グレーのスーツに身を包んだセミが語りかけてくること。

Culture 2019.09.14

絵本の持つ力が、想像の翼を広げてくれる。

『セミ』

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ショーン・タン著 岸本佐知子訳 河出書房新社刊 ¥1,944

大人向けの絵本を多数発表している、オーストラリアの作家ショーン・タンによる新作。夏の間中、短い命の限りを尽くして鳴くセミの姿は人生の縮図のよう。あくせく働く人間も、神様から見ればセミと同じように愛すべき存在なのかもしれない。無機質なコンクリートの壁に囲まれた会社の中で、なぜか人間とともに黙々と仕事をするセミの姿は私たちに何を語りかけるのか? スーツという鎧を脱ぎ捨てた時、現代人はどこまで人生を謳歌できるだろうか? 言葉を超えて訴えかける絵の力が、想像力を押し広げてくれる。

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*「フィガロジャポン」2019年9月号より抜粋

text : JUNKO KUBODERA

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