東京国際映画祭W受賞! 中国発の本格派サスペンス。
Culture 2019.01.24
清流と濁流が逆巻く人の世は、儚く、愛しい幻影のよう。
『迫り来る嵐』
1997年、地方都市の国営製鋼所の敷地内で連続殺人事件が勃発。保安部の警備員ユィは老刑事に「名探偵さん」と皮肉られながら、犯人の割り出しに執心する。恋人を囮に使ってまで真犯人の行方を追うユィの見果てぬ夢が、合理化によってお役御免の危機にある、街の荒廃と合体して呼び寄せるもの。中国の経済成長を下支えしつつ、切り捨てられ、忘れ去られゆく者たちの、それは切ない生の痕跡だ。鈍色の現場に降りしきる雨が不純物を洗い流し、冬枯れの中、人の世の愛と欲をあぶり出す。新鋭によるミステリーの秀作。
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*「フィガロジャポン」2019年2月号より抜粋
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