夢の対談が実現。 【第4回】石井ゆかり×しいたけ.による、令和時代の歩き方。

Culture 2019.08.01

本誌の星占い連載でもおなじみ、ライターの石井ゆかりさんと「VOGUE GIRL」にて連載中の「しいたけ占い」で人気の占い師、作家のしいたけ.さんによる豪華対談を実現! 本誌エディターの青木良文を進行役に、令和時代の読み解き方についてたっぷりと伺った。4回目となる今回は、いよいよ最終回。星占い人気を牽引するおふたりが、「新時代の占いのあり方」を語る。

変わらない「人の弱さ」の
「アジール(避難所)」でありたい。

青木良文(以下、A): 今回の対談は、「時代の変化」がキーワードになっていると思いますが、世の中の価値観が変わりつつある中、「占いのあり方」はどのようにアップデートしていくのがよいのでしょうか? 5年前、10年前と比較して、占いを巡る環境や捉えられ方の変化を感じることはありますか?

石井ゆかり(以下、I):そうですね、私は逆に「変わらないこと」を大事にしたいと思っています。星占いは何千年も前に生まれたものですが、みんなが知りたがっていることは、実はいつの世も、あまり変わらないような気がするのです。恋のつらさや寂しさ、生きることの大変さは、時代がどんなに進もうと不変のもので、それを見失わないようにしたい。たとえ世の中に「恋愛はもういいよ」というムードが広まったとしても、誰かを好きになる切ない感情がなくなることはないでしょう。ただ、それならば一体、いまはどんな言葉を使えばその切ない気持ちを捉えられるか、ということは、時代によって変わるものではあると思います。そこは、考え続けていかなければならないと思っています。

しいたけ.(以下、S):石井さんに深く共感します。僕は、占いは前向きな言葉を伝えられる場所だからこそ、前向きすぎる言葉や脅しの言葉を使いたくないのです。僕は個人的に、自分の占いで届ける言葉は煽ったり、脅したりはしたくなく、正直な言葉を届けたいです。欲を刺激して「こうしたほうがいい」とは、あまり言いたくない。僕の場合、占いの入口はいろいろな方を鑑定することだったのですが、人って他人が知らないところで結構苦しんで生きているのかと胸を打たれたんです。たとえば、「服を買いたいけど、いきなりデパートに行くのは怖い」といった悩みは、友人に話したら「いや、そんなの行けばいいじゃん」と即答されてしまうかもしれませんが、本人にとっては「いつ、どうやって行けばいいの?」ということが大問題だったりします。そういうある種のコンプレックスや切なさが、人間らしくてとても好きなのです。占いって、注意深く使わなければ権力になってしまうものですが、本来は「常識や権力から離れられる」ところが大きな魅力。ある日ふと、「会社に行きたくない」と思った人がいた時に、「いや、会社に行きたいと思うほうがおかしいんだよ」と言ってあげられる稀有な場だと思うのです。

A:なるほど、そうかもしれませんね。

S:先輩や家族に話したら「甘えたこと言うなよ」と叱られてしまいそうな時こそ、「大丈夫、今週はそういう週です」「そういう時期もあります」と言ってあげられる存在でありたいし、自分としてもそこが占いの好きな部分。僕、たまにSNSでエゴサーチをするのですが、しいたけ占いって、時々めちゃくちゃキャリア志向の人からは嫌われるんですよ。多分ね、だいたい23歳から27歳ぐらいの人(笑)。

A:そうなんですか?

S:なんか「その優しさが鬱陶しい!」と感じるみたいで(笑)。でも実は、僕自身は鬱陶しがられることもうれしくて、なんか「もう離れなさいっ! いいから離れなさい、あなた!」って(笑)、親戚のおじさんのような目で見ています。

A:あははは(笑)。

S:「厳しく言ってください」というタイプは僕の占いは嫌みたいです。「今週はお疲れなので、ちょっと休んだほうがいいですよ」って言っても、「いや、休んでられないし!」と。でも、そういう人は、ぜひ「なにくそ!」と奮起して、自分なりのやり方で頑張ってほしいですね。なんかでも、僕は受験とか体育会系の最前線の場所にある占いじゃなくて、ちゃんと保健室担当でいたいんだよなぁ。「教室に行こうとするとどうしてもお腹痛くなる」って子に「どうしたどうした? よし、将棋でもやろう」みたいな立ち位置でいたいんです。

