立田敦子のカンヌ映画祭レポート2019 #11 【カンヌ映画祭】最後のインタビューはグザヴィエ・ドラン!

Culture 2019.05.26

映画祭11日目。いよいよコンペは2作品を残すのみ。1本目はエリア・スレイマンの『It Must Be Heaven』(原題)。イスラエル、ナザレ出身のエリア・スレイマンは、長編初監督作品『消滅の年代記』で1996年ヴェネツィア国際映画祭の新人監督賞を受賞。第2作目となる『D.I.』が2002年のカンヌで審査員賞と国際批評家連盟賞をW受賞した逸材です。2009年のカンヌのコンペで上映された『The Time That Remains』(原題)以来、10年ぶりの新作になります。

2009年といえば、ミヒャエル・ハネケの『白いリボン』がパルムドールを受賞した年ですが、コンペにはケン・ローチ、マルコ・ベロッキオ、ペドロ・アルモドバル、クエンティン・タランティーノという今回と同じ名前が5人も! なんだか同窓会みたいですが、ディレクターズランチではどんな会話が交わされるのでしょうか。

俳優としても活動しているエリア・スレイマンは自作にも出演しますが、『It Must Be Heaven』(原題)は、そのエリア・スレイマンが安住の地を求めて世界を旅するお話。ニューヨーク、パリなど異国の地で起こる出来事をアイロニカルなユーモアに包んで見せていきます。不条理なブラックコメディを通して、アイデンティティを追求していくスタイルは健在。今年のコンペの作品の中では異色の存在で、ジャーナリストの間での評判もとても高いです。

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エリア・スレイマンの10年ぶりの新作『It Must Be Heaven』(原題)。

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コンペ最終作は、フランスのジュスティーヌ・トリエのコメディ『Sibyl』(原題)。ジュスティーヌ・トリエはフランスでいま最も旬な女性監督といわれている存在で、フランスで大ヒットした前作『ヴィクトリア』が、2016年のカンヌ映画祭「批評家週間」のオープニングを飾りました。長編第3作目となるこの作品は、心理カウンセラーから作家になったシヴィル(ヴィルジニー・エフィラ)が女優のマルゴ(アデル・エグザルコプロス)のカンセリングを気乗りしないまま引き受ける中で自分自身も混乱していく話。ギャスパー・ウリエルや『ありがとう、トニ・エルドマン』(16年)のドイツ人女優サンドラ・ヒュラーなど、豪華なキャストだけど軽いコメディタッチのドラマで、カンヌのコンペではちょっと浮くかもしれません。

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ジュスティーヌ・トリエのコメディ『Sibyl』(原題)。

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今年のカンヌ、最後のインタビューはグザヴィエ・ドラン。3作品ぶりに、カナダでのびのびと撮った『Matthias et Maxime』(原題)はやはり自由さがあったよう。“神童”といわれ注目されてきた彼ですが、やはりプレッシャーはかなりのようです。隣で、エリア・スレイマンがインタビューを受けていましたが、俳優かと思うほどのオーラがありました。

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グザヴィエ・ドランにインタビュー。©Getty images

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夜は、「ある視点」部門のクロージング・セレモニーへ。「ある視点」大賞は、ブラジルの『A VidaI Invisivel de Euridice Gusmao』(原題)。1950年代に離れ離れになった姉妹の半生を描いた話です。今年の「ある視点」の審査員長は、レバノン出身の女優、監督ナディーン・ラバキーですが、女性の生き様を描いた作品に焦点を当てたところは、審査員長の意向が強く現れた結果といえるかもしれません。

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ブラジルの『A VidaI Invisivel de Euridice Gusmao』(原題)が受賞。©Atsuko Tatsuta

いよいよ明日は、最終日。ジャーナリストの間ではポン・ジュノの『Parasite』(英題)の人気がダントツに高く、次いでフランスの新鋭ラ・ジュリの『Les Miserables』(原題)。この2作品はなんらかの大きな賞が期待されますが、カンヌでは下馬評が高くても、無冠で終わることもままあります。結果は、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ率いる審査員団が知るのみ!

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

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texte:ATSUKO TATSUTA

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