立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019 #10 【カンヌ映画祭】ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホにインタビュー。

Culture 2019.05.24

映画祭10日目。コンペに『Parasite』(英題)が選出されているポン・ジュノ監督と、彼の作品の常連で韓国映画界の演技派スター、ソン・ガンホにインタビュー。作品もすこぶる評判がいいので、取材に集まってきているジャーナリストの熱も高く、「今年のコンペでいちばんの傑作!」といった声が聞こえてきます。

190524-4d243d5e19446e87ca7d4bf4fc9e8d29.jpg定職につかないキム一家を舞台にした『Parasite』(英題)。

インタビューはオープンエアのビーチのレストランで行われたのですが、隣では『Matthias et Maxime』(原題)組が取材していて、通りかかったグザヴィエ・ドランがポン・ジュノに挨拶をしに立ち寄っていきました。カンヌは、こんな風にパーティや滞在先のホテルや取材場所などで、監督や俳優たちの新しい出会いもあるのです。

190524-GettyImages-1150912220.jpgポン・ジュノやソン・ガンホをはじめ、公式上映に登場した『Parasite』(英題)のキャスト。©Getty Images

そうこうしていたら、ちょっと離れたところで、クロエ・セヴィニ−の撮影が始まりました。そういえば、2017年にファティ・アキン監督の『女は二度決断する』で女優賞を受賞したダイアン・クルーガーは、その数年前にカンヌのパーティでファティ・アキンと出会い、意気投合したことがきっかけで一緒に作品を作ることになったと言っていました。

漫画など日本のポップカルチャーに精通しているポン・ジュノ監督ですが、公開時には日本にまた行く予定とのこと。『タクシー運転手〜約束は海を超えて〜』(18年)で若いファンも増えているソン・ガンホも、ぜひ一緒に来日してほしいですね。

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「監督週間」の短編部門で注目の監督、吉開菜央。

午後一は、「監督週間」の短編部門に『Grand Bouquet』(原題)が選出されている吉開菜央さんに取材。吉開菜央さんは、この10年ほど短編やビデオインスタレーションの作品を撮り続けている映像作家。米津玄師の『Lemon』のミュージックビデオにも出演しているダンサーでもありますが、もともとダンサーとして身体表現を追求していく中で、その身体感覚を映像化したいという欲求から作品を作り始めたそう。

190524-DSCN0597.jpgダンサーであり監督としても挑戦する吉開菜央。©Atsuko Tatsuta

『Grand Bouquet』(原題)は、自らが“触感映画”と呼ぶように、ひとりの女性が“闇”と闘う様子を映像化したもので、光や色、音など五感に訴えてくる作品です。従来の物語性のある映画とは一線を隠す作品ですが、初めてカンヌに参加しほかの出品作を観て、多いに刺激を受けたそう。「監督週間ディレクターのパウロ・モレッティさんにもお会いして、なぜ私の作品を選んでくれたのか聞いたところ、『ショートフィルムを撮るのは若い監督で成長すると長編を撮るというイメージがありますが、それは違うと思っています。ショートフィルムの20分程度の長さに創造性を凝縮させて密度を高めることで、ひとつの長編とまったく同じ価値を持つ作品になります。あなたの作品もたくさんのアイデアが盛り込まれていて、高い密度で創造性が凝縮されていました。それはまさにこのショートフィルムのプログラムで私が見せたかったことと同じでした』と言ってくださったんです。世界でいちばん質の高い映画館で、作品の完全版を初お披露目できたことがすごくうれしいです。映画館の持つ力を改めて感じ、日本の映画館で公開したいという強い気持ちが湧いてきました。今後は長編作品にも挑戦していきたい」と意欲を語ってくれました。

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コンペにはイタリアとフランスの巨匠が登場。

コンペには、イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオと『アデル、ブルーは熱い色』(13年)でパルムドールを受賞しているフランスのアブデラティフ・ケシシュ監督の作品が登場。マルコ・ベロッキオ監督の『The Traitor』(英題)は、00年に病死したイタリアのマフィア、トンマーゾ・ブシェッタの半生を追う実話もの。タイトルのザ・トレイター=裏切り者は、組織について口を割ったことにより、多くのマフィアが逮捕されることになったことに由来しています。実話ものながら、マルコ・ベロッキオらしい構図のしっかりした重厚な映像は見応えがありました。

190524-cc8ba141d9ed329f6af06cb8097d85b0.jpgマルコ・ベロッキオ監督の『The Traitor』(英題)はマフィアの実話がベースに。

アブデラティフ・ケシシュ監督の『Mektoub, My Love: Intermezzo』(原題)は、17年にヴェネツィア国際映画祭のコンペで上映された『Mektoub, My Love: Canto Uno』(原題)の続編。若手脚本家アミンを中心にした主人公たちのその後が描かれます。約3時間半に及ぶ青春群像劇で、3部作の2作目であるこの作品に何か評価を与えるのは難しく、コンペでは不利なのでは? と単純に思ってしまいます。尺が長いだけに一般公開もハードルが高いと思われますが、日本での公開はあるのでしょうか。

190524-41d143057dfd3388a3fa18dd251f1942.jpg続編ものの青春群像劇『Mektoub, My Love: Intermezzo』(原題)。

「批評家週間」の受賞作はフランスのアニメ。

映画祭が残すところ数日となり、併設部門「批評家週間」の受賞作が発表になりました。

監督1、2作目の若いフィルムメーカーを対象にした部門ですが、最高賞であるグランプリ・ネスプレッソ賞は、フランスのジェレミー・クラッパンのアニメ『Lost My Body』(原題)。アニメ−ション作品の受賞は、ジャンル映画が豊作の今年のカンヌのひとつの象徴といえるかもしれません。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

>>立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019
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