私たちを勇気と希望で繋ぐ、3人の女性の物語。

特集

勇気と希望を束ねて、女性たちは見えない絆を深めていく。

『三つ編み』

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レティシア・コロンバニ著 齋藤可津子訳 早川書房刊 ¥1,728

これは三人の女性の物語だ。インドの小さな村でカースト外の不可触民として生きるスミタ。シチリアの父の作業所で働くジュリア。そしてカナダのエリート弁護士であるサラ。

一見すると、関係がないように思える三人の女たち。住む場所も彼女たちを取り巻く環境もまるで違う。もしも共通点があるとしたら、それぞれ困難と戦っているという点だ。スミタの夢は娘のラリータを学校に入れることだ。読み書きを覚えれば、ラリータは他人の汚物を手で汲み出して処理するような仕事から逃れられる。ジュリアは思わぬことで、地元の女性たちの雇用を支えている父の作業所が破産寸前であることを知る。血がにじむような努力をして地位を掴み取ったサラの前に、病魔が立ちふさがる。

個人的な過ちとは関係のない、宿命のようなトラブルが彼女たちを苦しめている。三人は懸命に戦っているが、その戦いは孤独だ。しかし、直接的には繋がりをも持たないはずの女性たちの物語は、やがて見ず知らずのお互いの痛みに共鳴したかのように繋がり、絡み合い、しっかりとした束になっていく。映画監督でもあるレティシア・コロンバニはその様子を詩的に描いて、魔法のような物語を作り上げた。でもこれは、決して甘いおとぎ話ではない。

これは三人の女性の物語だが、同時に私たち女性ひとりひとりの物語でもある。わかりやすい共闘でなくても、私たちはみんな繋がっている。遠い国の見知らぬ女性の誰かが勇気を振り絞った時、不思議なことに私たちの胸に希望の火が灯る。誰かが傷ついている時はそれを察知し、一緒に嘆き、悲しみ、互いを抱きしめて癒やそうと見えない腕を差し出して絡め合う。それが「三つ編み」であり、それを束ねるのは女性たちのシンパシーだ。

文/山崎まどか コラムニスト

著書に『オリーブ少女ライフ』、訳書にレナ・ダナム著『ありがちな女じゃない』(ともに河出書房新社刊)など。最新刊は、『優雅な読書が最高の復讐である 山崎まどか書評エッセイ集』(DU BOOKS刊)。

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*「フィガロジャポン」2019年8月号より抜粋

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