立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019 #06 【カンヌ映画祭】アラン・ドロンに名誉賞! ウーマン・イン・モーションは中国の大女優に。

Culture 2019.05.21

映画祭6日目。朝イチのコンペの試写は、ルーマニアのコルネル・ポルンポイユ監督の『The Whistlers』(英題)。ルーマニアの中年の警官を主人公にした、ユーモアあふれるノワールなクライムサスペンス。カナリア諸島で、主人公が島の人たちから習う、言葉のように使える口笛がちょっとおもしろいトリックとして登場。他にも往年のハードボイルドなノワール作品からの引用があったりと、いまどきのスピード感あるクライムアクションとは一線を画し、味わい深いです。これは日本で配給してほしい!

190521-b9d88fa1cbe8a5974b469eccd7b19aba.jpgユニークな新クライムサスペンス『The Whistlers』(英題)。

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巨匠&フランス女性監督の作品も上映。

コンペは、他に巨匠テレンス・マリックの『A Hidden Life』(原題)と、フランスの女性監督セリーヌ・シアマの『Portrait of a Lady on Fire』(英題)。テレンス・マリック監督は、このところよくも悪くもポエティックな恋愛ドラマが続いていましたが(一昨年、SXSWで観た『ソング・トゥ・ソング』は、まだ日本公開未定です)、今回は戦時下のオーストリアでナチスに抵抗し、徴兵を拒否し処刑された歴史に埋もれた英雄フランツ・やゲルシタッターの実話です。

190521-b98ae623445eae394c07b7964f7c1ede.jpg『A Hidden Life』(原題)は、戦時下のオーストリアにおける実話がベースに。

セリーヌ・シアマ監督は、日本では、『水の中のつぼみ』(2008年)で映画ファンには知られるところですが、今回の『Portrait of a Lady on Fire』(英題)もまたアデル・エネルを起用。18世紀、結婚前の肖像画を描くことを依頼された女性画家とモデルとなる令嬢の恋愛を描いています。冒頭は文芸映画のような美しい精緻な語り口で始まりますが、次第に感情に深く入り込み、“女性版『君の名前で僕を呼んで』(18年)”のような美しいラブストーリーになっていました。これも日本でぜひ配給してほしい!

190521-6460d212290abf4f4b4b06eb49c9f3a2.jpg女性同士の愛を描いた美しい作品『Portrait of a Lady on Fire』(英題)。

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大スター、アラン・ドロンが登場!

マスタークラスには、国民的大スター、アラン・ドロンが登場! 御年83歳。すでに引退宣言をしているアラン・ドロンですが、今年はカンヌ国際映画祭でその功績を讃えられ、名誉パルムドール賞を受賞。レッドカーペットを歩き、マスタークラスに登壇しました。“ハンサムすぎる俳優”としてのハンディを背負ったそのキャリアは順風満帆だったわけではありませんでしたが、62年のキャリアの最後を改めて明言しました。

190521-CANNES-2019---ALAIN-DELON.jpg名誉パルムドール賞を受賞したアラン・ドロン。ウォッチ「オクト フィニッシモ」/ブルガリ(ブルガリ ジャパン)©Bulgari

そのアラン・ドロンも姿を現したのが、夜に行われたカンヌ映画祭とラグジェアリ−・グループ、ケリングが共同主催するウーマン・イン・モーションのオフィシャルディナー。アラン・ドロンほかクロード・ルルーシュなど、映画界の重鎮やアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥら審査員、ヴァレリア・ゴリノ、シャルロット・ゲンズブール、エヴァ・ロンゴリアといった女優など、約200人の映画人たちが集いました。

190521-Photos-diner-WOMO.jpg審査員のエル・ファニングもオフィシャルディナーに登場した。©Kering

映画界における功績のあった女性を讃えるウーマン・イン・モーションアワードの今年の受賞者はコン・リー。これまで、ジェーン・フォンダ、スーザン・サランドン、イザベル・ユペール、パティ・ジェンキンスらが受賞してきましたが、アジア人としては初の受賞となります。中国のトップ女優として長年君臨するコン・リーですが、受賞スピーチでは幼い頃母親から「身体の造りは違っても、インテリジェンスに差はない」と教えられたエピソードを語り、拍手喝采を浴びました。

190521-Photos-diner2-WOMO.jpgウーマン・イン・モーションアワードを受賞した中国の女優コン・リー。©Kering

アラン・ドロンも話していましたが、「続けていくことが難しい」のがこの世界。コン・リーを始め、カンヌは長年の努力と継続によって“いま”がある俳優や監督たちの交流の場です。やはりパワーをもらえますね。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

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