思います。私たちは、あらゆる分野で消費を促進する社会に生きています。人間関係も例外ではありません。現代の男女は“恋愛初期の神の恵み”の時期を享受できるほど、お互い愛し合っていないのではないかと考えたくなるくらいです。現代の男女は、支配欲に起因する“擬似愛”を生きているように思うのです。消費的恋愛では、相手のことではなく、むしろ相手が自分に向けてくれる愛情を愛しているのです。こうした関係では、愛情は消費され、利用されるものになってしまいます。

タルマン 同感です。私たちは欲望を際限なく掻き立てる消費社会に生きていると思います。欲しいものを手に入れるとすぐ、今度はもっと性能の高い製品に買い換えなければと思ってしまうわけです。相手が人間でもやっていることは同じです。これには、選択肢がたくさんあることも一因として挙げられます。

私たちより上の世代の人たちは、自分が住んでいる村や、隣村からパートナーを選んでいました。ところがいまや、ワンクリックすれば新しいパートナーだって見つかります。不和が生じた場合、他を探して自分の期待にぴったり合う人を見つけるほうが、楽だと思う人がいるのも無理はありません。

状況を改善するには、選択肢を狭めるべき?

タルマン 実際、選択肢が多いほど、不満を感じやすくなるものです。というのも、たくさんの選択肢の中からある人やある製品を選ぶ場合、選択が間違っていなかったか、別の人を選ぶべきではなかったか、あるいはもっと待ったほうがよかったのではないか、といった迷いが必ず生まれます。それに対して、選択肢が限られていたり、選択肢がない場合は、そうした状況に順応して、あるもので満足するものです。

それから、相手に合わせすぎる人もすぐに飽きられてしまいます。そういう人には欲望を抱きにくいものです。手に入らないものほど欲しくなるのが人間というものです。ですから、たまに会わない時間を作ることが肝心です。そうすることで、気持ちも新たになって、さらにお互いのいいところが見えてくるようになります。そして、時々はマンネリから抜け出すよう心がけましょう。いままでしたことのない刺激的な体験をしてみるのです。飽きっぽい人は、そうした刺激が足りないと思っているわけですから。

サロメ 恋愛関係を長続きさせるには、手入れを怠らないことです。つまり、ふたりの関係に活気を与える、意義のあるポジティブなメッセージを送ることで、関係を育むことが必要なのです。逆に、威圧的な態度を取るとか相手を責めるというような、否定的で有害なメッセージを送らないようにすることです。そうしたメッセージで日常をかき乱してしまうと、人生をともにするというプロジェクトを、ふたりで一緒に続けていく情熱を損ないかねません。

関係を進展させるためには、カップルの土台を刷新することが必要になることもあるでしょう。その時には双方があらためて、相手に期待すること、自分がふたりの生活にもたらすことができるもの、自分にとって受け入れられないことを、成長した自分たちに見合ったやり方で定義すればいいのです。

こうしたポジティブな手続きを踏むことで、カップルの関係が現状に合ったものになり、ふたりの間に新しいハーモニーも生まれます。そして、自分の欲求を満たすために相手に依存しないで済むよう、感情的にも物質的にも自律した人間になることが大切です。精神上の治安レベルを高く保つことで、自分の恐れや不安をパートナーにぶつけてしまったり、自分の幸せについての責任をパートナーに押し付けてしまうことが避けられます。

恋愛に飽きやすい人たちは、いつか飽きなくなるのでしょうか?

サロメ 愛情を管理したり、コントロールしたり、誘導したりできるルールはありません。ですが、現実の愛に到達するためには、自分自身が成長し、自立し、ひとりの人と長く付き合う能力や、他者と絆を結ぶ能力、パートナーとともに人生設計を行う能力を培う必要があるでしょう。愛とは、与え合い、受け取り合うものです。それがどういうことかしっかり考えながら、同時に、愛の発展性についても考えることが大切です。そのためには、カップルのそれぞれが成長し、お互いに尊重し合っているという気持ちを持てるような、質の高い関係を作り上げることが必要です。

タルマン そうした人たちがいつか飽きなくなる時が来るかどうかは、簡単にはわかりません。なかには、飽きっぽい人を飽きさせないほど刺激的なパートナーを見つける人もいるでしょう。人生の浮き沈み(身近な人の死や病気や事故など)を経験して、自分自身の生き方を見直す人もいるでしょう。ですが、この倦怠というサイクルに閉じ込められたままの人もいると思います。いずれにせよ、苦痛を感じるようになったら、助けを求めることをおすすめします。

texte:Raïnat Aliloiffa (madame.lefigaro.fr)

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