立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019 #05 【カンヌ映画祭】中国のノワールフィルムにタランティーノ登場!

Culture 2019.05.20

カンヌ映画祭5日目。朝イチのコンペ作品は、オーストリアの女性監督ジェシカ・ハウスナーの『Little Joe』(原題)。日本では、レア・セドゥ出演の『ルルドの泉で』(2011年)で知られている監督ですが、今回は初の英語映画。英国のエミリー・ビーチャム、ベン・ウィショーなどが出演しています。

花粉が人に幸福感をもたらす特殊な花を培養している、植物研究所に務めるシングルマザーのアリスを主人公にしたSF。和太鼓など和楽器を使った伊藤貞司の前衛的な音楽が印象的です。現地の批評はそんなによくないようですが、個人的にはなかなかおもしろかったです。ジェシカ・ハウスナーは、このカンヌで女性版フランケンシュタインの製作も発表。独特の不気味さを演出するのが上手い監督なので、次作も楽しみです。

190520-6963d79bb9a49488227a7092e8308322.jpg特殊な花を培養している植物研究所の話『Little Joe』(原題)。

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フェミニズムな新感覚チャイニーズノワール。

5日目のコンペ2作目は、ディアオ・イーナンの『The Wild Goose Lake』(英題)。『薄氷の殺人』(2014年)で、ベルリン国際映画祭の金熊賞&主演男優賞をW受賞している中国の秀英が、初めてカンヌのコンペに登場しました。裏社会で生きる男が、闘争に巻き込まれ追われる身になりながらも、女との未来を信じるが……というチャイニーズノワール。ハードボイルド風に見せかけて、“フェミニズム”的な味付けが新しい。

190520-3.jpg裏社会で生きる男たちを描いた新感覚チャイニーズノワール『The Wild Goose Lake』(英題)。

『The Wild Goose Lake』(英題)の公式上映では、火曜日のコンペで自作が上映する予定のクエンティン・タランティーノ監督が登場して、レッドカーペットを沸かせました。カンヌに参加する監督のミッションは多く、ほとんどの監督が他者の作品を観ている余裕がないという状況。それにもかかわらず観にくるとは、アジアのアクション映画のオーソリティとして知られるタランティーノ! 本当に観たかったのでしょう。

190520-GettyImages-1144886861.jpg『The Wild Goose Lake』(英題)公式上映に登場したクエンティン・タランティーノ。©Getty images

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アルゼンチン映画に、女性活動家たちのデモも。

メイン会場グランテアトルリュミエールでは、スペシャルスクリーニングのカテゴリーからホワン・ソラナス監督の『Que Sea Ley』(原題・英語では、Let It Be Lawの意味だそう)が上映。今年のオフィシャルスクリーニングで唯一のアルゼンチン映画であり、監督のホワン・ソラナスは、アルゼンチンの巨匠フェルナンド・ソラナスの息子です。

190520-4b847237599e42b2e62a06cdfbe693ec.jpg中絶の合法化をテーマにしたドキュメンタリー『Que Sea Ley』(原題)。

この作品は、中絶の合法化をテーマにしたドキュメンタリーですが、公式上映に合わせて、アルゼンチンから駆けつけた活動家の女性たちを中心にデモが行われました。実はカンヌ映画際期間中は、時々こうしたデモに遭遇します。映画をお披露目する場だけでなく、注目度が高いカンヌは、アピールの場、発言の場でもあるのです。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

>>立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019
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