映画『半世界』のいい男たち、取材現場から。長谷川博己の繊細さ。

Culture 2019.01.20

2019年2月15日より公開される映画『半世界』。本作に出演する、稲垣吾郎さん、長谷川博己さん、渋川清彦さん、阪本順治監督の、いい男たち4人にフィガロジャポン本誌3月号掲載記事のため取材した際の舞台裏を紹介。互いの印象も個別インタビューで語ってくれた素敵な男たち、第2回目は、物語の”きっかけ”となる役柄を演じた長谷川博己さん。

2018年10月25日、東京国際映画祭オープニング、レッドカーペット直後。
NHK連続テレビ小説「まんぷく」と、大河ドラマの撮影も今後入ってくるであろう長谷川博己さんの時間が取れるのはここしかないかもしれない……そういう事情もあって、慌ただしいタイミングの映画祭オープニング当日に取材となった。今回の4人を取材するうえで、トップバッターだった。
『半世界』組は最後にレッドカーペットを歩くことになっていた。トム・フォードの黒いシャツ、黒いタイ、黒いスーツでレッドカーペットに登場した長谷川さん。取材部屋に着た時は、タートルネックのニットに、ピークトラペルのスーツ。フィガロの撮影のために、レッドカーペットとは異なる衣装で来てくれた。

シャイというよりもクールという形容詞がふさわしい細見の体躯。
今回の企画はフィルムの質感を生かして4人を撮りたい、というフォトグラファーの考えもあって、シャッター音が撮影場所であるベッドルームに響く。スタイリストが一言、「いい音だなあ」。長谷川さんは、その言葉に対して、あえて無反応に、レンズだけを意識してくれているように見えた。

「それCOMOLIですか？」とカメラマンに向かって長谷川さん。
「そうです」と彼が答えると、「好きなんです。」と淡く微笑んだ。
カメラに向かってクールな表情を向けていたが、カメラマンが最後に、「これで最後ですから、柔らかい表情を」と伝えたら、少しだけ口角を上げてくれた。

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取材が始まって感じたのは、気難しいというのとはまったく違う「静かさ」。インタビュアーが投げかけた質問や意味を、正しく理解しようと時間をかけて熟考し、寄り添って考えてくれる、奥ゆかしい知性的なムードが漂うひとだ。そして、事前に質問は送っていたものの、決まりきった答えを用意してくるような、優等生的なこともなかった。問いかけに対して真剣に悩んでくれる、その誠実さがとても印象的だった。

長谷川さんの声は、ささやくように儚げだ。だからこそ、その声をとらえるために近づきたくなってしまう。そんなささやくような声なのに、自分自身を「俺」と呼ぶところも含めて、本能的にセンシュアルな男性と思った。インタビューの間、何気ないところで、「淡い」「やわらかい」など、ニュアンスの優しい言葉を選ぶところも素敵だ。

「長谷川さんは、“いま”がいちばん楽しそうに見えますね」と言ったインタビュアーの言葉に、この日いちばんの笑顔を見せてくれた。
その理由がなんとなく見えてくる、フィガロ本誌のほうに掲載されたインタビューをぜひ読んでほしい。

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