I:昔は世の中に「駆け込み寺」というものがありましたよね。尼寺などに駆け込めば、世の中のルールが及ばないエリアとして村の掟からも守ってもらえた。いわゆる「アジール(避難所)」ですが、現代はそういう場所をどうも見つけにくいようです。ちょっとどこかに逃れたいと思うと病院しかない、という社会において、占いはアジールになっているのかもしれません。病院はまず、自分が病気なのではないか、と思わなければ行けないけれど、占いはそんなことを思わなくてもできます。また、もっとささやかな救いとして、「コミュニケーション」があります。どういうことかというと、たとえば地震が起きた時、みんなすぐにまわりの人たちと「揺れた! 揺れたよね?」と言い合ったりしませんか? あれは、本当は不要な確認ですよね。一緒に体験してわかっているわけですから。それでも誰かと「揺れたね!」と言葉にし合うことで、不安や恐怖心が吐き出され、気持ちが落ち着くんだと思うんです。占いは言葉ですし、対話でもありますから、占いにもそうした機能があると思います。占いは、「社会のルールや常識からの避難所」という面と「コミュニケーショによる避難所」、ふたつの意味で機能するのかなと。

A:うーん、なるほど。

I:これからさらに格差が広がったり、社会的な分断が進んだりすれば、そうした分断から離れたところに、ちょっと逃げ出すための場とか、ツールが必要になるんじゃないかと思います。それは必要悪の部分もあると思うんですが、占いも、その一端を担っていくのではないでしょうか。

---fadeinpager---

星が教えてくれること。
「情報を精査し、信念を貫くための喧嘩をしよう」。

A:この先、何か際立った星の動きはありますか?

I:第1回で「2019〜2021年頃までは時代の節目感が強い」ということをお伝えしましたが、その次の星の山場は、2026年です。ここは、冥王星や海王星、天王星など大物の天体が一度に動くことに。2020年のグレートコンジャンクションはイレギュラーな動きですが、レギュラー的に見ると2019〜2026年までをひとまとまりと考えます。2026年には、再度時代がガラリと変わる感じがあるでしょう。

A:しいたけ.さんのリーディングでは、いかがですか?

S:現時点で思うのは、みなさんがさまざまな情報を取り入れる際に、権力者や有名人など「声が大きい人」の言うことを信用できなくなってきているのではないかということです。それは、東日本大震災時の影響が大きいと考えていますが、あの時政府は、あれだけ大規模な災害が起きてしまったために、世の中の動揺を鎮めるためのメッセージを出さなければならなかったんですよね。もちろん、全部が嘘だったとは思いませんが、ただあの頃から、かなりの人たちが情報から距離を置くことがある程度人々の心の中で本格化したんじゃないかと思ったのです。そして、それなら今は何に従おうとしているかというと、「自分の胸の高まりに正直に」ということ。でも僕は、その「直感志向」に行きすぎることも少し危惧していて、「自分がよいと思うことがすべて」になってしまった時に、新興宗教のような変な方向に行ってしまわないかなと。突然、「仕事に行きたくないから、会社辞めました!」みたいな行動を取ることは、装備を整えずに砂漠に行くようなもの。非常にリスキーに思えますね。

I:装備もなく砂漠に行くのは、自殺行為ですよね。でも、「自分の感じたままを大事にすること」に関しては、ひとつ思うことがあります。2011年に天王星が「戦いの星座」である牡羊座に入ってから約7年が経ってみて、この時代に天王星は何を教えてくれたんだろう、と考えてみると、それは「ケンカすること」だったのかもしれないな、と。諍いはよくないこととされますが、人はときに、自分の信じるものを守るために、ちゃんとケンカしないといけないんですよね。

