ブルーノート・レコード入門。#03 ブルーノートの革新性を体現する、いま聴くべきアーティスト。

Culture 2019.09.01

今年でレーベル創立80周年を迎え、9月6日からその魅力を紐解くドキュメンタリー映画『ブルーノート・レコード ジャズを超えて』が日本公開されるブルーノート・レコード。普段ジャズを聴かない人も親しめそうな注目のミュージシャンを、ジャンル別にご紹介!

1.ジョエル・ロス|Joel Ross|ヴィブラフォン奏者

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ブルーノート・レコードの社長であるドン・ウォズが大プッシュしている、23歳の新人のヴィブラフォン&ピアノ奏者、作曲者。新人といっても、すでに大御所のハービー・ハンコック(キーボード、ピアノ)やルイス・ヘイズ(ドラムス)、クリスチャン・マクブライド(ベース)から、気鋭のアンブローズ・アキンムシーレ(トランペット)まで共演済みで、才能の高さがうかがえる。

デビューアルバム『KingMaker』(2019年)では収録12曲中11曲を作曲し、「これまで出会った人たちやイベントから影響されて作った」というコメントとおり、自由な発想に富む才気あふれる展開を見せる。ヴィブラフォンの丸みを帯びた多彩な音色やメロディは、楽曲に味わい深いロマンティックな輝きを加えたかと思うと、打楽器としての真骨頂も発揮。シングルとして先に発表された「Yana」をアルバムの終盤に配置するなど、アルバムを通して聴きやすい曲順もいい。

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『KingMaker』(輸入盤)。11月6日に日本盤発売。

ジョエル・ロス「Yana」

※この秋、待望の初来日が決定! 11月12(火)と13(水)、ブルーノート東京でスペシャルなライブを行う。詳しい情報はこちらにて。

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2.ジェイムズ・フランシーズ|James Francies|鍵盤奏者

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こちらも23歳の新星ピアノ&キーボード奏者。今年に入ってパット・メセニーの最新プロジェクト「SIDE EYE」に抜擢されたことでも脚光を浴びた。すでにクリス・ポッター(サックス)や、マルチな才能を発揮しているテラス・マーティン(サックス、キーボード、ラップほか)、ローリン・ヒルやホセ・ジェイムズとも共演。実験精神に富む姿勢はポスト・グラスパー的な存在だが、特筆したいのはメロディアスで聴きやすい楽曲の素晴らしさだ。

ジョエル・ロスも参加したデビュー・アルバム『フライト』(2018年)は、管楽器の編曲などセンスのよさが抜群。光を感じさせる音空間の広がりや、音の隅々の響きにまで意識が届いているのが伝わってくる。ジャズを聴き慣れていない人には、まず歌モノの「マイ・デイ・ウィル・カム」や、チャカ・カーン&ルーファスのヒット曲を取り上げた「エイント・ノーバディ」がオススメ。

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『フライト』(ユニバーサル・ミュージック)¥2,700

ジェイムズ・フランシーズ「Sway」

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3.キャンディス・スプリングス|Kandace Springs|ヴォーカリスト

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プリンスが「雪を溶かすほどの温かな歌声」と絶賛したことでも知られる。デビュー・アルバム『Soul Eyes』(2016年)はジョニ・ミッチェルのよき理解者ラリー・クラインがプロデュースし、オーガニックで優美な仕上がりに。続く『インディゴ』(2018年)は、彼女曰く、「ニーナ・シモンが現代を生きていていまのテクノロジーを使ったら、どういうことをやっていたのか試してみたかった」と、エレクトリックなチャレンジも含んだジャズ作品になった。

ドン・ウォズの話によると、現在とても美しいジャズ・アルバムを制作中で、ノラ・ジョーンズや、クリスチャン・マクブライドやクリス・ポッターといった熟練のミュージシャンが多数参加しているそう。実際の彼女は、バスケットやサッカーが得意で、自ら車の修理や塗装もしてしまうというアグレッシブな女性。また新たな一面をのぞけそうな最新作にも期待したい。

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『インディゴ』(ユニバーサル・ミュージック)¥2,700

キャンディス・スプリング「Don't Need the Real Thing

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4.ゴーゴー・ペンギン|Gogo Penguin|トリオ

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イギリスはマンチェスター出身の気鋭のジャズ・トリオ。ピアノ、ダブルベース、ドラムスというアコースティック楽器を駆使するものの、キラキラと光沢を帯びているかのような音の響きからも魅了される。まるでエレクトロニック・サウンドを奏でているかのような美しい音質は、3人が演奏している時に4人目のメンバーといえるエンジニアが、音響の美しさに磨きを増すように瞬時に卓上でリバーブやディレイといったエフェクトをかけているからという。曲作りも、見た夢や映画作品からアイデアを膨らませたり、どこまで複雑な構成にできるか追究したりするなど、3人とも凝り性だという。

クラシックの素養のあるピアニストに対し、クラブミュージックが好きというベース奏者など、卓越した技術を持って個性がぶつかり合うスリリングさ。そのライブパフォーマンスの格好よさも人気の一因だ。『ア・ハムドラム・スター』(2018年)に続き、最新EP『オーシャン・イン・ア・ドロップ』を今年9月27日にリリース予定。

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『ア・ハムドラム・スター』(ユニバーサル・ミュージック)¥2,484

ゴーゴー・ペンギン「Raven」

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5.アンブローズ・アキンムシーレ|Ambrose Akinmusire|トランペット奏者

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3歳からピアノを学び、ショパンからビョークまで、幅広い音楽性を吸収。トランペットに転向してからはジャズに没頭し、2007年の「セロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティション」で優勝を飾った。

最新作『Origami Harvest』(2018年)は、非常に芸術性の高いコンセプトアルバム。「相反すると思われるもの同士を隣に配置するような、”両極端”についてのプロジェクトがやりたい」と、ニューヨークのミヴォス・カルテットとアート・ラップの異端者であるクール・A・Dらとの共演で、クラシックとヒップホップに、アヴァンギャルドなジャズやポエトリー・リーディングが混在し共存した音楽を制作。それらの楽曲には「いまという時代を呼び起こす」という意図が込められ、内側から表出する音楽を、現代社会の分裂や我々を感情的に揺り動かす政治体制、組織的な人種差別などを受けた人々へとぶつけていく。

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『Origami Harvest』(輸入盤)

アンブローズ・アキンムシーレ『Origami Harvest』アルバムトレイラー

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6.クリス・デイヴ|Chris Dave|ドラム奏者

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当代の天才ビートメイカーと言われるクリス・デイヴ。彼を最も有名にしたのはディアンジェロのドラム奏者としてで、トレードマークと言えるスパイラル・トラッシュというシンバル(螺旋状にカットされ、波打つようなユニークな響きを生み出す)をドラムセットの左右に立てていることでも有名だ。その独自のビート感覚やサウンドに魅了されるアーティストは多く、アデルやエド・シーラン、ジャスティン・ビーバー、宇多田ヒカルのアルバムにも参加している。

共演アーティストが多いために、彼の初のソロ・プロジェクト、クリス・デイヴ & ザ・ドラムヘッズのデビューアルバム『クリス・デイヴ & ザ・ドラムヘッズ』(2018年)には、盟友ロバート・グラスパーやアンダーソン・パークなど豪華な顔ぶれが参加。まるで指揮者のように、さまざまなドラムサウンドとビートを軽やかに叩き出し、心地いい音楽空間に浸らせてくれる。ドラムという楽器のおもしろさと可能性を十分に堪能できる傑作である。

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『クリス・デイヴ & ザ・ドラムヘッズ』(ユニバーサル・ミュージック・ジャパン)¥2,484

クリス・デイヴ「Dat Feelin’ ft. SiR」

※この記事に掲載している商品・サービスの価格は、2019年8月時点の8%の消費税を含んだ価格です。

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texte:NATSUMI ITOH

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