立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019 #04 【カンヌ映画祭】ペネロペも登場!スペインの巨匠が最高賞に王手?

Culture 2019.05.20

映画祭4日目。昨夜公式上映が行われた、エルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』(8月23日より日本公開)のプレススクリーンング&記者会見。エグゼクティブプロデューサーのエルトン・ジョンは、残念ながら会見には欠席でした。

ウーマン・イン・モーションに女優エヴァ・ロンゴリア登壇。

その後、カンヌのオフィシャルパートナーであるラグジュアリーグループ・ケリングが開催しているウーマン・イン・モーションのトークイベントに出席。映画界における女性の活躍をサポートするための議論の場として、毎年開催されているイベントですが、昨日はレバノン出身の映画監督ナディーン・ラバキー、今日は米国の女優エヴァ・ロンゴリアが登壇しました。

190520-781740-500x333.jpg現在はプロデューサーとしても活躍しているエヴァ・ロンゴリア。©kering

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多彩な活躍を見せるナディーン・ラバキー。©kering

ナディーン・ラバキーは、主演、脚本、監督を務めた『キャラメル』(2009年)で注目を集め、昨年のカンヌでは『存在のない子供たち』(7月日本公開予定)で審査員賞を受賞。米国のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど、世界的にも注目されている監督で、今年は「ある視点」部門の審査員長を担っています。ビジネス誌の世界で最もパワフルなアラブ人100人で、女性トップ5に選ばれたとか。

「私は、戦争が長く続くレバノンの出身です。レバノンには基本的に映画がありません。映画を作りたいと考え始めた時も、それはほぼ不可能なことでした。映画産業がないと いう地点からスタートしているので、私たちはいま、一緒に作り上げているところです。『キャラメル』 を作った頃は、情勢としても数年間の平穏の中にあり、希望を抱き始めていました。私は誰かの 映画製作に携わることも、他の映画監督から教わることもなく、映画の作り方を自分自身で作り 上げてきました。映画を撮ることに関しては完全に素人です。ミュージックビデオやコマーシャル は作ったことはありましたが、当時それ以外に何もなかったからです。いままでの道のりは 非常に個人的な体験であり、独自のやり方でここまでやってきました。 #MeTooと#TimesUp の動きが広まってから、多くのことが起こりました。人々の考え方に変化が生じ、 討論し議論を交わすようになりました。どんな問題においても、解決への糸口を見つける には、まずは問題について話し合うということです。こうしたことが現在起こっているのだと感じています」

まだまだ女性監督の少ない映画界ですが、早い時期にカンヌのような映画祭に認められてチャンスを得たことで成長できた経験から、女性や英語を母国語としないフィルムメーカーにとって、映画祭のような場所が大切であることを語りました。

エヴァ・ロンゴリアは、人気テレビドラマ「デスパレートな妻たち」で大ブレイクした女優ですが、現在はプロデューサーとしても活躍。ハリウッドで最もパワフルな女性のひとりであることは間違いありません。スタッフには女性を積極的に起用していること、ラテン系の女性が役を得ることのハードルの高さなどを語りました。キャリアの初期には、エキストラばかりだったこともあったとか。

190520-1.jpgトークイベントでは、エヴァ・ロンゴリアが自身のキャリアについて赤裸々に語った。©Atsuko Tatsuta

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コンペは2大巨匠の作品が上映。

コンペは大物監督が登場。すでに2度のパルムドールを受賞している英国の巨匠ケン・ローチとスペインの巨匠ペドロ・アルモドヴァルです。ケン・ローチ監督の『Sorry We Missed You』(原題)は、大手運送会社の下請けドライバーの父とホームヘルパーの母という多忙な両親のもと、寂しさを募らせる子供たちと家族を通して、グローバル化する現代における家族のあり方を問う社会派ドラマ。安定の秀作です。

190520-3.jpg現代の家族の問題を描いたケン・ローチ監督の『Sorry We Missed You』(原題)。

誰もがその実力を認めるスター監督ながら、パルムドールという頂点の賞を受賞していないペドロ・アルモドヴァル。『Pain and Glory』(英題)は、初老の映画監督が人生を振り返る自伝的作品です。ワールドプレミア作品がカンヌのコンペですが、この作品は本国スペインでは3月にすでに公開済み。ということで、すでに出ている批評ではかなり好評だったのですが、ここカンヌでも大絶賛! 業界紙フィルム・フランセーズの星取りでは、15人中11人が5段階で最高マークしています。

190520-5.jpg『Pain and Glory』(英題)は、ペドロ・アルモドバルの自伝的作品。

作品も高評価なうえに、アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルスという2大スターが共演しているということもあって、記者会見は入場できないほどジャーナリストが詰めかけました。

190520-GettyImages-1150085004.jpg『Pain and Glory』(英題)の記者会見に登場した、ペドロ・アルモドヴァル、ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

>>立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019
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