S:ああ、それは大事ですね。

I:ただ、話が逆になるみたいなんですが、今の若い世代はむしろ、身近で直接的なケンカは極力避ける傾向があると聞きます。摩擦がないように、ぶつからないように、ということがとても大事なんだそうです。でも、これは「ケンカしなくなった」ということではないのかもしれない、と私は想像していて。多分、かつてのようなケンカのスタイルはなくなった一方で、嫌な飲み会を断ったり、おかしな仕事に「それはやる意味があるんですか?」と言ったりすることはできるようになっているんですね。ケンカができるようになった、というよりは「ケンカの仕組みやスタイルが、かつてとは違ったものになりつつある」ということなのかなと思います。匿名であっても、「保育園落ちた日本死ね」と言う度胸みたいなものを、過去7年間の天王星が教えてくれたのかもしれません。個別に石を投げ合うような「個人 対 個人」のそれです。「相手が誰であれ、信じるものを貫くためには、もっとケンカしなきゃいけない」と多くの人が思い始めたのは、いいことなのではないかと思いますね。

A:なるほど。じゃあ、それが令和に入って天王星が牡牛座に入ると……。

I:牡牛座だから、もっと頑固に戦えるようになるかもしれません。星が移動したからといって、それまでのことがなくなるわけではなくて、むしろ「背負って、先に進む」ことができるはずです。牡牛座は「声」の星座でもあります。ひとりひとりがきちんとケンカしながらコミュニケーションを深め、自分が本当に信じられることを見つけていくことできれば、と思います。

A:政府やメディアからの情報に懐疑的になるだけでなく、ときには自分の信念を通すために声を上げたり、ケンカもしていく。星占いは、令和の時代に、そんなことの必要性も語ってくれているということでしょうか。今日はいろいろと貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。最後に、おふたりの最新情報を教えていただけますか? しいたけ.さんは、新刊を出されたばかりなんですよね。

S:『しいたけ.の12星座占い 過去から読むあなたの運勢 』という3年スパンで見る星占いの本が6月末に発売されたばかりです。占いって、大半の方にとっては、新年にお餅を食べながら読む「縁起物」みたいなところがありますよね。それで結構、3日後には何が書いてあったか忘れてしまったり。僕は願わくばそういうふうにはなってほしくなくて、書く以上は責任を持ちたいと思っていたので、2019年から見て過去(2018年)はどんな意味を持つ年だったのか、未来(2020年)には何が待っているのかという3年間のストーリーを伝える本を作りました。

A:過去の占いを読めるのは、答え合わせができるおもしろさもありますよね。石井さんの情報はいかがですか?

I:はい、毎年『星ダイアリー』という手帳を出しているのですが、以前から、占い部分だけの本を作ってほしいという声が多かったので、今回はそのようにしてみました。『星栞 2020年の星占い』×12星座分です。別途、ダイアリーも出しますが、占い部分に関しては、12星座分のダイジェストを掲載し、恋愛版と総合版の2パターンを作ります。発売日は10月28日の予定です。

A:どちらも見逃せませんね! 今日はどうもありがとうございました。

190719-figaro-01.jpg

石井ゆかり
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。『12星座シリーズ』(WAVE出版刊)は120万部を超えるベストセラーに。『3年の星占い 2018-2020』(全12冊)(文響社刊)も発売中。主宰ウェブサイトは「筋トレ」http://st.sakura.ne.jp/~iyukari
現在発売中の「フィガロジャポン」9月号では、大人気の袋綴じ付録「石井ゆかり 星占いスペシャル」が登場。星占いムック本、第2弾「石井ゆかりの星占い2」が好評発売中。

190719-shiitake-01.jpg

しいたけ.
占い師、作家。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強。
2014年から「VOGUE GIRL」で連載をスタート。最近ではウェブサービスnoteにてコラムや占いなどを執筆中。著書に『しいたけ占い 12星座の蜜と毒』(KADOKAWA刊)など。最新刊『しいたけ.の12星座占い 過去から読むあなたの運勢』(KADOKAWA刊)は発売後すぐに増刷され、ベストセラーに。

【関連記事】
【第1回】石井ゆかり×しいたけ.による、令和時代の歩き方。
【第2回】石井ゆかり×しいたけ.による、令和時代の歩き方。
【第3回】石井ゆかり×しいたけ.による、令和時代の歩き方。

texte : HARUKO MURAKAMI

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories