「もっといい人がいるはず」が、30代の結婚を遠ざける。

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世間や親たちの間には、30代になればそろそろ身を固めるべきという考えがある。当の30代には、なかなか結婚に踏み切れない人もいる。どうしてこんなに複雑なのだろう。ドキュメンタリー『It's Complicated(イッツ・コンプリケイテッド)』の監督、ノエミ・マヨドンとミリ・パチュレルのふたりに話を聞いた。

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時代とともに恋愛観は変わる。いまは相手を探し求める人々にとって難しい時代だ。photo:© Lena Mirisola/Image Source/amanaimages

フランスで30歳といえば、結婚、アパート、子どもを意味する、と言われる。しかし現代の30歳にとって、カップルとして付き合うことはもうそんなに簡単なことではないようだ。

常に変動し続ける社会の影響で、恋愛関係が不安定になっているだけでなく、ソーシャルネットワークや出会い系アプリなどの普及もあって、私たちはつい“隣の芝生はいつも青い”と思ってしまいがち。マヨドンとパチュレル、ふたりの30歳前後のジャーナリストが、ドキュメンタリー『It's Complicated』で、こうした現状に光を当てている。同作はドキュメンタリー専門の動画配信サイト「Spicee」で視聴できる(有料)。作品を見ずとも、ふたりの考察にはうなずける部分が多いだろう。

パートナーに対して、過大な期待を抱いている。

――30歳の恋愛を語るのに、なぜあなた方ふたりの個人的な話から始めることにしたのですか?

ノエミ・マヨドン(以下、マヨドン):恋愛については、語り方は無数にあります。自分たちがよく知らないテーマに取り組むよりは、自分たち自身の人生のことを話す方がいい、ミリと私はそう考えました。また、批判を避けるための手段でもありました。

ミリ・パチュレル(以下、パチュレル):自分たちが知っているテーマなら、説教くさい語り口になることもありません。何よりも、私たち自身が抱えている疑問に答えを出したいという気持ちがありました。もしそれが、私たち以外の人たちにとって助けになるならそれも良し、ということで。

――現代社会において、30歳の恋愛がこれほど難しいのはなぜでしょうか?

マヨドン:私たちは未来のパートナーに対して、過大な期待を抱いていると思います。現代社会では、私たちには何千、あるいは何百万という可能性が与えられています。大都市に住んでいる場合はなおさらです。そういう状況にいると、いったん情熱が冷め、マンネリ気味になった時に、関係を持続させることが難しくなってしまうのです。ちょっとしたいざこざでも、解決するよりは他を探すほうが簡単ですから。その上、身の周りには絶えず誘惑があり、アプリやソーシャルネットワークによって恋愛感情をどんどん掻き立てられている、そういう世界に私たちはいるのです。愛にはときには妥協も必要だとか、時間をかけて育てるものだ、などというように考えることが難しくなっています。現代は、何もかもがスピードアップしています。私たち自身、たとえば仕事という面でも、絶えず変化にさらされているのです。

パチュレル:それに加えて、家庭を築きたいと思っている人の場合、30歳を過ぎると早く相手を見つけなければという焦りが出てきます。自分で勝手に感じる焦りと、周囲からのプレッシャーもあります。是が非でも身を固めなければと思い込むあまり、ふたりで暮らすという考え方が置き去りにされてしまう。また、改めて言うまでもありませんが、私たちは理想の結婚相手という幻想に囚われています。そのため、新しい人と出会うたびに、隣の芝生は青いとか、次こそいい出会いがあるに違いない、と思ってしまいます。恋愛に限らず、何をする時でも同じです。私たちは、自分が持っているものに満足できない世代なのです。

――映画の中で精神分析医のファビエンヌ・クラメールが説明しているように、失望や不安を特徴とする世代でもあります。

マヨドン:期待すれば失望するのも当たり前。また、これも同じ精神分析医が強調していることですが、私たちの世代は、たとえば戦争や飢饉といった大きな困難を経験していません。そのため、私たちは、親の離婚や失恋によって、人生で最初の苦しみを経験するのです。誰もがいつかは恋愛に苦しめられるものですから。一方で、私たちは付き合いが安定したときに訪れる、疑いや倦怠やマンネリに対して覚悟ができていないとも思います。情熱、大恋愛、強い刺激、常にそういったものを人生に求めているのです。でも常にそれらに囲まれていることは不可能ですから、失望してしまうわけです。

パチュレル:私の場合は、15歳の時に親が離婚しました。愛というものを発見する年齢で、すでに愛の限界を知ってしまったわけです。以前は、離婚自体も離婚について公然と話すことも、いまほど一般的ではありませんでした。私たちの世代は、恋愛にまつわる苦しみに関しては現実主義者だと思います。それなのに、私たちもやっぱり素敵な王子様との恋に憧れてしまうのですけど(笑)!

――作品では出会い系アプリが悪役として描かれています。

マヨドン:出会い系アプリというのは、主に性欲を満たすための実験場と言えます。ある程度大胆な振る舞いも許されるこうしたデジタル手段を利用して、自分の幻想を実現してみたいと思う人はたくさんいます。思うに、こうしたアプリケーションが満たしてくれるのは、ことにセックスのパフォーマンスや完璧な技巧の追求といった、既存の欲望や欲求ではないでしょうか。

パチュレル:利用するしないはともかく、こうしたアプリケーションは、恋愛に取り組む私たちの態度に大きく関わってくると思います。いまや毎晩新しい人に出会うことも可能ですし、自分が望めば何でも可能なのです。こうしたことは、おそらく私たちのものの考え方にも影響を及ぼします。こうしたアプリケーションが原因で、人間らしい感情が失われるということも起きています。約束をすっぽかすとか、誰かを「ゴースティング(関係を突然絶つ)」するとか、一度セックスをするだけでもう二度と会わないとか……そういうことをしても、以前ほど良心が痛まなくなっているようです。

――インスタグラムやフェイスブックの登場も、30代の恋愛に変化をもたらしている?

マヨドン:ええ、特に透明性という観点から、そうしたことが言えます。以前にくらべて羞恥心がなくなり、何でも人に見せてしまいます。セックスをした後のカップルの画像をソーシャルネットワークに掲載する「#aftersex」というハッシュタグまであるのです。それでも、人に見せるのは表面的なことで、プライベートな部分をさらけだすことはめったにないと、いまも私は確信しています。その代わり、フェイスブックやインスタグラムは実際に嫉妬心を煽ることがある、というのが私の考えです。もともと嫉妬深いタイプの人がこういったソーシャルネットワークを利用すれば、その性質がより強化されてしまうと思います。たえず人目に晒されていれば、不安感が芽生えます。常に誰かが、自分たちカップルを脅かす存在としてすぐそこにいるのです。自分だけの空間を持つことが重要になっています。

パチュレル:ソーシャルネットワークの時代には、カップルの理想化も起きています。インスタグラムをみれば一目瞭然です。天国のような海岸を背景に抱き合うカップル、こうしたものは演出であって、実際の人生とは違います。ですが、画像を見た人はそれを求めてしまいます。そうして手の届かないものを探し求め続けることになるのです。このような完全に作られた画像は、幻想を作り出すだけではありません。私たち自身の恋愛観を混乱させ、絶えず人と自分を比較するようになってしまいます。そこから生まれる感情は、カップルにとっても個人にとっても有害なものです。

恋愛にもはや、コードは存在しない。

――作家のエヴァ・イルーズは、この世代は「恋愛のカオス」を生きていると評しています。

マヨドン:こうした言い回しをしながら、彼女は恋愛にもうコード(行動規範)は存在しないと言おうとしているのです。私たちの両親や祖父母の世代では、カップルはさまざまな段階を経ていくものでした。まず出会いがあり、やがて男性が女性に言い寄り、結婚し家庭を築く、というように。現在では、互いにカップルになるかどうかわかる前にセックスするし、同じ人と何度もセックスしても、必ずしも付き合っているという意味にはなりません。恋愛のコードが壊れてしまって、もはや誰にもどうしたらいいかわからないというのが現状です。非常に不安な状況であると同時に、素晴らしいこととも言えます。すべてこれから作り出せるわけですから。

――現代の恋愛は、私たちの祖父母の時代の恋愛の対極にあるといえますか?

マヨドン:当時は、自由を得るためには結婚以外に道はありませんでしたが、いまはそうではありません。女性は経済的に独立していますから、生活費のために結婚する必要はありません。カップルになることは必要なことではなく、むしろ「ケーキの上のさくらんぼ」、つまりおまけなのです。

パチュレル:私も、以前は結婚が自由の同義語だったと思います。ですがいまは逆。結婚しない方が自由でいられると思われています。実際、縛られるのが嫌だからと、結婚することを恐れている人もたくさんいます。結局、私たちの祖父母の世代のカップルは、結婚についてそんなに考えたりもしなかったのではないでしょうか。

――いまは考えすぎだと?

マヨドン:私たちの期待はいまや増大しています。私たちの選択基準も当然高まっています。現在、出会いを求める女性は、カップルになる前から相手にすべてが揃っていることを望んでいます。面白くて、ハンサムで、頭がよくて……と。こうした美点は、ときには長い時間をかけて初めて見えてくるものなのですが。

パチュレル:それでも変わらないこともあります。今後も一目惚れはなくなりません!

texte : Mooréa Lahalle (madame.lefigaro.fr)

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